「この世界の片隅に(アニメ映画)」

総合得点
82.9
感想・評価
699
棚に入れた
3102
ランキング
347
★★★★★ 4.2 (699)
物語
4.3
作画
4.2
声優
4.2
音楽
4.0
キャラ
4.2

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ネタバレ

四畳半愛好家 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

世界の片隅で生きる人間の強さと美しさ…「君の名は。」も素晴らしいけど、是非こちらにも注目を!

 本当に劇場で観てほしい作品です…。場所によっては上映終了が近いです。
 
 この映画を観た後に何を感じるかは人それぞれだと思います。でも、観終わって何も感じない人はいないはずです。

 自分はレイトショーでこの映画を鑑賞しましたが、鑑賞後の場内の不思議な静けさと連帯感が印象的でした。各々がこの映画で何かを感じ、何かを考えているような静けさ…。
 私は今生きている自分の人生が、鑑賞前よりも美しく大切なものだと感じることができました。それだけでも観たかいがあった…。

 クラウドファンディングで作られたこの映画…日本人として是非触れてみてほしい作品ですし、世界にもひろく広がってほしい力作だと思います。

 ちなみに 今作の原作者「こうの史代」が描いているイチオシ作品に、「夕凪の街 桜の国」という漫画があります。これは原爆に関する漫画なのですが、珠玉の一冊です。
 是非、一読を…!

以下ネタバレ付き評価詳細{netabare}

♦物語:
 物語の主役は兵士や軍人でなく、苦しい戦争の時代に生活を営む人々。「なぜ戦争が起こった?」「誰が悪かったのか?」とか、そういうことを描いてるいる作品ではありません。ましてや、「アメリカは酷いことをした!」なんて責める映画でもありません。

 「この悲劇を二度と繰り返してはいけない」というメッセージは、少なからず感じるものの、それが主題というわけでもない気がします。実際、主人公すずや夫周作だって最後まで亡くなりませんでした。「悲劇さ」だけを描きたいわけではないのはこの辺からも明確だと思います。

 印象的なのが、戦争中にも関わらず、笑えるシーンや明るいシーンが沢山あること。戦争中だからって人間は暗い気持ちで居続けることはできません。仲良しが顔をつき合わせれば、そりゃ冗談も言うし、戦争中だって貧しいながらも普通の生活を続けていくのです。考えてみれば当たり前のことですが、新鮮な気持ちがしました。

 「ぼーっとしたまま生きていたかった」というセリフや、15日の終戦時にほんわかした性格のすずが激昂し、泣いたシーンも凄く印象的でした。
 「まだここに5人もおるのに…左手も両足だってあるのに…!」
 戦争を知らない自分ですが、この気持ちはすごくわかる気がするんです。戦争だったからこそ、人が死んでも乗り越えてこれた。戦争だったからこそ、大好きな絵を上手く描くことができた右手を失っても強く生きてこれた…。
 戦争が終わったとき、彼女の失ったものをどう捉えればいいのでしょうか…。終戦宣言を聞くなり、そそくさとその場を去った姉径子が晴美を想い一人で号泣しているシーン…。ここら辺は自分も号泣してしまいました。

 そうして戦争が終わり、生き残った方々…そうした人々が力強く生きたからこその今の僕たちがいるわけです。
 自分は鑑賞後「すずたちが生き残ってくれって良かった」という率直な気持ちと同時に、「彼女たちの力強い生き方」に勇気と希望を感じることができました。個人的には、この辺りがこの映画で伝えたかったことなんだと思います。

 余談ですが、原作なしだと気づきにくい部分も沢山あるみたいです。すずの妊娠疑惑のシーンとか…。原作を読んでからもう一度観てみたいと思います。
 
♦声優:
 まず主人公すずを演じた のんさん。舌足らずで、演じる技能は決して高くなかったと思います。しかし、すずに最適なのは間違いなく彼女です。少し棒に近い演技も、のんびりしたすずの性格と完全にマッチしていて…。最高に生きているキャラクターになっています。
 そのほか、目覚ましい活躍をしている細谷さんや、小野大輔さんなど、他の声優陣も非常に丁寧に演じられています。

♦キャラクター:
 こうの史代さんのキャラクターがそのまま動き出しているような作品で、キャラが本当に可愛い。特に主人公すずさん。失敗してしまった時の表情とか凄く可愛い。夫周作との嫉妬から発生した幸せすぎる喧嘩のシーンとか、すごくキュンキュンしますね!(キモい)

 個人的に、娘晴美ちゃんを失ってしまった重すぎる痛みを抱えながらも強く生きる周作の姉の径子もお気に入りでした。径子の強さがあったからこそ、すずは周作と『呉』で生き続ける事ができたわけです。
 そんな径子にとって、「最後に連れてきた母を亡くした子供」の存在は一つの救いになると思います。晴美ちゃんの服を着せてあげてるしね…泣

♦作画
 素晴らしいです。こうの史代の優しい画がそのまま動き出したような素敵な作画。キャラのモーションも最高です。
 料理を作るシーンとかも丁寧ですし、晴美ちゃんの死のシーンの演出だったり、非常にこだわりが感じられます。黄色いタンポポに自分を重ねてそっと守ってあげる小さな動きだったり、鳥を追いかけるシーンの演出だったり…すごかったなぁ。

♦音楽
 映画にかなりマッチしていた印象があります。エンディングで連れてきた母を被爆で亡くした子供が晴美ちゃんの服を着ていて…泣くわなぁ。
{/netabare}

 本当はまだまだ書きたいことがありますが、キリがないのでこの辺で。
 書ききれないほど、細かい部分でも良いシーンが多いんです…。

 「君の名は。」も本当に大大大好きな私ですが(RADとかけています←うるさい)、この作品の繊細さはジブリ作品に通づるところもあるし、非常に日本的な作品だと思うんです。

 繰り返しになりますが、決して「日本は可哀想な被害者だ」とか「アメリカは卑劣だ」とかそういうことを伝えている映画ではありません。
 世界中で未だに行われている戦争、そうした戦争の中でも強く生きている人々の美しさと大切さ…。きっと世界中で共感できる部分がある映画だと思います。

 世界に発信するなら、寧ろこっちを!
 そんな風に思っている自分がいたりします。

 まずは日本、もっと注目して、もっと多くの人が観てくださりますように!!

投稿 : 2017/01/08
閲覧 : 272
サンキュー:

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