101匹足利尊氏 さんの感想・評価
3.5
物語 : 2.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
あの雪は静寂
原作カードゲームは未プレイ。
正直、設定等はかなり綻びていると思います。
けど、破綻しているから……とバッサリ切り捨てられない。
構成・脚本の岡田麿里さんを始めとした女性スタッフらが暴いた、
壊れた女子の病んだ精神世界に直に触れるが如き
禁断の魅力に惹かれてしまいます。
{netabare}軸となるリアルを巻き込むカードゲームのルール自体、
バランスも何もないイカレたゲームの強制ですがw
不思議とこんな駄ゲー作ったのは誰だ?
と開発者を責める気にはなれない。
本作の場合はむしろ、これだけ心身が壊れた少女が考え出した
遊びのルールならこんなもんだろう。
ゲーム性を強調したシナリオではよく、
狂った思考と冷静な考察が同居した、
マッドサイエンティストの如き人格が、
理路整然としたゲームを仕掛けたりしますが、
そちらの方が意外とリアリティに欠けるのかもしれない。
本作を見ているとそんな着想すら浮かんでしまいます。{/netabare}
もう一つ、本シリーズは延々と続くデジタルなカードゲームの狂乱や、
人間らしさが喪失した人々の鬱屈に、
季節感が光明として差し込む描写が印象的です。
二期では特に、{netabare}外部と隔絶された末、
狂ったゲームの生みの親となった少女。
ずっと変らない天井窓から垣間見える空と、漏れ伝わってくるいつもの喧噪。
それが冬の時だけ趣が変わり、
しんしんと降る雪の静寂が、少女に季節感を伝え、
確かに彼女がまだ、時の流れの中にいることを思い出させる……。
その記憶が凍り付いた少女の精神溶解の足がかりになり、
イカれたゲームからの脱出の糸口につながっていく……。
さらに真冬の二期でもがく主人公の取り戻したいものが、
一期で大切な友と一緒に過ぎ去った夏への憧憬となって交錯し、
戦いの原動力となっていく……。{/netabare}
本作は四季が人の心を蘇らせる描写が鮮烈です。
だから私にとって『selector』シリーズは、
海水浴もクリスマスもありませんが、
一期は凄く夏アニメだと思いますし、
二期はとっても冬アニメだと思います。
日々の繰り返しに心が凝り固まっている方は、
是非、外の世界を見て、四季を感じて人間性を取り戻して欲しい……。
カードゲームは一向にプレイする意欲がわきませんがw
移ろう季節の素晴らしさを逆説的に痛感したりする。
独特の感覚が脳裏にこべり付く作品です。