「クロムクロ(TVアニメ動画)」

総合得点
73.3
感想・評価
699
棚に入れた
3397
ランキング
1030
★★★★☆ 3.6 (699)
物語
3.5
作画
3.8
声優
3.6
音楽
3.5
キャラ
3.6

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ネタバレ

どらむろ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

青春成長劇が見所な、防衛ロボット。P.A.WORKSらしい秀作ではありますが…地味でもあり。

青春劇に定評のあるP.A.WORKSの、15周年記念のオリジナルロボットアニメです。全26話。
富山県・黒部ダム周辺を舞台に、戦国時代から蘇った侍の少年と、ヒロインが謎のアーティファクトなロボットで、宇宙からの侵略者と戦っていく。
P.A.WORKSらしく、青春やボーイミーツガールが見所。

丁寧に構成された良作なのは疑いないのですが、古典的なロボットアニメのような熱さは期待薄。
…この作品に何を求めるかで、評価が割れそうです。
終始、低空…いや、中空飛行を続けた地味な秀作。という認識です。

{netabare}『物語』
富山県に謎の遺物(アーティファクト)が出土、その研究の為の国連機関の研究所でロボット兵器の実験も行われていたが、突如、謎の宇宙人の侵略を受ける…
という世界観で、研究所所長(女性)の娘の由希奈(ゆきな。17歳高校生)が、450年の眠りから覚めた侍少年・剣之介(けんのすけ。17歳)に「姫」と間違えられたり、侵略宇宙人は剣之介の主君(雪姫)の仇らしく、なりゆきでアーティファクトのロボットで一緒に戦ったり(ゼーガペインみたいな複座型)。

剣之介が敵を「鬼」と呼んだり、主役機にしてタイトルでもある「クロムクロ」、敵の操縦者が「纏い手」などなど…
なんとなく「ガサラキ」を連想させる。(単語的に「ムクロ」「クガイ」と音が近いので)
…由希奈ちゃんが雪姫とそっくりだったり、クロムクロの認証コード適合したのは、多分前世とか?で雪姫と因縁があるんだろうな…
(序盤視聴時点の予感)
いや真っ先に「犬夜叉」のパターン連想すべき…でも不思議と視聴時、犬夜叉は頭に無かったです。
ロボットファン的に「ガサラキ」の先入観が強かったためか…

侵略宇宙人と交戦しつつも、全般的な雰囲気は日常系や学園ドラマっぽいです。
剣之介は戦国時代の人間なので、現代(近未来?)の文明に驚きまくるリアクションがコメディーの主力でした。
文明ギャップコメディーが秀逸、この過程で由希奈と剣之介の関係がコミカルに、ゆっくりじっくりと描かれる感じ。
ここら辺は「日常を通しての少年少女の成長」を丁寧に描いて、他のキャラたちとの交流も良かった。

一方のバトルは、序盤と中盤と終盤に大きな山場がある他は、盛り上がりに乏しいです。
数少ない見せ場のバトルは、スピード感ある殺陣が見事だったり、剣之介と由希奈の掛け合いなど、かなり良かった。
良かったけれど…全26話に占める割合が少なすぎる。
日常がバトルの機運高めるのではなく、「たまのバトルが、日常の引き立て役」な構成でした。
…それは終盤を見れば分かる。本作のメインテーマはあくまでも少年少女の青春と葛藤、侵略宇宙人による終末感はそのための舞台装置なのだと。
ただし、モブが結構犠牲になるサツバツさもあり。
程良い緊迫感と見るか、日常系と噛み合わないと見るか…

意味深な敵の幹部達(…と思ったら先遣部隊に過ぎず)が枢石(クルルイシ)を執拗に狙う意味とは?彼らの目的とは?
…と中盤少し話が動いたかと思いきや、ザル警備は基本とばかりに潜入→小競り合いを繰り返す。
生身の斬り合いで見せ場はあるも、ロボットアニメ的には殆ど話が動かない。
そして話の軸はあくまでも「侍少年の現代ライフと青春」なのだった…。

青春劇は丁寧ではあるんですが、ドラマの本筋(だと私みたいなタイプが期待している)が一向に進まない感じ、(あれ?2クールで既に後半だぞ?このペースで大丈夫か?)

終盤に差し掛かり、由希奈の過去や、由希奈そっくりの敵パイロック・ムエッタの運命、ソフィーの葛藤など、各キャラのドラマが丁寧に進行しつつ、ジリジリと最終決戦の雰囲気…の中でも、あくまでも日常の大切さを重視する。
剣之介とムエッタは、犬夜叉と桔梗みたい…かごめポジの由希奈ちゃんの恋心が揺さぶられ…たような?そうでもないような。
ここら辺のラブコメは繊細ではありますが…もう少し盛り上げて欲しかった。

