STONE さんの感想・評価
2.7
物語 : 1.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
最終話だけが問題だったのではないような
原作は未読。
最終話がかなり批判を受けたことで話題になったが、最終話でいきなり豹変したわけではなく、
序盤からある程度の毒性は見えていた。
それでもメインヒロインの雨宿 まちの可愛さや、まちと熊のクマ井 ナツとの交流のほのぼの
路線がメインかと思いきや、毒性はドンドン強くなり、それに伴ってネットでの批判は増えていき、
最終話が決定打となった印象。
基本的なネタはまちがひどい目に会うというもので、これが自身の行動や考え方に起因する
ものと、他者によるものとがある。
前者は激しい田舎コンプレックスによる村外の者へのコミュニケーション障害とも言えそうな
性格によるものが多く、内向性が生む空回りがネタという点では「私がモテないのは
どう考えてもお前らが悪い!」(以後、ワタモテ)の黒木 智子(もこっち)に似たような形。
ただもこっちの場合、自己中心的で他者を見下しているようなところがあるために、ある程度の
因果応報的な要素があるのに対して、まちの場合は素直な可愛い女の子といった描写がなされていた
ためにただ可哀想な印象が強く、笑いに繋がりにくい感じがあった。
ストーリー的にも例えばまちと対峙した村外の者のある態度を曲解して、まちが被害妄想に
なっていくといったアンジャッシュのコントのような展開でもあれば面白みがあるのだが、
そういった手順を踏まずに対峙した時点で問答無用で被害妄想が発動するためにかなり単調に
感じた。
あとコメディと言えどもある程度の成長を期待したいところだが、まちのこじらせ方は回を
追うごとにひどくなる一方で、まち自体の魅力もかなり損ねている感があった。
後者の他者によるものは、前者同様にワタモテとの比較で言えば、ワタモテは回りが優しい人で
満ちていたのに較べて、本作はかなりひどい状況。
代表的な雨宿 良夫や酒田 響などは自身の正論はあるのだろうが、端から見ているとやはり一種の
いじめと取られても仕方ない感じ。
良夫や響が目立つために判りにくいが、他の村民もまちが巫女という役を担っているために色々な
責任を押し付けているような感があり、更に娯楽の少ない熊出村ゆえにまちをおもちゃにしている
ような感さえ感じる。
コメディの形を取りながら、村社会の閉鎖性や古くから続く因習が生む悲劇などを
描きたいのかと、本気で思ってしまった。
個人的に一番ひどいなと思ったのがなつで、良夫や響などは幾ら親しくても所詮は他人であるのに
対して、なつは幼い頃から同じ家で暮らす家族同然の存在。
そんななつがあまりまちの気持ちを理解してやらず、ことあるごとにまちに問題があるように
接していたのは結構きつい。まちにも問題があるのは事実なんだろうけど。
一応、まちの田舎コンプレックスを治すために教育している体で話は進んでいくが、最終話で
「まちが村から出て行って欲しくない」と真意を語っていたように、最初からまちの田舎
コンプレックスがひどくなるように追い込んでいたのかと思えてしまう。
なつ自体はIT技術を駆使するなど、村で一番進んでいるのが熊というギャップ的な面白さを狙った
キャラなのだろうが、これもまちの都会オンチ、あるいは機械オンチであることを強調するための
道具立てに終わってしまった感がある。
展開的にはまちのこじらせ方が増して、そして問題の最終話。
ここでの東北アイドル自慢コンテストでまちがなんらかの成長を見せ、視聴者がカタルシスを
得られるような結果なら、これまでの展開も長い溜めとも取れなくもなかったが、結局は一種の
サイコホラーとも思える終わり方。これじゃあ叩かれても仕方ないかなと。
ある意味やりきったとも言えなくもないが、ここまで作り手と視聴者のズレを感じた作品も
珍しい。
個人的にはホラーやサスペンスのえげつない作品も好きだし、コメディやギャグものでも
ブラックな笑いのものも好きだったりするけど、本作はブラックな部分があまり笑いに繋がって
いない印象で、作品コンセプトがコメディである以上、これはダメだろうという感じ。
まち役の日岡 なつみ氏の演技などは常に良かったが。
2018/07/28
2020/05/16 誤字修正、改行位置変更