「響け!ユーフォニアム2(TVアニメ動画)」

総合得点
89.1
感想・評価
1604
棚に入れた
7189
ランキング
93
★★★★★ 4.3 (1604)
物語
4.2
作画
4.5
声優
4.2
音楽
4.3
キャラ
4.2

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ネタバレ

ピピン林檎 さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

吹奏楽に無縁な人でも、何周でも観れてしまう 《青春アニメの完成形》

◆総評

2015年1-3月に放送された1期に続いて、本作も事前の期待値以上に楽しめてしまい、本作を見終えた直後から、これまで5-6周はしているはずの1期の方をまた見返したくなって、結局、1期→2期ぶっ通しの視聴を更に2周して、その間他のアニメをほとんど見れない状態になってしまいました(それはそれで結構ストレス溜まってしまいました笑)。

本当、こういう作品世界や登場キャラクターの設定が確りしていて、そうした個々の登場キャラクターの感情推移が一切手抜きなく的確に描写されている作品は、シナリオ自体は一周目で分かってしまっても、そうした描写を漏れなく見て取るつもりならば、さらに何周も出来てしまいますね。

本作については、1期にあった{netabare}《麗奈 VS. 香織先輩》{/netabare}といったドラマチックな対立軸がなかったことから、1期の個人評価★★ 4.9 から、主に作品の初回視聴時の印象という意味で、点数を★★ 4.8 と僅かに下げることにしましたが、それでも周回を繰り返すうちに、1期からさらに深化した細やかな感情描写の冴えを随所に見付けることが出来て、1-2期通じて、やはり《青春アニメの完成形》とでも形容すべき見事な作品に出会えた、という感動は変わりませんでした。


※ここで、本作の個人的な鑑賞ポイントを2つ。

◆人と楽器は「赤い糸」で結ばれている

1期は、{netabare}「特別」を目指す麗奈との交流によって、主人公(久美子)のどこか冷めていた心に、吹奏楽への情熱の炎が次第に灯(とも)っていく過程を、丁寧に描き出していたのですが、彼女のその情熱が、なぜユーフォニアムという楽器の演奏に対して向けられることになったのか?ということには、実は説得力のある描写はありませんでした(単に「それまでずっと演奏してきたから」という惰性だけでは弱い)。{/netabare}

そこで、この2期ではさらに、{netabare}主人公(久美子)の情熱がユーフォニアムという具体的な楽器に対して注がれることになる過程を(※つまり、久美子とユーフォニアムとが「赤い糸」で結ばれていく過程を)、彼女の憧れとなり、彼女にとってもう一人の「特別」な存在となる、あすか副部長との交流を通して丁寧に描き出していく構成になっている{/netabare}、ように私には見えました。


◆「特別」への願いは、手書きノートや楽譜の手渡しで伝えられる

本作の主人公(久美子)は、{netabare}ユーフォニアムの演奏に関して、「特別」ではないけれど、「平凡」でもない、微妙な立ち位置にある、吹奏楽が好きな高校1年生という設定。{/netabare}
もう少し詳しく書くと・・・

{netabare}・吹奏楽を始めたのは小学4年生の時。
・姉の演奏していたトロンボーンを本当は自分も演奏したかったのだけど、たまたま奏者のいなかったユーフォニアムを吹くことになってしまい、今年で演奏歴7年目になる。
・中学1年の時から上級生を差し置いて吹奏楽部のコンクール演奏メンバーに選抜されたり(※但し、そのせいで上級生の恨みを買ってしまい、それがトラウマとなっている。)、北宇治高校吹奏楽部の演奏を初めて聴いて「これは下手だ」と即座に断言してしまう程の、なかなかの腕前の持ち主。
・高校でもクラスメートに背中を押されてようやく吹部入部を決めるが、その際にユーフォニアムではなく、もともと自分が吹きたかったトロンボーンに楽器を変えようと考えるくらい、ユーフォニアムには愛着が薄かった。{/netabare}

