デリダ さんの感想・評価
4.4
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 5.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
現実と夢が錯綜する生きることを問う作品
この作品は他の方も既に紹介していますが、セーラームーンを作った監督が当時の少数先鋭のクリエーターを集めて1997年に世に放った稀代の怪作、名作です。
制作チームであるビーパパス(Bepapas)は幾原邦彦がオリジナル作品制作のために作ったチームで、その名前は「大人になろう」の意。従来は著作者として認められることがほとんどなかったアニメーションの制作スタッフが原作者の立場で表に立つことも目的としていた。(wikipedia抜粋)
このチーム名から既に目的が明確に示されていてこの全てが作品に盛り込まれています。
このアニメの物語性は誰もが認めるのもさることながら
映像表現としても日本のアニメ史に残る影響力を持っていて
この中で数ある特徴的な画面構成、表現やポージングは、のちのアニメや漫画に多くオマージュされています。
(こち亀をはじめとしたいろんな作品に見つけることができるのでそれを探すのも一つの楽しみになります。)
宝塚などを思わせるような非常に煌びやかで、装飾過多な舞台のような世界観
また少し古めかしくも思われる少女漫画的なロマンスの人物の表情や演出
(この視覚効果は、なんとなくではありますが巌窟王と似ているようにも感じました。巌窟王の内容と演出の関係的にも類似点はありますし、ウテナの影響が巌窟王にあったのでは、と勘ぐってしまいますね。)
それらをぶち壊していくようなロマンスとはかけ離れた愛憎劇
そしてなぜかたまに入ってくる一話使い切ってのギャグ回等々
本当によくできています。
長編アニメなので、中ダレ感は否めないのですが、時折入ってくる唐突なギャグ回が未だに脳裏に焼きついています。
ギャグというのは支離滅裂だからギャグなんでしょうが、あまりにも突飛というか、衝撃です。
確かに見る人を選びますが、内容のわかりやすいアニメらしいアニメと言うより映画のように
見るといいのかもしれません。いろいろな意味で初見の人の期待を裏切ってくれる作品だとも思います。
物語はウテナという男勝りな主人公の女性が学園に転校してくるところから始まります。
その学校でアンシーと出会い物語は加速していくのですが、この学校の中ではまるで貴族のような出で立ちをした登場人物が次々と決闘をウテナに要求していきます。
夢のような薔薇の花園が摩天楼のような校舎の中にあり夢とも現実とも区別のつかない世界の中で戦いは進んでいきます。
この戦いと並行いて登場人物たちの恋も進んでいくのですが、決闘の時の夢のような世界とは打って変わって醜い人の心が露わになっていきます。
最初は非常にフェミニズム的な作品のように思われましたが、決してそういうわけではなく
カッコつけたがりの幼稚で子供のような一人の主人公が一人の大人として覚悟を決め、
同じように夢見て現実から逃げ続けるだけの少女が恋と友情を天秤にかけ自分が傷つくことも厭わない強い女性に変わっていく様が克明に描写されています。
この物語の中ではエンゲージという言葉が非常に特徴的でもありますね。
この中で出てくるきらびやかなエンゲージリングや、戦うたびにエンゲージと唱えるシーンは記憶に鮮明ですが
徐々に明らかになってくる、過去の記憶や芽生えた愛にはエンゲージという言葉は全く使用されません。
学園生活の中では、大半の学生が結婚とは縁遠く、大抵口約束やなんとなくの友情や恋愛をするように
舞台の上の正義感あふれる戦いと、舞台裏での人にはあまり言えないような恋愛の対比がとても鮮やかでした。
最終的な展開も素晴らしい、これは是非自分の目で確かめてもらいたい作品です。
この作品はTV版と劇場版で完結しますが、
常に現実とも夢とも区別のつかない世界が入り乱れ、これはまさしく誰もが思い描く、こんな世界の中でこんな人でありたいと思い描く理想と夢と、あまりにも理想と食い違う残酷な現実の間で揺れ動く人の心を増幅して描いているようにも思えます。
そして何よりこの壮大なスケールを描ききることのできたスタッフ本当にすごいと思います。
この作品はアニメや漫画における今までの少女という題材を刷新し、のちのまどかマギカなどにもつながってくるような素晴らしい作品だと思います。
何よりopが最高に良い!必見の作品です。カラオケで歌えば知らない人でもなんか盛り上がる、良い曲です。どこかで聞いたことあるって人も多いかもしれません