なつ さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 3.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
彼らのことが好きすぎて
例えば作画とかキャラクターデザインとか音楽とか、そうい個々の要素についてはあまり高い点数をつけられないかもしれない。
しかし私にとってそんなことはこの際どうでもいい。「斉木楠雄の災難」の世界が大好きだ。斉木楠雄と仲間たちが生きているあの世界を愛さずにいられない。
「斉木楠雄の災難」はもちろん笑えるコメディアニメだが、天才であるがゆえに孤独な少年が仲間と居場所を得て、それによって自分の才能に意義と目的を見つけるという物語でもある。
超能力者が多数存在する世界で、超能力者の仲間がいたり超能力者の敵と戦ったりしている超能力者と違って、普通の世界で普通の人間のふりをして生きている超能力者は絶望的に孤独だろうと思う。
理解してくれる人も共感してくれる人も称賛してくれる人もいない。自分の才能を表現することが許されない。
帰属欲求や承認欲求や自己実現欲求は人間が持っている基本的な欲求だ。しかし彼の欲求が満たされることはない。
斉木楠雄には幸いありのままの彼を受けとめてくれる家族がいる。しかし外に出れば、普通の人間たちの中でとりわけ普通の人間のようにふるまう孤立した存在だ。斉木楠雄は普通の人々の世界をシニカルな目で眺めながら、クールな傍観者という立ち位置に自分の居場所を見つけていた。
しかし高校生活が始まると、無神経というか、自尊感情が高いというか、相手の反応なぞには全然お構いなしの変人たちが次々に斉木楠雄の周囲に集まってくる。彼らは斉木楠雄が世界から取っていたはずの距離をものともせずに、斉木楠雄の生活にぐいぐい踏み込んでくる。斉木楠雄に対して屈託なく好意と友情を示し、斉木楠雄の好意と友情を疑いもしない。
「本当の自分を見せられる/見せてくれる」とか「理解してくれる/理解できる」とか「共感してくれる/共感できる」とか。そういうことが友達の条件だと考えがちだけど、本当にそうだろうか?それはもしかしたらエゴとエゴの取引でしかないかもしれない。
お互いに謎だらけでまるで理解不能でも、ここにいていいよと言ってくれる人がいて、ここにいてくれたらいいなと思える人がいるならそれで十分で、それが仲間で、そこが居場所なんじゃないだろうか。
変人の仲間たちに巻き込まれるように、斉木楠雄は傍観者としてでなく当事者として、みんなを守るためにこの世界を大小の危機から救っていく。クールな表情の裏側にいるのは熱いハートのヒーローなんだ。