ぽこやん さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
現実でも異世界でも、「生きて行く」ってこういうことなんだろう。
異世界ファンタジーとしては珍しい作風。
「人間は本来、突然成長できるものではない」
なるほど、アニメだからこそ当たり前だと思ってたことが、実は当たり前ではない。
ということを改めて教えてくれた作品。
現実の自分に置き換え考えると、このアニメに感情移入できた理由がわかった。
現実でも異世界でも、生きていく、というのはこういうことなんだろう。
ファンタジーRPGの王道として、
1、異世界に召喚(最初からチートの場合も)
2、様々な経験を経て成長(最強技を身につけたり)
3、強大な敵に立ち向かう(魔王を倒す目的とか)
4、勝利を収め大団円(世界を救ったり)
という流れを繰り返しながら、1クール2クールに詰め込むものが多い。
この物語をに説明をするにあたって、どう説明するのがいいか・・・
{netabare}読んでいるみなさんは、例えば、
「スライム」「ゴブリン」
などを聞いたときに、どういうイメージを持たれるだろうか。
序盤に出てくる、サクサク倒してレベルを上げるための雑魚。
というイメージが大半なのではないだろうか。
その過程に対して、長時間を費やす、なんてことはほとんどないと思う。
でも実は、倒される側のモンスターにも命がある。
こちらにはわからない生活がある、仲間だっている。
そして感情がある、例えば、
「死ぬのが怖い」
そんなことを考えたことがあるだろうか。
少し想像してみて欲しい。
例えば自分が、
「何も知らない土地」
に、
「なんの記憶もない状態」
で放り出される。
「今までモンスターなんかと闘ったこともない」
「本物の武器や防具なんて使ったことがない」
「なんの経験も、なんの記憶も残ってない」
「最強の武器防具なんてものは持っているわけもない」
「その世界に行った瞬間に特別な力を手に入れたわけでもない」
そんな状態で、
「生きるためにモンスターと本気で戦いをして下さい。もちろん負けたら死にます、死ぬんです、生き返るなんて都合のいいことはありません」
といわれたら。
ド素人が真剣を渡されて、それでは本気で殺し合いをしましょう、異形の相手と。
楽勝、と考えることはできるでしょうか。
怖い、戦いたくない、死にたくない。
そう思うのも本能なのではないか。
そしてそれは人間だけでなく、相手も思ってることかもしれない。
殺される前に殺す。
生きるために、殺す。
何度も何度も何度も、生きるために戦う。
自分が生きるために、確実に成長するために同じ相手と戦う。
でも同じ敵だから、毎回同じ戦い方なのか。
敵にも思考があり、戦略があり、こちらを殺そうと考えている。
生きるために。
その命のやり取りを一局一局丁寧に切り取った物語、という感じだろうか。
1話に始まり最終話には最強の技を身に付け、強大な敵を倒す。
でもその中には一日一日の生活、成長、日常会話、様々なものがある。
けれどもそれを描写していると、最終局面までたどり着けない。
でもその部分部分を詳細に表現し、よりリアルに描いたのがこの作品。
これを物語が進むのが遅い、無理と感じるか。
あぁ、本来の冒険ってこういうことだよな、と感じるか。
両者には好みがあるので、圧倒的に前者じゃないと受け付けない、という人は耐えれないと思う。
自分はどちらかといえば前者のタイプ、主人公最強、という話が好きだったが、意外と物語にすんなり入ることができた。
理由は冒頭に書いたことから。 {/netabare}
気持ちいいように楽々と強大な力で進んでいくバトルファンタジーも面白い。
でも時には、
「この物語の登場人物たちは、普段どんな生活をしているんだろう」
「あそこからここまでたどり着くのに、どんなことがあったのだろう」
「こいつとこいつ、どんな会話をしているのかな」
「いきなり恋心なんて有り得ないだろ、どんな理由で好きになっていったのかな」
とか考えてみるものいいかも知れない。
そう思わせてくれた作品。