どらむろ さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
シュタインズゲートの数年前が舞台、妄想とパラノイアの怪奇譚。主人公の心理に共感出来るか否か?
STEINS;GATE(シュタインズゲート)と同一世界観(数年前)が舞台、「科学アドベンチャーシリーズ」の第1作です。全12話(1話26分なので23分アニメだと13話分くらい)
オタクでヘタレな主人公が、不可解な猟奇的事件に巻き込まれていく過程で「妄想」や「オカルト」がアイディンティティーを侵食していく感じの、摩訶不思議なサスペンスに…
アニメ作品としての出来はイマイチなんですが、大都市舞台の怪奇オカルトサスペンスとして、独特な味わいあり。
…1話時点で主人公に嫌悪感抱く人には不向きかも。
{netabare}『物語』
主人公の西條拓巳(にしじょうたくみ。引きこもりで極度のオタク&コミュ障)が、「ニュージェネレーションの狂気(略してニュージェネ事件)」と呼称される猟奇事件に巻き込まれていく。
拓巳は愛好するフィギアの星来オルジェル(せいらたん)と普通に会話していたり、妄想癖が酷いんだな~?と思いきや。
その後も頻繁に妄想と現実の境界が曖昧になりつつ、そこに猟奇事件の当事者としてジワジワと追い詰められていく…
「オタク主人公の妄想パラノイア」な感じ、実態の見えぬ怯えや焦燥感、対人関係の不信感。
いったい「どこからどこまでが現実・自己で、どこからが妄想なのか!?」
また、ヒロインが多め、どう見てもモテそうにない主人公に、都合の良いヒロインたち…
ゲーム原作ならでは…と思いきや、実は2つの意味でちゃんと理由あり。
実際の理由は最終的に判明するとして、メタ的には「主人公の対人面での疑心暗鬼(本当は敵なのでは?)」と「現実に対する疑念(妄想なのでは?本当に存在しているのか!?)」をジワジワと煽っていく上で、「都合の良さげなヒロイン達」の(可愛いけれど不気味な)存在感は大きかったです。
これらもニュージェネ事件や妄想オカルトと相まって、拓巳を追い詰めていく。
話がひたすら受動的にならざるを得ない…割には、追い詰められていく拓巳の心理描写が丁寧で、真に迫っている。
拓巳視点の、そんな薄気味の悪いサスペンス感こそが見所でした。
…それ故に、「西條拓巳のキャラクターや思考に共感」するか否かで、まず本作の評価が割れるのでは。
もし、自分が拓巳の立場に置かれていたら?
怖い。助けてほしい。でも誰も信用できない。自分自身でさえも…。
非常によく分かります。
次第に深まる謎や、ベールを脱いでいく陰謀。
6話辺りから本格的に真相に迫り始める。
…だが。本作は前半の方が面白かったです。
妄想を具現化する「ギガロマニアックス」とか「ディソード」やらの異能バトルに移行するも、イマイチ盛り上がらない。
ラスボス戦の、妄想具現化能力者同士の異能バトルでの妄想返しとかは(おお~、なるほど?)と少し感心はしましたけれど。
ラスボスが分かり易い悪党で、割と王道な展開なのは悪くなかった。
後半、ヒロイン達が敵ではないと判明していくと前半の緊張感が薄らぎますし…
でもその分、ヒロイン達の可愛さは後半発揮されてくる。
ヒロインそれぞれにバックボーンあるも、1クール(というか後半6話)だけでは最低限の事情しか分からぬ浅さがネック。
蒼井セナの壮絶な過去、ラスボスへの復讐の動機は一番分かり易かったです。
終盤判明する、主人公の秘密…
「テイルズオブジアビス」のルーク彷彿としました。
本作は「妄想」という虚構をもって、西條拓巳のアイディンティティーを揺さぶる物語だった。
「現実も妄想も、全ては電気仕掛けに過ぎない」ならば、自分とは?何を信じればいいのか?
本作の場合「ヒロインたちとの交流」が救いとなる展開良かった。
その意味でも、前半の疑心暗鬼と拒絶感もまた、ドラマの積み重ねとして無駄では無かった。
特に拓巳を「おにぃ」と慕ってくれる妹の七海ちゃん良い子でした…
…拓巳は終始ヘタレでしたが、最終的にはきちんと己に向き合い、答えを出せたので、成長譚として見れば十分良かったです。
総じて
「ミステリーものとしては、中の中。バトルものとしては下の下といった印象。」(剣道部さんのレビュー)
…なんて冷静で的確なレビューなんだ!
全くその通りで、作品としての出来はイマイチでした。
ただ「主人公の心理描写・追い詰められる過程」は上の中、「成長譚」としてならば、中の上はあったと評価。
前述の通り「西條拓巳の置かれた状況と、心理描写」に共感出来るか否かに尽きるのですが、私は大いに共感したので、出来が悪い割には気に入っている作品です。
『作画』
異能バトルは微妙だったり、作画は全般的に決して良くは無い。
ただ、ゲームのキャラデザとしてヒロイン勢の可愛さは十分。
ニュージェネ事件の不気味さや渋谷の雰囲気も中々。
妄想と現実が交差する演出はまぁまぁでした。
作画的には特に不満は無いです。
『声優』
吉野裕行さんの、パラノイアと人間不信に追い詰められる演技が抜群のはまり役でした。
特に前半物語に引き込んでくれた。このイライラさせるボイスたまらんです。
…将軍役も、吉野さんが兼任すればなお良かったような。(メタ的に)
ヒロイン勢は喜多村英梨さんの元気娘など安定感あり。
友永朱音さんや榊原ゆいさんなどゲームヒロイン声優が豪華でした。
『音楽』
OP、ED共にかなりテーマに迫っている。ゲーム原作アニメは良い主題歌多い印象。
岸本あやせ(榊原ゆいさん)歌う作中歌も中々。
BGMもジリジリと焦燥感煽る感じで良かったです。
『キャラ』
全アニメ史上でも上位に入りそうなヘタレ主人公・西條拓巳を受け入れられるか否か?
徹底的にオタクで、徹底的に対人交渉に臆病。そして徹底的に現実逃避。
優しくしてくれる妹他に対する態度もヒドイ…
ただ、彼の立場なら是非も無しと思うし、私自身も対人関係ニガテな自覚があるので、別に嫌いではない主人公というか、むしろ共感できる。
それに彼は前半こそ目を背けて逃げ回っていたが(追い詰められてやむにやまれずとはいえ)ちゃんと事態に立ち向かったので、十分立派ですよ。
ヒロイン勢は多過ぎて印象散っている感はありますが、それぞれ可愛かったです。
眼鏡のドジっ子なお姉さん、楠優愛(くすのき・ゆあ)先輩かわいい♪と思いきや…コワイ!?
前半は「あざとく可愛い子ほど信用できない」傾向なので、とっつき難いクール系の蒼井セナや綾波系の岸本あやせの方が可愛く感じる。
でも咲畑梨深(さきはた・りみ)のあざといフレンドリーさも捨て難い。
萌え的には梢(こずぴー)と妹の七海ちゃん二強でした。
七海ちゃんええ妹や…おにぃ呼び萌え。
せいらたんは癒しでしたが、てっきり妄想だと思ってた。
敵ボスの野呂瀬玄一が良い感じに外道、ベタながら敵は悪い方が良いです。{/netabare}