Tnguc さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
【お気に入り】 人から愛されるには、まず・・・
~
簡略にまとめると、この作品は大きく分けて2つの物語に分類される。前半は、主人公・ペリーヌが、ギリシャからフランス(パリ)までの道中をひたすら旅する物語であり、後半はフランスのマロクール村にてお爺さん(ビルフラン)と出会うまでの生活が描かれる。原作は主に後半にあたる部分であり、前半はほぼオリジナルストーリーだ。
まず、前半の旅路であるが、個人的にあまり面白いとは言えない。放牧的と言えばそうなるが、各話の内容はほぼ同じような展開の繰り返しで、使い捨てのゲストキャラこそは登場するもののあまり物語のスパイスにはなっていないように思える。フランスに近づいている事実はナレーションのみで片付けられるため物語の起伏が感じられず少々退屈。そしてなによりキャラクターデザインが可愛くない。表情も硬く血の気を感じさせないため機械人形のような印象を与える上、主人公役の鶴ひろみはデビュー作ということもあって、かなりの棒読みであり、ペリーヌのイメージをより悪化させてしまった。途中から登場する少年・マルセルはそれ以上に酷い。ペット犬のバロンに至っては存在自体が不快…。
しかし、後半のマロクールでの物語はとても素晴らしかった。これは原作の地のパワーだと思う。ペリーヌの生命力が前半の旅路で得た経験や成長に基づいて活躍する展開が心地よく描かれていて、その清々しさは昨今の異世界転生モノの主人公を彷彿させるほどであるが、前半の長い旅路の描写のおかげでペリーヌの言動には説得力と裏打ちがある。おかげで前半の物語も救われたような気がした。次第に鶴ひろみの演技にも熱が入り、作画も可愛くなっていくのが分かる。ロザリー家の人たちはとても優しく、ペリーヌは思いやりのある少女へと変貌を遂げていき、全体を通して評価するととても温かみのある作品であることに気づく。
「フランダースの犬」や「母を訪ねて三千里」などの初期の名劇作品と比べると決して認知度は高くないが、この作品に込められた素朴な幸せの形は今でも色褪せない魅力で詰まっている。パリまでの道中は少々味気のないものだったが、ペリーヌがマロクール村で本懐を遂げた瞬間と立ち会えたとき、私のささくれた心をじんわりと潤してくれた。
個人的評価:★★★★☆(4.5点)