yuugetu さんの感想・評価
3.2
物語 : 1.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 2.5
状態:観終わった
ストーリーの完成度が低いだけならまだしも… ※酷評注意※
2016年秋TVアニメ。全12話。オリジナルです。
本格フィギュアスケートアニメという触れ込みでしたが、勇利とヴィクトルの関係性がメインなので、スポ根ものを期待する人、BLが苦手な人にはお勧めできません。
ストーリーにも粗が多くて、伏線かと思えば最後まで意味が無かったり、後出しの情報がカタルシスを台無しにしてしまったりで釈然としません。
私はスケート未経験ですが、興味があってルールを勉強しているスポーツはフィギュアスケートだけということもあり、アニメファンとしてもフィギアスケートファンとしても本作には納得していません。
酷評ですので本作が好きな方はご注意ください。
【良かった点】
{netabare}
個性的なキャラクター達は魅力的でした。
特にロシアのユーリは明確な目的を持って練習と試合に臨んでいる様子がしっかり描かれ、ヴィクトルや勇利への対抗意識から基礎練習に励んでいたりして、とても好印象でした。
地元ロシアでの人間関係がしっかり描かれただけでなく、長谷津での交流がスケーターとしての成長に影響していたのも非常に良かったと思います。
本作でアスリートらしい意地と向上心を一番見せてくれたのは間違いなくユーリです。
乱暴な所は気になりましたし、後半でそういう行動が無くなればさらに成長を実感できたのではないかと思うので、その点が少し残念ですが。
他の選手達も、スケートへの気持ち、勝ちたいという気持ちが描かれた部分はとても良かったです。ポポさんとスンギルはもう一つ見せ場が欲しかったかも。
選手同士が仲が良すぎると思うシーンもありましたが、アニメなので逆に楽しかったですね。
10話ではもっと選手の内面やどう勝つかの戦略を描いて欲しかったです。
作画やプログラム、衣装、音楽はとても良かったです。特に音楽は素晴らしくて、選手の出身国らしさも感じられたりして面白かったですね。
演技中にイメージ映像やモノローグを入れるのは私は好きでした。作画の負担も減らせますし、良い方法だったのではないでしょうか。
でも欲を言うと勇利とユーリのプロは一度でいいので全部流して欲しかったかな。
{/netabare}
【不満点…というか愚痴】
{netabare}
・勇利とヴィクトルが好きになれない・
第1話での「僕は一人で滑っていく。そのために何が必要なんだろう」という勇利のモノローグは、なぜ現役を続けるのかを自分に問いかける内容だと感じたのですが、その結論は描かれませんでしたね。
SP・FPのテーマは、勇利の人生でどちらも大きなハードルだったはずです。
プログラムを試合の中で消化することで勇利の成長を表現出来れば、フィギアスケートである意味も納得できたと思いますが、結局恋愛の問題も周囲の人たちへの感謝も描かれず、うやむやになってしまいました。
9話で勇利が自分からヴィクトルを日本に返したのは、万が一マッカチンが命を落とせば、ヴィクトルは後悔するだろうという理由だと思います。そこは立派なのですが、ヴィクトルがいないと競技に集中できないということは、自分の中に現役を続ける理由を見出せていないということでは?じゃあもう引退した方が…と思ってしまいました。
理由も描かれず最後には現役続行はさすがに無理があるし…
ヴィクトルはヤコフやユーリに迷惑を掛け続けているのも気にはなっていたのですが、天然・ギャグ・ファンタジーで流していました。でも12話でフリー滑走前のユーリを動揺させるような行動を取ったシーンで一気に嫌いになってしまいました…
現役復帰も勇利のためではなく自分のためであるべきだと思うし、トップ選手がトップ選手のコーチを単独で行うのは流石に非現実的すぎますし…
・脚本の都合を感じる部分がある・
肝心のGPFでの点の出方がおかしいのも気になりました。
作品全体通して、プログラムを全て映さないことでうまく点数を誤魔化していた部分はあって、それは良いやり方だったと思います。
ですがファイナルの場合、点が高すぎるのがユーリのSP、JJのSP(どうせ高めに点付けるならジャンプのミスを一つ減らすとかすれば良いのに…)、勇利のFPだったため、全てお話の都合だと感じてしまいました。最初からリアルのルールに準拠していなければ点数は気にしなかったと思うので、どちらかというとストーリーが問題かも。
JJのミス連発はあまりにも突然でご都合展開過ぎやしませんか…。10話を活用できれば予兆や伏線を入れるなどして不自然さを減らせたはずだし、しっかり考えずに脚本を書いているようにしか思えませんでした。
・BL表現が酷くて配慮がない・
しつこいBL描写と品の無いお色気がどうにも無理です…女性向けになる事は覚悟して見始めましたが予想以上に多すぎて…
男子フィギュアの花は力強さ、ダイナミズムです。プログラムによっては繊細な表現や艶っぽい演技も求められますが、その根底には芯の強さや上品さ、女子には無い骨太な力強さが必ずあります。
女性ファンが多いから女性向けに作ったんでしょうけど、こんなリスキーでダイナミックなスポーツに男性ファンがいないわけないんだし、何故BLに抵抗のある層を振り落とすような作品にしてしまったのか、正直理解に苦しみます。
{/netabare}
私はテーマが一貫していること、キャラクターに感情移入できることを評価するので、この作品はちょっと…でした。
スケーターに対するリスペクトを感じないのも大きなマイナスでした。
脚本家と監督が変わらない限り、2期があっても見ないと思います。
2016.12.26