zu さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
「虐殺器官」って、今のアメリカとテロの現実がリンクしてるんじゃないのかなぁと思ったり・・・
待ちに待ってました!
アニメ制作会社のスタジオmanglobe突然の経営破たんから制作が中断、新設のジェノスタジオが引き継いで制作再スタートをして、当初公開予定から約1年3ヵ月遅れて、全国公開されたProject Itohの最後の作品「虐殺器官」を公開日と2日目のレイトショーで2回観てきました。
2回とも客席はほぼ満席で「ハーモニー」「屍者の帝国」の時よりも期待して待ってた方が多かったんだなぁと実感!!
原作は以前に読んでいたんですが、映画を観る前にもう一度読み直してから鑑賞してきました。
その感想ですが、基本的には原作に沿った作りになっていましたが、映画としての尺の都合だと思いますが、主人公「クラヴィス・シェパード」の母親の話、「死者の国」の悪夢などはバッサリとカットされていたり、細かなところの改変がありますが、そのおかげで作品のテンポを良くして、映像作品としてのエンターテインメント性が高められていて、原作を未読でもある程度はわかりやすくなっていると思います。
改変の一部ですが、序盤で虐殺を行っている元准将とジョン・ポールの暗殺作戦中に現地語のわかるクラヴィスの部下アレックスがラジオから流れてくるプロパガンダに織り込まれている「虐殺の文法」よって汚染されてしまいクラヴィスが尋問中の元准将を虐殺してしまい、異変に気が付いたクラヴィスに射殺されてしまうのですが(原作ではクラヴィスが元准将をナイフで殺害していて、アレックスは2年後に自殺している)このアレックスが汚染された事が、中盤くらいのクラヴィスとジョン・ポール会話の中の伏線になっていたり、ジョン・ポールのセリフが元愛人だったルツィアに変わっていたりしていたけど、作品においてもっとも重要な会話は残し、時には別の場面のセリフを早めに表示してメリハリをつけるなど、原作からの選別と再構成が見事でした。
グロさに関しては、市民の虐殺、少年少女の民兵と戦闘(腕、足、頭が吹っ飛ぶ)痛覚マーキングをした軍人同士の戦闘(特にクラヴィスの部下リーランドの下半身が無くなっても戦っている)シーンなどは、かなりグロかったけど、ルツィアの最後の描写は分かっていても音と映像でビクっとしてしまった!
それでも原作の文章として読んでいる方がインパクトが大きく感じたので、映画を観たあとに原作を読んでみる事をお薦めします。
映画の公開延期でタイトルのようにアメリカのトランプ大統領が誕生して、テロ関連国家からの入国拒否、移民制限、貿易制限といった極端な一国平和主義になろうとしているとは、偶然とは思えない絶妙なタイミングで、この時を狙っていたかのようにすら感じたし、原作者の伊藤計劃は、まるで10年前に現在を予測していたのでは?と思えた作品でした。
ジョン・ポールのCVが櫻井孝宏さんで、その言葉使いと雰囲気が「PSYCHO-PASS サイコパス」の槙島が年をとったらこんな感じかなと思えたのは、自分だけでは無いはずですw
最後に個人的には、原作の最後の「ぼくはソファでピザを食べる。」「けれど、ここ以外の場所は静かだろうな、と思うと、すこし気持ちがやわらいだ」のところまで、映像として観てみたかったなぁ(^^♪