幽霊な校舎 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
音のない声。
目の前にかなり困っている人がいて
もし仮に、自分は全く損も得もしない
ほんの些細な行動で、
その相手を助けることができるなら
A.手助けしてみる
B.無視する
どちらが選ばれるだろうか
特に理由なく他人を見下して
その優越感こそが幸せだと言う人にも
実際に会ったことはあるけれど――
この作品ではそれと違い
自分が被害を被らないことがはっきりとわかっているなら
できるだけ良い友人関係の方がいいし
友人が幸せな方がいい
そういう漠然とした温かみが
少しずつ滲みながら伝わってくるように感じた
「あーっ」と声を出すと
音の波が生まれて、広がって
まわりに伝わる
しかし「あ”ー」と奇声を発すれば
違う意味で周囲に波紋が広がるきっかけになる
体が不自由だというのは
程度の差はあっても、
物理的に不利益を被るもの
それに加えて
想像することしかできないけれど
感情の面でも、周囲の反応や視線
自分の中に溜まっていくストレスで
心が摩耗しやすい状況にあると思う
本作のヒロインは、体の中の、耳があまり聞こえなくて
うまく言葉を「声」に出すことができない
・擦り切れていく心に
・気持ちを伝える最もシンプルな手段をほとんど失っている
この女の子の転校は、平穏な水面に一石を投じたみたいに
周囲と自分を巻き込んで、事件になる
数年後、そこでできてしまった枷(かせ)が
再び、主人公やヒロイン、それに周りを縛って、なかなか良いようにはならない
当事者みんなの問題をまるっと解決するのには
少なからず時間が経過してしまっているし
現実からしたら、こんな感じで壊れた人間関係は
ふと思い出すことはあっても、すぐにまた心にしまって
見ないふりを続けるのが常套な気がする
「声」を通じて言葉を交わせても傷がえぐれて
不完全でも「声」で伝えようとするヒロインがいて
目まぐるしくも温かに響く青春の形を
一つ、また一つと動きにして
上手くフィルムができているのだなぁと
とても感動した
終盤で少し展開が強引だと感じる部分もあるかもしれないけれど
(いきなりお婆ちゃんが死んでしまうとか、
ベランダから逆に落ちるとか、
入院してから主人公とヒロインが再会するところとか)
ロマンチックだよねっ!(笑)
主人公の抱えている問題が次々と
剥がれ落ちていくところは、なぜか自分のことのように
”はっ”とするラストだった。