ぱんだまん さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.0
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 2.5
状態:観終わった
最も大切な要素を抑えられなかった佳作
狸、人、天狗の3種族によるハートフルコメディの本作。
かの四畳半神話大系の筆者である森見登美彦の作品が原作ということで注目度は決して低くはなかった。しかし、蓋を開いたら円盤の売り上げは2000枚足らず。この数字が全てを物語っていたように思える。
私は以前から売れる作品には「話の面白さ」と「キャラの魅力」のどちらかが備わっていると考えている。
この作品最大の欠点はいたってシンプルでこの2つを欠いたこと。
まず話の面白さだが、各話で狸たちがドタバタやって様々な問題が出てくるのだが、いかんせん盛り上がらない。途中にはある意味の日常系アニメを彷彿とさせる平凡な描写も少なくなく、意図が読みづらかった。また、重い話にコメディー要素があえて入れられているのだが、逆に緊張感を損なっていた。
次にキャラの魅力だが、キャラ設定自体が悪かったのではない。どちらかといえば活かし切れなかった。その最大の所以がキャラの説明が足りていない。例えば、弁天様。魔性で妖艶な雰囲気を出しながら、自由奔放の独善主義で {netabare}主人公の父を食べた敵(かたき){/netabare}。これだけ様々な性質を持たせる以上、明確な心理描写や過去の話をもっと出してほしかった。いつまでだったてもはっきりと表現せず、匂わせるだけ。弁天様に関しては意図的に避けたのかもしれないが、これは他のキャラにも言えるし、何より一視聴者の私としてはストレスを感じた。これを文学の二文字で片付けるのは少々苦しい。また、根本的に1クールにしては登場人物が多すぎて、個人へフォーカスしづらかったのもあると思う。
ここまで酷評しているが別に嫌いな作品ではない。作品全体で一貫した「有頂天家族」としての雰囲気を表せていたと思う。
作画は、キャラクター原案に絶望先生の久米田康治を起用したことをはじめ、実に個性的で、京都の街並みや季節の表現、レイアウトも美しかった。また、個人的に最もよかったのが音楽。OPは実に作品がうまく表されており、EDもイントロから綺麗に流れていく。BGMも知識がないからうまく言えないけど、耳に残るくらいよかった。
結論でいえば勿体無い作品。原作は未読だが、話の盛り上げ方とキャラの引き立て方を除けば完成度はかなり高い。2017年4月から2期の放送が決まったことには驚いたが、どうか1期を超える作品にしてほしい。