「秒速5センチメートル(アニメ映画)」

総合得点
87.0
感想・評価
3993
棚に入れた
18469
ランキング
174
★★★★☆ 3.9 (3993)
物語
3.9
作画
4.3
声優
3.5
音楽
4.1
キャラ
3.6

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みかみ(みみかき) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1
物語 : 2.5 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 2.5 状態:観終わった

ちょっとキツかった…

 大変恐縮なのですが、全新海作品のなかでも一番見ていてキツかったという印象が残りました……。
 基本的には、主体性のうすいラノベ的な主人公の視点で語られるわけですが、彼の淡い思い出の美化プロセスの物語として延々と続くわけで、この思い出の美化に対してツッコミというか、何かしらの批評的な問いかけみたいなものが与えられるのかといえば、ほとんど与えられない。
 これは、なんていうか、こういう視点を美しい物語として見えてしまう人にとってはとても美しい物語として映るのでしょうが、「キツイなぁ」と思ってしまった人間にとっては、ただただ、ピュアな子のピュアな思い出の話をツッコミ入れられない状況で聞かされているような話になるわけです。グイグイとくるナルシストではなくて、消極的なナルシストの話を聞く話だと思います。
 ただ、まあ、新海作品というのはようするにこういうものなのか、という合点が一番いったのも、この作品で、こういう、都会ではないところで、自分を外側からエイヤッと相対化してしまうような視点のうすいところで、自己形成をしていく話というのが、ある意味で美しい強度をたもったような装いで見せてしまえるというのが新海作品のあり方なんだな、と。

 まあ、でもこういった形で外部からの相対化を断って特殊な一貫性をもった話が美しく思えるというのは、別に新海作品だけのはないではなく、素朴な政治的プロバガンダみたいな話とかもけっこう似たような構造で出来上がっていたりするので、視点を相対化してくるような外部が薄いというのはそれはそれで作品の強度の設計としては結構なことなのだと思います。

 *

 このあとの新海作品ということでみると、この作品の、「自己を相対化するような他者」の不在感に比べると、『君の名は』はエンタメというだけでなく、やはりかなり、先に進んでいるように思えてまいますね。
 あちらは、美化された情念みたいなのはちょっと薄めになってしまいますけれども、まあ、他者の視点に常にさらされ続けるような構造の話ですからね。少なくとも当初は。中盤から先、そこがまた薄くなってしまうけども…。

 *

 あと、風景の描写という点に関して言えば、「ラッセン」的とディスられることがけっこうあるようですが、まあ、風景の色使いはそうっちゃそうなんだけど、風景の中心にいるのがイルカとか馬ではないというだけで、だいぶアクが弱くなって個人的には比較的よい印象で見られました。
 空とか、海の風景だけだったら、思ったよりも、ラッセンラッセンしないですね。

投稿 : 2016/11/20
閲覧 : 294
サンキュー:

7

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