→ということで、{netabare}ともに父親がプロの演奏者で、小学1年生くらいからそれぞれ父親の楽器であるトランペットやユーフォニアムの演奏を始めた麗奈(演奏歴10年ほど)やあすか副部長(演奏歴12年目)とは、明らかに演奏力に大きな差がある。
→というよりは、そもそも久美子とこの二人では、己の演奏を通して求めるモノ・目標とする地点が違い過ぎている。{/netabare}

・・・という状況で始まった本作なのですが、

(1) まず、1期で、{netabare}久美子は、中学最後のコンクールで麗奈が見せた悔し涙や、6/5の縣祭の夜、大吉山展望台で見た麗奈の不敵な笑顔から、彼女の「特別」への願いに触れて、それに深く感化され、{/netabare}
(2) そして、2期で、{netabare}今度は夏合宿の朝、偶然あすか副部長の個人練習を見かけてその曲調の優しさ・美しさに魅せられたこと、さらに彼女の自宅を訪問した折に彼女から打ち明けられたユーフォニアムとその曲に関する事実等から、彼女のフォーフォニアムへの「特別」な願いを知って、それに強く心を動かされていくことになります。{/netabare}

本作では、そうした「特別」への願いの伝達を、

{netabare} <1> 進藤正和氏(プロのユーフォニアム奏者)から、子供時代のあすか先輩へ、ユーフォニアムとともに届けられた手書きの楽譜ノート(第9話)
<2> 愛妻を失った滝先生から、中学時代の麗奈に手渡される楽譜(第11話)
<3> 卒業式を終えたあすか先輩から、久美子に手渡される楽譜ノート(第13話){/netabare}

・・・によって象徴的に表現しているように、私は見えました。

「特別」への願いって、こうやって、人から人へと手の温もりを介して、初めて確りと伝えられていくモノ、なのかも知れませんね。


※以下、作品情報と本作の内容考察(1-2期+劇場版+OVA 全て含めて)。


◆制作スタッフ

原作          武田綾乃
監督          石原立也
シリーズ構成     花田十輝
キャラクターデザイン 池田晶子
音楽          松田彬人
アニメーション制作  京都アニメーション


◆作品別評価

第1期  (2015年1-3月)  ★★ 4.9 
OVA   (2015年12月)   ★  4.0 
劇場版  (2016年4月)    ★★ 4.6
第2期  (2016年10-12月) ★★ 4.8 
----------------------------------
総合評価            ★★ 4.8


◆各話タイトル&評価
{netabare}
★が多いほど個人的に高評価した回(最高で星3つ)
☆は並みの出来と感じた回
×は脚本に余り納得できなかった疑問回


============ 響け!ユーフォニアム (第1期) (2015年1-3月) =========

{netabare} - - - Ⅰ.吹奏楽部入部~サンライズ・フェス(最初の成果) - - -

第1話 ようこそハイスクール ★ 中学3年時の府大会、北宇治高入学、吹奏楽部入部
第2話 よろしくユーフォニアム ★ 楽器選び
第3話 はじめてアンサンブル ★★ 部内トラブル
第4話 うたうよソルフェージュ ★★ 合奏テスト
第5話 ただいまフェスティバル ★★ サンライズ・フェス出場、久美子の居場所確認

- - Ⅱ.オーディション~京都府大会編(麗奈-香織先輩[2年生]問題) - -

第6話 きらきらチューバ ★ 府大会課題曲&部内オーディション発表
第7話 なきむしサクソフォン ★ 葵先輩の退部
第8話 おまつりトライアングル ★★★ あがた祭の宵(大吉山展望台)
第9話 おねがいオーディション ★★ 部内オーディション
第10話 まっすぐトランペット ★★ 部内の動揺、香織先輩の挙手
第11話 おかえりオーディション ★★★ 再オーディション
第12話 わたしのユーフォニアム ★★ 麗奈の気持ちを悟る久美子
第13話 さよならコンクール ★★ 府大会{/netabare} 
-------------------------------------------------------------
★★★(神回)2、★★(優秀回)7、★(良回)4、☆(並回)0、×(疑問回)0 ※個人評価 ★★ 4.9