終盤はかなり良かったです。
しっかりとボーイミーツガールしていたし、それは丁寧な積み重ねによる関係性が効いている。
本作は終始、剣之介のアイディンティティーを求める成長ドラマ、最後に至るまでしっかり結論を出したのは見事でした。
ラストは…真の戦いはこれからだ!いや、そこが観たかったんですよ!
うーん…4クール番組なら、丁度半ばで、宇宙編移行する盛り上がり時なんでしょうけれど。
ラストの由希奈ちゃんの未来は「キスダム」のノアを彷彿としました(時間が掛かっても、きっとあなたに追いつくから!的な)
…まあ、悪くはない纏めでした。


総じて丁寧なボーイミーツガール、由希奈と剣之介の文明ギャップコメディー…からの成長など、日常系部分が地味ながら好感が持てる作品でした。
SF設定もしっかりしている(毎話予告で由希奈ちゃんが用語解説したり)、話全般に矛盾が少ない等、良く出来ている。

ただ話が終盤まで富山から一歩も動かず、大半を日常系で、その日常系も由希奈と剣之介以外に見所少ない。(ソフィーお嬢様くらいか。カルロスとか正直別に…)
友人たちの成長ドラマな面もありましたが、ロボットアニメではないP.A.WORKSの本格青春物程の見せ場はないので…
ラブコメもゆっくりと育っていった繊細さは良いけれど、地味。
敵との関係もムエッタ関連の内ゲバ以外は特に見せ場なし。
…1話1話も、通して観ても、面白い事は確かなんです。完成度は高い。
でも。終始予定調和で…ワクワク感はあまり無かった。
4点か迷います。


『作画』
流石はP.A.WORKS、キャラデザ表情が可愛いです。
由希奈ちゃんは抜きん出て美少女というわけではないけれど、喜怒哀楽の表情変化が堪らない。
注目はマッサージ回…由希奈ちゃんえろい♪
CG活用のロボットバトルも素晴らしい。このレベルで話も盛り上がっていれば、名作級でした。
またP.A伝統の富山の御当地描写も見所、黒部ダムに行ってみたくなります。

『声優』
M・A・Oさんはどんな役でも上手いですねぇ。
ギルティクラウンなど多数のモブを演じてきた阿座上洋平さん初主演、青馬剣之介時貞(おうま けんのすけ ときさだ)の好演お見事。
麻倉ももさんの小春ちゃんも非常にかわいいです。シャーロットの歩未ちゃん彷彿とする。

『音楽』
主題歌は悪くはないものの、あまり印象に無いです。
ロボッアニメはもっと分かり易い歌が好きだなぁ…。


『キャラ』
戦国時代から現代に蘇った侍ボーイ・剣之介が非常に良キャラでした。
次第に現代に順応していく、成績も由希奈より良いなど、地頭が良いんでしょう。(雨宿マチちゃんよりハードモードなのに、ちゃんと順応するとは…)
侍らしい誇りと、現代で得た由希奈や仲間達との絆で着実に成長。
主人公として文句なしにかっこいいです。

白羽由希奈ちゃんは、非日常的な状況でも最後まで普通の女の子らしさを保った強いヒロインでした。
等身大の普通の女子高生らしさ、素直さが可愛い。
ふたりとも他作品には中々いないタイプ。
ゼーガペインのカミナギばりにサポートする戦闘良かった…序盤の調子をコンスタントに見たかった。

敵側のヒロイン・ムエッタさんも可愛かった。お堅い軍人な分、デレ時の萌えは大きい。

他には、14歳の天才フランス人美少女・ソフィーお嬢様が可愛くって華がある。
リアルサムライの剣之介に逆に武士道を諭す…つよい。
彼女もまた戦いと剣之介との関係で揺れ動き成長していく。
…終盤の真相に関わるドラマでは、由希奈よりもメインを張っていた。

妹の小春ちゃんが可愛い。「ござるー」Charlotteの乙坂歩未ちゃんに匹敵する可愛さですな。(声的にも)

由希奈母がいい親ばかででステキでした。母親としては「Gのレコンギスタ」の運行長官の上位互換。
研究所指揮官のジェームズ少佐、剣之介の精神面の師となった叔父さんなど、大人に魅力があるのは良作の証。
由希奈の先生が終盤に来て凄く良い教えを授けてくれる…ナイス。
アメリカ軍人のボーデン大尉も面倒見が良くて頼れる。口は悪いけれどw
ソフィお嬢様に忠誠を誓うセバスチャンは最後までかっこいい。

由希奈と剣之介の日常方面の友人たちも個性はあるんですが、ドラマ的には地味。
ネット配信小僧は正直不愉快でした。
まさかの人物との関係は、本作最大の驚きかも。(ここだけはネタバレしてはいけない!)


本作のネックは動画小僧ではなく、敵の存在感が地味すぎる点。
ここがいまいち盛り上がりに欠けた最大の要因だと思う。
ムエッタと百合百合しい…と思いきや…な女がかろうじて記憶にある位。
主要キャラの魅力は文句なしながら、ロボットアニメとしては看過できぬ欠点。{/netabare}

投稿 : 2016/11/25
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サンキュー:

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