「舟を編む(TVアニメ動画)」

総合得点
73.2
感想・評価
669
棚に入れた
2939
ランキング
1042
★★★★☆ 3.7 (669)
物語
3.8
作画
3.7
声優
3.8
音楽
3.5
キャラ
3.6

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Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

「辞書は言葉の海を渡る舟、編集者はその海を渡る舟を編んでいく」

この作品の原作は未読ですが、wikiをチラ見したところ全1巻の物語のようでした。
だから物語の完結までしっかりと描かれた作品…と思うと本当に感慨深いです。
2013年には映画化もされたところを見ると、この作品の人気も伺えます。

今回アニメ化された訳ですが、ノイタミナらしい作品だったのではないでしょうか。
辞書作り…一見すると物凄く地味で単調な作業だと思います。
実際に作業自体は単調なのですが、この作品が言いたいのは恐らくそこではありません。

ここで表現されている舟とは言葉でありその言葉を使う人生そのもの…だから海を渡る舟を編んでいく事に終わりなんてないんです…
だから地味でも単調でも続ける事に意味があり大切な事なんだ…という事が言いたかった事ではないでしょうか。

それと、辞書という題材を取り扱っているからか…この作品は他のどの作品よりも言葉を大事に扱った作品だったのではないでしょうか。
そして言葉を心の底から大事だと思える人じゃないと辞書作りは難しいと思いました。
そういう意味では人を選ぶ仕事である、ともいえると思います。

主人公の馬締は、初めから言葉に対する独特のセンスが光っていたと思います。
でも世の中の部類からすると圧倒的少数派だと思うんです。
誰もが言葉に対して鋭敏なセンスを持ち合わせている訳ではありません。

でも鷹が爪を隠いている…これは往々にしてある事なのではないでしょうか。
私はこの作品の中で大好きなシーンが幾つかあるのですが、その中の一つに女性ファッション誌部門から転属してきた岸辺みどりが言葉の面白さを自身で体現しているシーンがあります。
1+1=2を証明するのはとてつもなく難しいですが、それに匹敵しそうなほど難しいと思ったのが「右」を証明すること…
華やかなファッション誌から地味な辞書作りに転属…本人は厄介払いされたとしか思っていなかったようですが、彼女は見事なまでに「右」を完璧に証明するんです。
考えながら…言葉を発しながら勢いと力強さを増していく彼女…
彼女もまた辞書作りの鷹だったんですね…

大好きなシーン…といえば月明かりに照らされた下宿先…馬締の部屋での香具矢さんとの一幕は外せません…
香具矢さんに手渡したのは、馬締の実直で真面目な性格をきっとそのまま映し出したようなものだったんでしょう…
交わす言葉は決して多くはありませんでした。
でも多くの言葉はいらないんだと思います…伝えたい言葉はたった一言なんですから…

この出来事から物語は13年後へと時を一気に進めるのですが、未だ大渡海の編集作業は続いていました。
馬締が辞書編集部に移ってきた時には既に編集作業に入っていましたから、辞書を作るには一体どのくらいの労力が必要なのか見当もつきません。
でも、辞書はこうして出来るモノ…いえ、こうしなければ出来ないモノだという事が良く分かりました。

物語の終盤…辞書出版をどうしても急がなければいけない理由が出来てしまいました。
途中でアクシデントもありましたが、その後の作業は概ね好調でした。
辞書編集部のみんなは一丸となって頑張ったと思います。
だからこそ、下宿先のベランダで零れる涙に悔しさと辛さが感じられたんだと思います。
こんな時にそっと寄り添う香具矢さん…良いですね

辞書は出版したら終わりではありません。直ぐ改訂に向けた準備に取り掛かるんだそうです。
こうしてみると、辞書作りって赤子より世話が焼けるのではないでしょうか。
「大渡海」編集の物語…気になるか方は是非本編でご確認頂ければと思います。

オープニングテーマは、岡崎体育さんの「潮風」
エンディングテーマは、Leolaさんの「I&I」
心に染み入るエンディング…今度カラオケで挑戦してみようと思います。

1クール全11話の作品でした。原作全1巻を綺麗に纏めた作品だと思います。
色んな作品がアニメ化される…アニメファンにとってこれほど嬉しい事はありません。
バトルも萌えも無い…物語で勝負に挑むこの作品の作風は良かったと思います。
しっかり堪能させて頂きました。

投稿 : 2016/12/25
閲覧 : 250
サンキュー:

27

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