セメント さんの感想・評価
4.2
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 5.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
どこに居たって、人は繋がっているのよ
"serial experiments"とは"連続した実験"を意味していて、アニメの他にゲームも出ていて、二つのメディアを通して描かれる一つの作品ということなのでしょう。
ゲームは想像し難いくらいの鬱ゲーで、操作性からして精神を蝕んでくるとか、バッドエンドしか用意されてないとか、色々言われてますね。
プレミアが付いてて高くて手が出せないですが、一回はやってみたいものです。
<物語>
難解であり、さらに明確な解答もないという、ドツボのようなアニメです。
ただし、中学生くらいの女の子に哲学的な台詞を言わせて奥の深い話だと錯覚させている、と言ってしまえばそれだけの気もします。
色々な解釈がネット上に溢れていて、なるほどと思うこともあるのですが、その辺は割愛して。
本作が放送してた1998年はコンピューター技術の成長期にあって、スタッフにもPCマニアが多かったと言われています。
ということで、劇中には時代の先端を行く数多くのアイテムが登場しており、これらは2016年現在と比較して、どのくらい実現されているかを考えてみたいと思います。
プシューケプロセッサー・・・ナビの性能を飛躍的に向上させるサブプロセッサーで、現在でいえばOSの処理効率であればマルチコア、ネットの通信効率であればONUやLTEモデムチップが近いですかね、この辺は普及していますね。
第7世代目のプロトコル・・・人の脳に介入する次世代プロトコルのことで、恐らくIPやTCPといった通信プロトコルが第1世代という事になるんでしょうね、現在だと自動運転システムや自動農作システムといったInternet of Thingsが浸透し始めていますが、ネットと人を繋ぐのは当分先ですね。
アクセラ・・・脳を活性化させる電子ドラッグで、スマートドラッグなんかがこれにあたるのかな。
この他、色々な技術が出てきますが、人の脳に干渉する系は倫理にも触れて難しいですかね、ましてやネットワークに人一人を情報として転移させる(作中で言うリアルワールドとワイアールを生きる)ようなことは、実用的とは言い難いですね。
ただ、これだけ種々の構想を詰め込んであるというのは恐るべきことで、当時のスタッフの慧眼が伺えます。
<作画>
とにかく表現の幅が広く、創意工夫してアニメを作っているなという印象です。
作画も一つ一つの描写が丁寧で、グロテスクなシーンもありますが、画面の隅々までしゃぶり尽くす感覚で見てました。
安倍吉俊さんの原案を上手く表現出来ていたと思います。
<声優>
ちなみに玲音役でデビューした清水香里さんは当時中学生。
初仕事でこんな毒電波を食らわされたら声優人生に悪影響が出そうですが、現在も前線を張っていますね。
<音楽>
OPの「DUVET」は、アニメを見た人は少ないが曲は聞いたことがある、ってタイプですよね。
歌ってるbôaはイギリスのロックバンドで、アニソンには意外に珍しい完全なる洋楽です。
映像も、ある意味このアニメが濃縮されているような塩梅です、止まった時間の中で動き出す玲音がクールですよね。
玲音が歌詞に合わせて口を動かしているように見えるのは、実は"レイン"とこちらに呟き掛けているらしいです。
この辺も玲音の訴えみたいなものが伝わってきて、とにかく考えを巡らせると切りのない作品です。
<キャラ>
どれだけ厭らしい描写が成されても、玲音が可愛く見えてくるのが不思議です。
そして意外にも?玲音は髪留めが罰印のバッテン党です、ちょっと御洒落に決めているところがまたなんとも。
ありすちゃんが大好きなところも素敵です、最終話のやり取りは感動しました。
人間の記憶容量って、1.25TB(テラバイト)って言われてますよね。
私の使ってるHDが1TBですので、そう考えると脳もハード化出来るのかなと思ってしまいます。
いつかは本作の世界のような未来が来るのかもしれませんね。