「昭和元禄落語心中(TVアニメ動画)」

総合得点
81.2
感想・評価
904
棚に入れた
4160
ランキング
417
★★★★☆ 4.0 (904)
物語
4.1
作画
3.9
声優
4.3
音楽
3.9
キャラ
4.0

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ネタバレ

STONE さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

二人の落語家の青春物語

 原作は未読。
 2期は視聴済みですが、未視聴の体で書いてます。

 本作品が落語という話芸がメインモチーフになっているため、他作品以上にキャストの
演技力が作品のクオリティに寄与している感があったが、まず1話の与太郎の落語での中の人の
関 智一氏の演技に引き込まれてしまった。
 この与太郎だけではなく助六の山寺 宏一氏、菊比古の石田 彰氏のいずれも
素晴らしかったが、特に出番の多かった菊比古に関しては少年期から老齢に差し掛かる
時期までの年齢差、落語自体も未熟なものから円熟の域に達したものまでと、見事に使い分けが
なされていた。
 個人的には一時期、落語にはまっていた時期があったが、落語自体は当たり前だが本職の
落語家の方が上。ただ落語家がある程度自分のペースで話せるのに対して、本作は絵に合わせて
話さなければいけないわけで、声優というものの凄さを改めて強く感じてしまった。
 落語シーンばかり言及してしまったが、落語以外の演技も良く、特にみよ吉を演じた
林原 めぐみ氏の演技は女の様々な面を見事に見せてくれる。
 落語シーンに関しては演技だけでなく、作画による細かい所作の描写、場の空気や話し手の
心情をより印象付けるようなBGMなど、総合的に素晴らしい。

 ストーリー自体は有楽亭 八雲(菊比古)の昔語りによる菊比古と助六の二人の落語家の
出会いから助六の死までが中心で、二人の落語に賭ける青春物語であり、二人の前に現れた
みよ吉を絡めた恋愛ものであり、更に落語を通して見た昭和史といった趣きもある。
 1話から助六の死が明らかにされていることで悲劇的結末は判っているのだが、その死因
などが一種の謎のように掲示されていたため、それがミステリー要素として話をうまいこと
引っ張っている感があった。
 中心となる菊比古と助六だが、とにかく対称的な二人といった感じで、助六に関しては
天才型の印象。あまり精進しない助六を諭す菊比古だが、あの生き方だからこその助六の
落語といった感があり、真面目に稽古に励むと逆に彼の落語が失われてしまいそうな気がした。
 ただ、その生き方は破滅型といった印象で、ああいった結末もなるようになったかという気も。
 破滅型と言えば、みよ吉もそんな印象で、時代ゆえの要素もあるのかもしれないが、菊比古
ありきという他者依存の生き方が愚かしく、可愛く、哀しい。

 一方の菊比古は努力型といった感じだが、彼は彼の才があり、自身の落語開眼にするに至る
までの過程もなかなかの見どころ。
 菊比古と助六の物語は菊比古の過去語りを描いたものであるため、主に菊比古視点で
描かれるが、菊比古にとっての助六は長い時を過ごした友人であり、これからの落語界を背負う
同志であり、その才を羨む嫉妬の対象であり、自身の落語のために必要不可欠な存在であり、
といった感じで愛憎入り交じった複雑なもの。
 それに対する助六も終盤において菊比古の境遇を羨んでいたことが明らかになるなど、その
感情は単純なものではなかったようで、この二人だけしか判らぬ関係性がとにかく印象深い。

 クライマックスは助六とみよ吉の死だが、その直前の四国における菊比古、助六、小夏の三人
暮らしや落語会が、未来展望も含めて幸せ描写として描かれるためにより悲劇性を感じる。
 この落語会で助六の演目が「芝浜」であったのがなんとも皮肉なこと。

 最終的には話は与太郎の時代に戻り、晴れて与太郎は真打ちになるが、ここで気になったのは
寄席の客のまばらなこと。
 現実の落語界においては60〜70年代の立川 談志や林家 三平らのメディアへの露出が
少なからず寄席に客を呼び込んだ要因の一つといった印象があるが、この作品ではそういった
役割を果たすべき存在であった助六が夭折したため、落語界が衰退していったという一種の
パラレルワールドなのかな、という気がした。

 風俗描写、背景など昭和のノスタルジーを感じられるのも良かった。

投稿 : 2017/09/19
閲覧 : 242
サンキュー:

6

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