hamasan さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
攻殻機動隊じゃなくても良かった
TVアニメ版のセカンドシーズン。
1stの笑い男がサイバーパンク作品のなかでもかなり秀逸な出来栄えだったので、当然2ndシーズンはそれを超える話を期待して見ることになるのだが、一言でいうと「別に攻殻機動隊じゃなくてもいい話だった」というのが全体の感想。
難民にまつわる国家組織の暗躍というシナリオは、いまの世界情勢と密接にリンクしているので放映当初よりも分かりやすくなっていると思う。しかし、前作が電脳化した世界とSF的倫理観を問いかけるサイバーパンクの王道路線とすれば、こちらは「9.11以後の現実世界」を描いているのでどうしても社会派の側面が強くなり、粗が目立つ。
たとえばこうした規模の世界を描く際には既存の作家により論理や世界観の補完作業によってスケールの拡張をすることが時々あるのだが、今作は三島由紀夫をシルベストルという架空の作家に置き換えたことで「製作者が製作者のつくった作家を引用して論理を構築する」という訳の分からない構図になり、結果的に前作のサリンジャーのような世界観を充分に作品に浸透できなかったり、合田と久世という二人の思想をもつキャラクターが目的のわりには遠回りな行動を起こす遠因に見えてしまう。
とくに合田は一見「難しすぎることをやってるのだから彼なりに正しいことをやっているだろう」と思ってしまいがちだが、プロットを整理すれば変化球を投げるためにキャッチャーミットに背を向けてピッチしているレベルの屈折ぶりで、それが彼の言う「プロデュース」ならそうなんだろうけど、製作者もこいつがなにをしているのか本当に理解しているのかと疑ってしまいたくなる。
1stは複雑な世界観を説明するのに難しい言葉を使わざるを得ない箇所もあったように思えるが、2ndではかなり卑近な世界観になっているのにも関わらず「難しい言葉を使うために難しい言葉を使っている」のではと感じてしまうような典拠のあいまいさやイメージのブレや目立った。
{netabare} それにしてもキリスト教の暗喩を強調して桜の花見で終わる最終話は製作者の浮気グセを象徴してるようで良くない。 {/netabare}