「終末のイゼッタ(TVアニメ動画)」

総合得点
74.9
感想・評価
797
棚に入れた
3913
ランキング
858
★★★★☆ 3.6 (797)
物語
3.5
作画
3.7
声優
3.6
音楽
3.5
キャラ
3.6

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ネタバレ

ピピン林檎 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 3.0 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.0 状態:観終わった

ドイツ語圏の人々に申し訳なくなるほど粗雑で残念なシナリオ・・・

今期屈指の話題作だった割りには、私には最初から余り面白い気がしなかった本作ですが、キャラクターデザイン原案が、私が大好きな『結城友奈は勇者である』と同じBUNBUN氏だったことで、何とか最後まで見終えることが出来ました。

が、しかし・・・変に作画が良く特に兵器の描写にリアリティがあるだけに、終盤になればなるほどシナリオの残念さが一層際立ってきて、担当者の名前をチェックしたら案の定、シリーズ構成&脚本=吉野弘幸氏って・・・もう少しちゃんとした脚本家を付けられなかったの?と思ってしまいました。

どうも私は、この吉野弘幸氏がシリーズ構成&メイン脚本をしている作品は苦手みたいで、今まで視聴済みの作品では、

(1) マクロスF (2007年) ☆ 3.6 (※個人評価)
(2) ギルティクラウン (2011年) ※未評価ですが体感で × 3.2 くらい
(3) アクセル・ワールド (2012年) ※未評価ですが体感で ☆ 3.6 くらい
(4) ビビッドレッド・オペレーション (2013年) ☆ 3.8 (※個人評価)

と、ことごとく外している気がします。
これは単なる私の適当な推測ですが、吉野弘幸氏は単話毎の脚本ではまずまず面白い話を書けるのだけれど、1クールなり2クールなりのシリーズ全体を通しての一貫した作品テーマの設定、ないし各話からの累積効果を利用した終盤での決定的感動ポイントの設定、が出来ない人なのではないでしょうか?(※その点で、花田十輝氏や吉田玲子氏とかなり力量の差を感じてしまう)


◆作品情報

監督         藤森雅也
シリーズ構成     吉野弘幸
脚本         吉野弘幸
キャラクターデザイン BUNBUN(原案)、山下祐
音楽         未知瑠
アニメーション制作  亜細亜堂


◆シナリオ&設定で残念に思った点

残念な所が多過ぎて書き出す気が起きないほどだけど、とくに気になった点だけ。

{netabare}(1)中世期ならともかく、現代の入り口にあたる1940年代の世界に魔女のリアリティはあるのか?

{netabare}英仏百年戦争中の中世期の欧州を舞台として複数の魔女が活躍する2015年冬のアニメ作品「純潔のマリア」では、今の私たちから見ても「中世」という世界(*)が既におとぎ話と化したイメージがある分、そこに魔女が登場する、というファンタジー設定にも、私たちはさほど違和感を抱かずに済んだのだと思います。

(*)百年戦争が終る西暦1453年までが教科書的な意味での「中世」なので、およそ今から560年前の世界。

だけど、近代文明が既に爛熟期を迎え、現代に続く科学技術の華が咲き始めていた今から75年ほど前の世界(※西暦1940-41年頃の世界)という設定では、本作の主人公イゼッタ程度の魔力では、発達した近代兵器の前にとても歯が立つ気がしませんでした。{/netabare}

(2)WWII序盤の世界なのに、WWIモチーフの皇帝や、WWII最終盤になってようやく登場する兵器を無理矢理出されても・・・

{netabare}せっかくのWWIIモチーフなのに、WWI時のドイツ皇帝ヴィルヘルム二世をイメージさせる人物が、ヒトラーに相当する地位に配置されていて違和感が大きい。
また、1940年~41年というWWII序盤の欧州が舞台なのに、WWII終盤になってやっと登場したV2ロケットやドイツが結局完成させられなかった核爆弾を本作の終盤に唐突に登場させたこともチグハグ(そんなことをするくらいなら、本作の開始時期を、ドイツが永世中立国スイスに侵攻する可能性が危惧されていたWWII終盤の1944年夏頃とし、ついでにドイツ軍兵器の中で最も名高いティーゲル/パンテル両戦車を確り登場させた方がはるかに作品が締まる気がする){/netabare}

(3)魔女イゼッタの忠誠心の対象が、公女(のち大公)フィーネ一人に限られており、イゼッタの行動動機が薄過ぎる。

{netabare}例えば、上に挙げた『結城友奈は勇者である』では、讃州中学勇者部の少女たちは「神樹様を守る」ために戦うが、「神樹様を守る」=「自分たちの生まれ育った世界/今も生きている世界を守る」、というイコールの関係であることは明らかだった。
ところが本作では、イゼッタは「フィーネを守る」ために戦っているが、フィーネ自身はエイルシュタットの公女(のち大公)ではあってもエイルシュタット公国の人々あるいは国体そのものではなく、彼女を守ることが必ずしも「エイルシュタット公国を守る」こととイコールにはならない。
そんな関係性のなかで、どれだけイゼッタが「フィーネのために戦う」と宣言しても、それは単なる主人と従者の篤い忠義心の話にしか見えず共感する度合いが薄い。 {/netabare}{/netabare}


◆各話タイトル&評価

★が多いほど個人的に高評価した回(最高で星3つ)
☆は並みの出来と感じた回
×は脚本に余り納得できなかった疑問回


================ 終末のイゼッタ (2016年10-12月) ==============

{netabare}第1話 たたかいのはじまり。 Der Anfang der Schlacht ★ AD1940年夏の中欧
第2話 傷痕と、銃声と Mit Narben und Schüssen ☆ ※バトルシーンは派手だが平凡な人情噺?
第3話 天翔る剣 Das Schwert des Himmels ★ ケネンベルク要塞攻防戦、大公逝去
第4話 魔女の秘密 Das Geheimnis der Hexe ☆
第5話 いつわりの奇跡 Das falsche Wunder ☆ フィーネ大公即位、魔女プロモーション、ベアル峠の戦
第6話 穏やかな日々に・・・ An einem ruhigen Tag… ☆ ヨナス一等兵の不運 
第7話 ソグネフィヨルド海戦 Die Seeschlacht im Sognefjord ★ 対ブリタニア交渉、空母破壊作戦
第8話 残酷なおとぎばなし Das grausame Märchen ★ 白き魔女の伝説、ゾフィーとの接触、城地下の秘密
第9話 ゼルン回廊、燃ゆ Der Sellun-Korridor brennt nieder ☆ 魔女ゾフィーとの対決、イゼッタ囚われる
第10話 魔女の鉄槌 Der eiserne Hammer der Hexe ☆ ゲール軍侵攻、首都陥落、魔石の片割れ  
第11話 フィーネ Finé ☆ ゲール軍新兵器(核爆弾、V2ロケット)、魔女同士の決戦へ
第12話 イゼッタ Izetta × 続き、全権代表会議、魔力の消滅、三年後{/netabare}
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★★★(神回)0、★★(優秀回)0、★(良回)4、☆(並回)7、×(疑問回)1 ※個人評価 ☆ 3.5


OP 「cross the line」
ED 「光ある場所へ」

投稿 : 2016/12/20
閲覧 : 386
サンキュー:

39

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