STONE さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態：観終わった
熱い時代の熱い男
原作は未読。
若き日のブラックジャックを描いた作品で、彼の行動の背景にベトナム戦争、公民権運動、
学生運動とそこから過激化していく過程行動などの時代性を取り入れたストーリーが興味深い。
こういうものは政治・思想的問題が絡んでくるためになかなか取り扱いが難しかったり
するが、それに果敢に挑んでいるような印象。
作り手が人間である以上、その思想が作品に反映されるのは当然と言えば当然。
個人的には各キャラは作中世界では生きている人間であるため、そのキャラが右寄り
だろうが、左寄りだろうがあまり気にしない。
ただ、起きている事象に関しては辺に美化したり、矮小化したりはしないで欲しいなとは
思うが、その辺は割と客観的に描けているんじゃないかなと。
いずれにしても思想、体制反体制問わず、人間の嫌な面が描かれていることが多い。
後のブラックジャックこと間 黒男は元々偏屈である種の変人気質の人のようだが、
こういった人間の嫌な面に触れて、ますますこじらせてしまったみたい。ただ、彼の思想、
精神性などは単に人命を救いたいというシンプルなものであることはよく判る。
ストーリーの方はかなり荒唐無稽な展開なものもあるが、捻りのあるものが多くて、
なかなか面白い。
ただ結末は間の尽力でハッピーエンドとはならず、ある種の無常感を感じさせる後味の
悪いものが多く、この辺も彼の人格形成に大きな影響を与えているみたい。
オリジナルのブラックジャックもクールで斜に構えたような雰囲気とは裏腹に結構、
熱くなる描写が多かったが、本作は若い頃ゆえに更に血気盛んな印象。
この熱さが時代の熱さとリンクしているようで作品に勢いを与えているが、熱くなるあまり
「医師免許、それがどうした」といったツッコミたくなるような言動も多々。ネタ的作品と
しても楽しめたりする。
一応、ヒロインは岡本 舞子ということになるのだろうが、あくまで先輩後輩の関係に終始
しており、立ち位置としてはむしろ藪 正人の方がヒロインのような。
ドクター・キリコのようなオリジナルに登場するキャラだけでなく、多くのキャラが他の
手塚作品より導入されており、いわゆるスターシステムの形態を取っているが、この各キャラを
見つけていくのも楽しい。
全体的にも手塚 治虫氏に対するリスペクト感が強く感じられる。