OP 「DREAM SOLISTER」
ED 「トゥッティ!」


=== 響け!ユーフォニアム OVA(番外編「かけだすモナカ」) (2015年12月) ===

全1話 ★ 4.0 {netabare}※BD/DVD第7巻特典、TV版(1期)最終第13話の葉月視点の物語{/netabare} 


=== 劇場版 響け!ユーフォニアム〜北宇治高校吹奏楽部へようこそ〜 (2016年4月) ===

全1話 ★★ 4.6 {netabare}※1時間43分(TV版(1期)を1/3に圧縮)、ごく一部新規カットあり{/netabare} 


========== 響け!ユーフォニアム2 (第2期) (2016年10-12月) =========

{netabare} - - - - - - Ⅰ.関西大会編(みぞれ先輩[2年生]問題) - - - - - -

第1話 まなつのファンファーレ ★★ 2年生の複雑な事情 ※実質2話分(47分)
第2話 とまどいフルート ★★ 水着回、退部した先輩の気持ち(希美)
第3話 なやめるノクターン ★ 夏合宿
第4話 めざめるオーボエ ★★ みぞれ先輩の問題解消
第5話 きせきのハーモニー ★★★ 関西大会 ※演奏描写の神回

- - - - - - Ⅱ.全国大会編(あすか先輩[3年生]問題) - - - - - -

第6話 あめふりコンダクター ★ 学園祭、台風の夜(滝先生の本心)
第7話 えきびるコンサート ★ あすか先輩の家庭事情、春香部長BS独奏
第8話 かぜひきラプソディー ★ 姉との思い出、久美子の吹奏楽事始め
第9話 ひびけ!ユーフォニアム ★★ あすか先輩宅訪問、あすか河原の独奏
第10話 ほうかごオブリガート ★★ 久美子激白、あすか先輩復帰
第11話 はつこいトランペット ★★ 再び大吉山展望台(麗奈)、墓参り
第12話 さいごのコンクール ★★ 誕生日プレゼント、全国大会、麗奈の告白、姉への感謝

- - - - - - - Ⅲ.3年生卒業式・卒部会編(エピローグ) -- - - - - -

第13話 はるさきエピローグ ★★ 卒業式、作品タイトル回収{/netabare} 
-------------------------------------------------------------
★★★(神回)1、★★(優秀回)8、★(良回)4、☆(並回)0、×(疑問回)0 ※個人評価 ★★ 4.8

OP 「サウンドスケープ」
ED 「ヴィヴァーチェ!」{/netabare}


◆登場キャラクターの整理
{netabare}
※◎は2期の物語中、特に重要な役割を果たし、強く印象に残った5人。
※△は1期の物語で重要な役割を果たしたが、2期では出番・役割が減ったキャラ
※▲は2期になって初めて登場or実質的に始めて役割が与えられるキャラ
※滝先生のオーディションに、①文句なく受かるスキルを上級、②頑張って何とか受かるスキルを中級、③受かる可能性がゼロのスキルを初級、とそれぞれ措定し、その中をさらに上↑・中→・下↓に細分。

