「虐殺器官(アニメ映画)」

総合得点
74.2
感想・評価
252
棚に入れた
1857
ランキング
934
★★★★☆ 3.8 (252)
物語
3.8
作画
4.0
声優
3.8
音楽
3.7
キャラ
3.6

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ネタバレ

STONE さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 4.5 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

今だから、より大きな意味を持つのかも

 原作は未読。
 原作者の伊藤 計劃氏作品のアニメ化の「Project Itoh」の3作目だが、スチームパンク的
だった「屍者の帝国」、ガゼットなどに未来感が強かった「ハーモニー」と較べて、現代より
少し先の世界といった感じで、一番現実味を感じる。
 それぞれの雰囲気、世界感こそ違うものの、「ハーモニー」のレビューでも書いたように、
人間の心や意識の問題に焦点を当てるというテーマ性は変わらず。まあ、この辺は伊藤氏のみ
ならず、最近のSFではこのテーマを扱った作品は多く、それだけ掘り下げ甲斐のあるテーマ
なんだろうなと思う。
 あくまで局所的描写に留まりながらもその影響は世界全体を変えてしまうようなスケール感の
大きさも三作品に共通したところかな。

 本作の主要なファクターである虐殺器官と、それを活性化させる虐殺文法がまず興味を
そそる。
 種の保存のために同族を殺す生物は幾らでもいるわけで、人間にも種の安定化のために同族を
殺す機能があったとしてもおかしくはない。
 また洗脳などに代表される、言語による意識のコントロールも存在するわけで、虐殺器官や
虐殺文法自体は作者の創作したものだろうが、真実と虚構が入り交じった嘘と
いった感じで、やけにリアリティを感じてしまう。

 そして、虐殺文法の利用により、テロの要因となる国家に内輪もめを起こさせて、アメリカを
テロから防ぐという計画だが、これは一種のアメリカとの分断政策。
 本作は制作会社のマングローブの経営破綻により完成が遅れたわけだが、アメリカが
ドナルド・トランプ政権となった今、より大きな意味を持つ作品となった感が強い。
 原作自体はおそらく911とそれ以降のテロの多発に影響を受けて書いたのかなと思うが、
現在のアメリカを予見していたかのような伊藤氏の凄さを感じてしまった。

 主役のクラヴィス・シェパードが特殊部隊の隊員であるため、戦闘描写が多く、ミリタリー
ものの側面もある。
 本作自体は特に電脳化、ネットワーク社会などに焦点を当てていないため、いわゆるサイバー
パンク作品ではないが、ミリタリー関係で登場する各種装備は「攻殻機動隊」などのサイバー
パンク系アクションものに共通する部分があり、その辺も興味深かった。

 いわゆるアニメ作品としての作画、キャラ立ちなどは割と平凡。
 殺害シーンは割とグロっぽいが、これは3作品いずれも共通するところか。

投稿 : 2017/02/06
閲覧 : 256
サンキュー:

8

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