お茶 さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
言葉を越えた言葉
普段何気なく生活している中で音は無数に聞こえてくる。聴覚や視覚などと普段の生活という普遍的な共通項で、本作の人気が成り立っている気がする。
私は音に敏感な人間で普段音を苦手としている神経質な奴です。
本作の音は美しい。歩く靴の音、包丁の音、呼吸、字を書く音等々。こんなにも綺麗に音って大切だよな、なんて感傷に浸らされたり、作画においては美しくも写実のような映像は原風景にまで届いてくる。
物語は靴職人を目指す眩しい若者と、社会に悩み疲れ前に歩けなくなってしまった女性とのお話。
二人の公園での描写の中では女性はいつも缶ビールを飲んで、おつまみにはチョコレート。私も何故だか無性に飲食したくなってコンビニまでひとっ飛び。普段のビールの味とは格別に違っていた程、味覚や嗅覚までも刺激してくるのは、流石に参った。
若者が彼女に惹かれていくように私も彼女に惹かれていった。それぐらい彼女が身近に感じられて彼の気持ちが流れてきた。
人が持つ五感を通して訴えてくる形の無い、音や画というあやふやな概念を、メッセージを持たせ、言語というカテゴリーに落とし込んだ表現に脱帽。一方で物語としても脱いでしまった靴を、履き直し歩いてゆけるような、そっと背中を押してくれる優しい作品。新海監督作をいままで避けてきたことに後悔と、これから見れる事に感謝。