猿の尻尾 さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
みんな何処かが欠けながら日々を生きている
小学生の頃、つまらないことが大嫌いで退屈に打ち勝つことが日々の楽しみだった主人公のもとに転校生がやってきます。それは生まれつき耳が聴こえない少女。
そして主人公は思います。こいつを使えば退屈に勝てるのではと。
結果少女は再び転校、主人公には重い罰が降りかかります。
すっかり心を閉ざしてしまった主人公は高校へ入学、自身の生きる価値を見出せず母親への借金を返したことを機に自殺を決意します。
――でもその前に、あの娘に謝らないと。
そして2人は再開します。消えない傷を抱えたまま。
非常に重たい作品です。
性格でも身体でも、どこかに埋まらないピースを抱えたまま寄り添おうとする少年少女の葛藤をぶつけられ心をめちゃくちゃにされました。
黒板を引っ掻いたときに鳴る音のような心地の悪さに似た不快感が身体中を責め立てて来ました。
それでも、視聴後に残った感覚は「温かさ」でした。
こんなことを言うと不謹慎かもしれませんがこの作品の主要キャラたちはみんな何処かが欠けているのです。
ヒロインである西宮硝子にとってのそれが「声」だったのです。
耳が聴こえなくたって普通に生きられると信じながらも、耳が聴こえない私が悪いと思い込み、自分のせいで人の和が乱れてしまうと悩む。そんな優しい硝子が私は大好きです。
罪滅ぼしを続けることが自身の生きる意味だと信じ、立ち止まったり間違えたりもしますが、硝子の為に尽力する主人公、将也の不器用さが私は愛おしいです。
もちろん、将也のしたことは許されることではありませんし、また許されるべきではありません。
ですが人生はそこで終われない。罪を背負ったから終了、なんて簡単ではないんです。
罪を背負ったままどう生きるのか、清算できない罪とどう向き合うのか、そこに精一杯向き合った将也を私はどうしても嫌いにはなれませんでした。
他にもどこか欠けてしまった少年少女が登場しますが長くなるので割愛します。
軽い気持ちでは観れないほど重い作品ですが、その重さから目を逸らさずに見届けることが出来れば得難い気持ちを貰えます。
興味のある方は是非ご視聴をおすすめします。
ん?なに?一部掘り下げが足りないキャラがいた?
よーし今すぐ原作を読むが良い。
アニメはかなりマイルドに作られていたという驚きと、足りないと思ってた部分に答えをくれるぞ!