「AURA 〜魔竜院光牙最後の闘い〜(アニメ映画)」

総合得点
64.3
感想・評価
224
棚に入れた
1083
ランキング
3879
★★★★☆ 3.7 (224)
物語
3.7
作画
3.7
声優
3.8
音楽
3.6
キャラ
3.7

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ネタバレ

てけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

普通という盾と葛藤

原作未読。

異世界の住人を名乗り、「普通ではない」がゆえにどんどん立場が悪くなるヒロイン佐藤良子と、
「普通」の高校生佐藤一郎との絡みを描いた作品。


一郎は「普通である」ことで、いじめ等の圧力を受けるのを避けようとします。
名前まで普通。
しかし、環境がそれを許しません。
良子や多くのドリームソルジャー(スクールカーストの底辺)に絡まれてしまいます。
世の常として、「普通ではない」人物と接していると、そのカテゴリに分類され、立場が悪くなります。

一郎にとって、自分を守ることが自分だけの問題ならまだよかったのでしょう。
また、対応する相手がドリームソルジャーだけなら見捨てるという手段も選べました。
しかし、実際は「{netabare}家族を傷つけてはいけない{/netabare}」という、後ろからの圧力がかかっています。
良子については、接触を依頼された上に、好意や保護欲のような感情を抱いてしまいます。
{netabare}一郎にとって憧れでありながら封印した過去であり、自分を重ねているから{/netabare}こそ、嫌悪感と好意の間で揺れ動くことになります。

そうした背景があるため、「自分を守るか、良子を守るか」という問題が、より大きな葛藤として浮き彫りになっています。


葛藤というのは内面を描写した物語づくりの上で欠かせない要素です。
壁を乗り越えるシーンはドラマを生みます。
また、視聴者は意外な結末を求めるもので、第三の解決手段を提示したら大いに盛り上がります。
アニメ内でそうした葛藤と解決をはっきりと描いているため、ドラマチックで面白いです。


ただ、この作品では心の声を描写することがほとんどありません。
「このシーンではどういうことを考えているんだろう」と、意識しながら見る必要があります。

それだけなら簡単ですが、ミスリードが仕込まれているため、設定に気を取られがち。
良子の正体は何なのか。
本当に異世界の人間なのか、ただの中二病患者なのか。
大事なのはそこではないのですが、初見で気にせず見るなんて無理です。
また、ドリームソルジャーの出現が唐突だったり、何か裏がありそうなキャラが多かったり、大げさな映像描写があったりして、なかなか心情だけに集中できません。
……ということで私は2周視聴しました。


83分という短い作品でかなりテンポがいいです。
いじめは陰鬱で生々しいですが、終わり方はきれいで希望があるので尾を引きません。

見やすくて、葛藤が分かりやすく描かれたいい作品だと思います。

投稿 : 2016/12/13
閲覧 : 396
サンキュー:

29

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