oxPGx85958 さんの感想・評価
1.5
物語 : 1.0
作画 : 1.5
声優 : 1.0
音楽 : 3.0
キャラ : 1.0
状態:観終わった
なぜこんなものがリリースされるのか
作画の面では標準、演出は典型的なアニメ演出。吹奏楽を題材としたアニメとしては、最終話の演奏シーンを含めて、『響け!ユーフォニアム』の後ではまるで罰ゲームでした。製作陣も針のむしろに座っている思いだったでしょう。
でもそういうのがすべて関係なくなるほど、ストーリーがひどい。
第1話はイントロダクションとして目をつぶるとして、第2話を見た時点でまともなストーリーテリングを期待してはいけないとわかったけれども、どこまでダメになりうるのかをこの目で確かめておこう、ということで最後まで見ました。このダメっぷりが原作にあるものなのか、脚本家のせいなのかはわかりません。ネット上のレビューを見ると、原作のボリュームのあるエピソードを1話に詰め込む過程で、細かい部分が省略されて、ロジック面でも情緒面でも問題が生じている、ということのよう。
シリーズ構成の吉田玲子は、やはりストーリーが弱かった『ガールズ&パンツァー』もやっている人で、今後、私にとっては要注意人物ということになりそうです。
以下、ストーリー上、特に気になった点をいくつか。
{netabare}
第8話『初恋ソムリエ』。おにぎりの味を再現するエピソード。いくら水とか塩を揃えても、肝心のお米の種類と状態がすべてを決めるわけで、意味がない、という根本的な問題には百歩譲って目をつぶるとして。
あの物語を信じるためには、伯母さんが毒なしおにぎりを食べていなかった、と仮定する必要がある。もし食べていたのなら、毒入りおにぎりを食べたその時点で異常に気付いたはずだから。なんせ数十年後に食べても味の違いに気付く舌の持ち主だからね。
でも、じゃあ彼女はあそこにいた間、何を食べていたのか。そもそも、自分が同じ病気で死ぬかも、という不安を抱いたのは、何かを食べていたからだ。その何かが不安のもとなのだったら、数十年後におにぎりだけを食べても何の証明にもならないんじゃないの?
やっぱり彼女は自分の作ったおにぎりを食べていたんだと思う。そして、それならば毒入りおにぎりを食べた瞬間に味の違いに気付くはずだ、ということを作者が見落としたんだと思う。
第9話『アスモデウスの視線』。盗撮のエピソード。堺先生は犯人を突き止めたが、元教え子の教育実習生の反社会的勢力との関係を示唆する写真を突きつけられ、真相を隠蔽する。そのような行動を取る人がいることは信じられるけれども、本作の流れの中でどうしても理解できないのは、それに荷担した草壁先生の行動と動機だ。
草壁先生は例によってエピソード終盤にとつぜん現れて「種明かし」をするが、今回は自分も関わった企みが自分の生徒たちによって暴露されたわけで、あんなに冷静に対応し、真相が明るみに出たことがまるで良かったことだったかのようにしんみりと語っていられる状況ではないはずだ。
これ、盗撮映像がネットに流された生徒たちの立場から見ると、真相を知った教師が、自分の教え子の教育実習生の弱みを握られて事件を闇に葬った、という事件なのであって、まあ大変なスキャンダルですわ。教育実習生の反社会性についても目をつむり、そのまま教育実習生としての仕事を続けさせた、ということも、PTAに知られたら大変なことになるだろう。
そんなのどうでもいい、という倫理観はあってもいいし、本作の登場人物たちがそんな反社会性を備えていても別に変だとは感じない。でも少なくとも草壁先生には、自分が荷担した隠蔽工作を生徒たちに台無しにされた、という立場からのリアクションが何かあるべきだった。
以上、1つ目の例は謎解きのロジックそのものの問題、2つ目の例は謎解きにかかわる登場人物たちの心理状態とモチベーションの描写の問題の典型例として挙げてみました。こういうのがこのアニメには他にもいくつもあって、謎解きものとしての最低基準を満たしていないと感じました。『氷菓』の謎解き部分は弱いと思っていたけれども、本作と比べたらあれは筋が通っている方です。
{/netabare}