(1) 1年生
 ◎久美子(ユーフォニアム、中級↑)
 ◎麗奈(トランペット、上級↑、段違いのハイ・スキル)
  葉月(チューバ、初級↓、全くの初心者)
  緑輝(サファイアちゃん、コントラバス、上級↓)
  秀一(トロンボーン、中級↑)
(2) 2年生
  夏紀先輩(中川先輩、ユーフォニアム、初級↑~中級↓)
  梨子先輩(チューバ、中級↑)
 △優子先輩(トランペット、上級↓)
  後藤先輩(チューバ、中級↑)
 ▲みぞれ先輩(オーボエ、上級→)
 ▲希美先輩(フルート、元部員だが関西大会直前に復帰、上級↓)
(3) 3年生
  春香部長(バリトンサックス、サックス・パートリーダー、上級↓)
 ◎あすか副部長(ユーフォニアム、低音・パートリーダー、上級↑ ※1期の上級→から上級↑に修正)
 △香織先輩(トランペット、トランペット・パートリーダー、上級→、麗奈の入部前は部一番の吹き手)
---------------------------------------------
北宇治高校吹奏楽部 計14人(女子12人+男子2人) ※他にも多数部員あり(総勢60名以上)

(4) 教師
 ◎滝先生(顧問、学生時代はトロンボーン)
  松本先生(副顧問)
(5) その他
  葵ちゃん(テナーサックス、1期の途中で退部、中級→)
 ◎久美子の姉(麻美子さん、大学生、元吹奏楽部、トロンボーン、上級→)
  梓ちゃん(立華高校1年、久美子・麗奈と同じ中学で吹奏楽部だった、トロンボーン)
 ▲橋本先生(滝先生の大学時代の友人、北宇治高吹奏楽部OB、パーカッションのプロ奏者)
 ▲新山先生(滝先生の大学時代の後輩、フルート、木管楽器を指導)
 ▲あすか先輩の母親(元夫はプロ・ユーフォニアム奏者の進藤正和)
---------------------------------------------
以上、物語に絡んでくるキャラクターは 計22人{/netabare}


◆1-2期の重要キャラクターの比較

1期のレビューの方に書きましたが、1期の物語を動かした重要キャラを5人選ぶとすれば、

{netabare}①久美子(本作の視点人物であり、主人公=メイン・ヒロイン)
②麗奈(主人公にインスピレーションを与える「特別」な人=サブ・ヒロイン)
③香織先輩(サブ・ヒロインの対抗者)
④優子先輩(物語を進行させる汚れ役)
⑤滝先生(サブ・ヒロインの憧れの人=「特別」の源泉){/netabare}

となるでしょう。そして2期では、

{netabare}[1] 麗奈の吹部内での立ち位置が定まったことから、この5人のうち、1期で彼女の対抗軸として描かれていた香織先輩&優子先輩の注目度が減り、代わって、
[2] 久美子と同じフーフォニアム奏者で、1期の最初から最後まで一貫して謎めいた存在として描かれていた⑥あすか副部長が、久美子・麗奈に続く「第3のヒロイン」=久美子にインスピレーションを与えるもう一人の「特別」な人、として浮上し、さらに、
[3] 久美子に吹奏楽を始める直接の切っ掛けを与えながら、自身はそれを断念してしまった⑦彼女の姉(麻美子さん)が、久美子がユーフォニアムへの愛を深めていく上での対称的存在として、物語の進行に一定の役割を果たすことになります。
[4] なお、2年生のみぞれ先輩と希美先輩のエピソードは、久美子にとって「特別」となる2人(麗奈とあすか副部長)のエピソードの幕間劇的な位置づけに見えました。{/netabare}

以上、2期の物語を動かす5人の重要キャラをまとめると

{netabare}①久美子(1期と同じく、本作の視点人物であり、主人公=メイン・ヒロイン)
②麗奈(サブ・ヒロイン、恋愛担当)
⑥あすか副部長(主人公に第2のインスピレーションを与えるもう一人の「特別」な人=第3のヒロイン)
⑦主人公の姉(主人公が吹奏楽を始めた原点でありながら彼女とは対照的な選択をしてしまった人)
⑤滝先生(サブ・ヒロインの憧れの人){/netabare}

→上の登場キャラクター整理表で、この5人を◎表記。

※内容考察ここまで。

投稿 : 2017/01/22
閲覧 : 609
サンキュー:

59

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