剣道部 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
わずか、4分。4分間で、これほどぶ厚いストーリーを持たせたPVアニメは、そんなにないと思う。
[文量→大盛り・内容→考察系]
【総括】
シライモトヒロさんという方の歌った「スーサイド・バラッド」という歌のPVアニメ。
たった4分の映像作品としては、かなり優秀な部類に入ると思います。映像的にも、シャフト風というか、「メカクシティアクターズ」を思わせるもので、オススメできますよ♪
天地人さんのレビューと、天地人さんのレビューでその存在を知ったどらむろさんのレビューの2つを読ませて頂き、自分も「観てみよう、書いてみよう」と思って、以前に書いたレビュー。
「スーサイド・バラッド」は、直訳すると、「自殺者の・物語を持つ歌」となります。アニメの内容も、歌の歌詞も「自殺」という重いテーマを扱っています。
しかし、歌詞をじっくり読み込めば分かるけど、決して「自殺はダメ! A~C~♪」というような、通り一辺倒に自殺を否定する内容ではなく、ただ「自殺という現実と、そこに漂う悲しさ」だけを表現しているように感じます(勿論、個人的には自殺は良くないと思いますよ)。
アニメ単体で観るなら、そんなに難解なストーリーではないけれど、歌詞の意味を考えていくと、よく分からないところも出てくるな、というのが、正直な印象です。
【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
ストーリー的には、ある青年と死神少女の話。死神少女の仕事は、自殺を考えている人の背中(最後の1歩)を押してやること(自殺幇助)。彼女の元には「自殺者を助けると貴女が滅びますよ」的な警告が届く(新米の死神なのだろうか?)
そんな彼女は、ある日、一人の婦人の自殺に手を貸す。その時はただ俯くばかりで、何も考えてはいないようだった(が、本当は辛かったのだろう)。
ここで時間は遡り、彼女の回想シーンへ。駅のホームで一人のオジサンの背中を押してやる死神少女。しかし、その時思いもよらない出来事が。自らが背中を押したオジサンを、一人の青年が咄嗟に助けたのである。驚き、笑顔になる少女。
ここからストーリーは、少女と青年の恋物語になる(といっても、少女は死神。青年には見えないので、少女の一方的に片思い)。一瞬だが、(青年には見えないのに)照れたような表情で髪を整える少女の描写などがあり、実に微笑ましい。(ちなみに、ここまでたったの1分w)
そして、少女は青年の真実を知る。実は青年は、あの自殺した婦人の子供だったのだ。だから青年は、あのオジサンを救ったのだろう(瞬間、母と重なり)。このへん、スゴい少ない描写で魅せている。
そして、物語はラストへ。雪舞う駅のホーム。電車に飛び込もうとする青年。死神少女は、一瞬の躊躇いの後、彼を助けてしまう。少女は何かを言い残し、幻のように消えてしまう……。
てな話です。たったの4分間なのに、しっかりストーリーが流れているところがスゴい!
私がこの作品を観てふと思ったのは、「死神少女の死(滅び)は、自殺なのだろうか?」という疑問でした。おそらく、作者は「望まぬ仕事をし続けていた少女が、初めて(最後に)自分の生き方を選択した」ということを表現したいのでしょう。少女は滅び(自ら死を選び)ましたが、その前に一瞬だけ、自分の人生を生きたのです(死神少女は死にたかったのではなく、殺したかったのではなく、助けたかったのです)。
この歌の歌詞を読むと、「愛する人を失った者の、後追い自殺」を歌っているように思います。また、死後の世界で再び会えるようなことも言っています(このへんが、下手すれば自殺を容認するようにも感じられ、難しいところです)。
でも、ここ(あにこれ)はアニメレビューサイトなのでw、アニメーションを主軸に考えた時、PV(映像)によって、結構救いのあるラストにしているのかな?と。
サビの歌詞「君だけを忘れない 決して忘れはしない まだ見ぬ世界でも きっと巡り会える」と、PVのラストシーンで咲く鈴蘭の花言葉「再び幸せが訪れる」を併せて考えると、もしかしたらこの死神少女は再び現世で生を受け、あの青年に出逢えるのかもしれないな、と、そう思いました(私はHAPPY END好きですw)。
{/netabare}