セメント さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
よろしい、ならば戦争だ!
クリーク!クリーク!クリーク!
<物語>
エログロバイオレンスの極みとも言うべき平野耕太先生の漫画原作、壮絶な世界観に圧倒的な映像美で只々恐れ戦くばかりでした。
アーカードという不死の魔物を主人公に据えており、味方サイドに一切の感情移入も出来ない点が本作の妙でしょう。
かといって敵サイドにも少佐やマクスウェルなどぶっ飛んだ役柄しかおらず、狂人達の戦場を眺めることしか出来ないんですが・・・。
そんな諦観の境地にある物語の主題を考えてみると、やはり"化け物を倒すのはいつも人間だ"というところにあるのだと思えます。
最強の主人公として描かれるアーカードが真に望んでいたのは人間に打倒されることであり、どこか人間賛歌のような趣向も感じ取れました。
ただ、少佐であってもアンデルセンであってもウォルターであっても、人間体のままで倒せたかと言われるとまた微妙です。
余りにもアーカードを強くし過ぎました節は否めませんね、大仰に描かれるアーカードの復活はそれはそれで万感胸に迫るといった具合なのですが。
また、大英帝国とヴァチカン市国、ナチスの残党の三角関係も刺激的でよく思い付いたものだと感心します。
特にヴァチカンは反ユダヤ思想の一致からナチスを支持していた史実も踏まえていて、その辺の事情を上手くドラマタイズされた良作だと思えます。
<作画>
テレビ版は単体で見れば悪い訳ではないのですが、原作者の意に沿わなかった唯一点に尽きます。
そもそも最後の大隊が出てきませんし、何者と戦うでもなく終わるのは消化不良というものでしょう。
GONZOで制作された舞台裏で一体何があったのかは今や知る由もありませんが・・・。
とはいえOVA版に於いても、度々と制作会社が変更され発売延期も一度や二度ではないのを見ると、恐らく生半可なものではなかったのでしょうね。
ただまぁ、OVA版は申し分のない仕上がりになっていますので、敢えて水を差すような無粋な真似もしたくないものです。
<声優>
アンデルセン以外はテレビ版を引き継いで、出てこなかったキャラには豪華声優陣が配役されています。
アンデルセンは野沢那智さんから若本規夫さんに変更されています、ヒラコーはテレビ版の放送時に"野沢那智がもったいねえ"ってテレビ版を罵ったのが裏目に出たのかも。
若本版アンデルセンはかなり演出過多気味で、"エ゛ェェイ゛ィメン゛ッッ!"と言う度に吹き出していました。
ともあれ声優はどちらも錚々たる顔ぶれで他を寄せ付けない布陣となっています。
<音楽>
声優以外のスタッフは一新したように見えますが、実は音楽の担当の石井妥師さんはヒラコーのお気に入りらしく、8話のEDでも引き続き起用しています。
それから9話は黒崎真音さんが担当していて、これがまた格好良い楽曲となっていますね。
映像も本作の女性陣達の活躍が端的に纏められていて素晴しい出来です。
また、音楽は本作に於いて非常に重要な項目でありまして、4話の少佐の演説の後に流れるEDの「Das Engellandlied」は"イギリス征討歌"、"国際問題ソング"として波紋を呼びました。
ナチスの残党がビッグベンやタワーブリッジを破壊し尽くす映像は途轍もなくセンセーショナルなんですが、聞く所によればドイツ人以外の海外の反応は悪くなかったとか。
内容が内容だけに強気の姿勢が見受けられて、こちらが不安になることも屡々でした。
<キャラ>
少佐にしてもウォルターにしても真の意図が描かれていないのが逆に趣深くて好きです。
無意識に分かりやすい理屈を求めてしまいがちですが、敵側の心情を全て描き切る必要なんてないんです。
あとは気になる点で言うと、アーカードが少女の姿になることがありましたが、あれは何なんでしょうね。
血を吸った人間の内の一人なのか、若き日のアーカードに女装癖があったのか、気になって夜も眠れません。
男か女かで言えば、イスカリオテ機関のハインケル・ウーフー、どう見ても男性でアニメスタッフも最初は杉田智和さんを起用する予定だったらしいです。
一応女性という事で斎賀みつきさんが起用されてます、逆に性別が分かり難くなってる気がしなくもない。
ヒラコーが公式ガイドブックで"ふたなり"である旨を述べているんですが、いやはや。
その他、語り尽せないほど多くの魅力的で狂気的なキャラクターが登場します。
{netabare}幾度となく劇中の台詞を暗唱した中高時代の黒歴史はサーチアンドデストロイ、サーチアンドデストロイでお願いします。{/netabare}
面白さで捻じ伏せられる凄まじいパワーを持った作品ですね、見終わった後の満足感はまさに天下一です。
見ておくべき作品に分類されるでしょう。