STONE さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ミスマッチ感覚が生む独特の個性
原作は未読。
インパクトという点では1話に尽きるかな。序盤の明るい学園生活の描写から徐々に影の
要素が顔を覗かせて、最後にドーンと現実を見せるというやり方はなかなか。
この学園生活の描写は現実との対比という意味合い以外にも、主人公である丈槍 由紀(ゆき)の
やけに幼い言動や行動など、後に繋がる要素もうまいこと描いているなと。
1話のインパクトが強かったため、出オチで終わる懸念もあったが、その後も話をうまく
回していた感がある。
特に中盤までは佐倉 慈(めぐねえ)という存在の謎が一種のミステリー要素として機能
していたように思える。
このめぐねえに関して、ゆきの「めぐねえの死を認めたくない」という現実逃避が生んだ
産物であったが、めぐねえの好判断により、ゆきが助けられることがあるなど、ゆきの無意識の
生存本能が生んだ人格とも思える。
このめぐねえの助け以外にも、ゆきの発言や行動がいい方向に進むことが多く、彼女の本来の
生存能力はかなり強いのでは?
展開的には対ゾンビというバトル要素と、閉鎖状況による学園生活という両輪を軸に話が
進んでいく。
バトル部分に関してはいわゆるゾンビものによく見られるものだが、非力な女子校生4人の
うえに戦闘能力があるのが恵飛須沢 胡桃(くるみ)のみという状況ゆえに、他作品以上に大変さを
感じる。
一方の学園生活はこの作品の個性とも言える部分だが、バトル部分がゾンビに殺されない
ための肉体的生存のためのものなら、学園生活において、あえて通常の学校行事を行う展開は
生きていること実感するための精神的生存のためのものという印象。
ゾンビに関して、全体的に感じるのは既存のゾンビものから影響やオマージュ感で、中盤の
ショッピングモールを舞台にしたくだりなど、ジョージ・A・ロメロの「ゾンビ(原題;Dawn
of the Dead)」が自分のファーストゾンビだったので嬉しくなってしまった。
本作はゾンビもの以外にも、演出などに洋画っぽい部分が多かったのも印象的。
終盤の危機に関して、ゆきの一種の覚醒により状況が打開されるが、そういう意味ではゆきの
成長物語とも言えそう。
このゆきの覚醒に関して、ゆきの被っていた変な帽子を脱いでいたのが印象深い。
この帽子がこれまでのゆきの幼さをより印象付けていたが、帽子自体が退行現象を象徴
していたようで、それを脱ぐことで退行現象からの脱却を示唆していたようであり、見た目の
印象が変わったのも頼もしさが出てきた感があった。
この帽子以外にも直樹 美紀(みーくん)のCDプレイヤー、くるみのシャベルなど、小物の
使い方が上手い。
サバイバルホラーと日常系の融合という、なかなか意表を突いたコンセプトだったが、この
ミスマッチ感覚が独特の個性を放ち、かなりうまくいった感が強い。
ただ日常部分それ自体はホラー要素の対比としては見られるが、単体としては今一つな感が。
あとゾンビものというとゾンビそのものに対する生理的気持ち悪さなどもあるが、アニメで
それも萌え絵だとさすがにそれは望めない。
原作がまだ継続中ゆえにお終盤はオリジナル展開だったようだが、1本のアニメ作品としては
うまくまとまっていたんじゃないかと。
ゾンビ発生の謎なども明らかにされないままだったが、描写が学校という局所的な部分に
絞られていために、全体的な部分はあやふやでも個人的にはあまり気にならなかった。そもそも
ゾンビ作品って、そういうの多いし。