セメント さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 2.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
悪いな、また付き合って貰うぜ
黒澤明監督の「用心棒」の現代版といったところですね。
話の大筋は踏襲していて、雰囲気を感じられると思います。
<物語>
本作の際立っている点は、丁寧に練られた構成力にあると思ってます。
序盤は何しろ淡々と鬼無宿での日々を過ごしていくだけの気がして結構退屈だったんですが、「用心棒」における卯之助の役どころである鱗が登場する13話から、物語は一気に加速し始めます。
怒涛の展開で迎えた最終回、十五年前の事件の真相が語られ、事件に関わったそれぞれの人間がそれぞれの方法でケリをつけます。
丈二が事件の真相を追って鬼無宿に来ていなかったら、こんな結末を迎えることはなかっただろうことを思うと、後に残ったものは遣り切れない虚しさだけ、という何とも哀愁を誘う顛末でした。
最終話まで見終わった後に思い返してみると、退屈に感じていた序盤も伏線が積み上げられてたなと感服するところが多いです。
黒幕には意外な人物が設定されていて、推理物としても普通に楽しめました。
<作画>
都留稔幸さんが絵コンテ・演出、鈴木博文さんが作監を担当している13話と25話はそれはそれは見事なものです。
それぞれ鱗の初登場回と最終回で、漂う緊張感にはただただ息を飲みました。
「ネオランガ」と並ぶ、都留さんと鈴木さんのゴールデンコンビの代表作的な位置付けですよね。
武本康弘さんが絵コンテ、ヤマカンが演出を担当した田野倉炎上回の22話もなかなかの色味でした。
<声優>
丈二を平田広明さんが演じています、ならず者の雰囲気が滲み出ていました。
銀鱗を演じた宮本充さんの鬼気迫る演技には痺れましたね、宮本さんには珍しい狂犬キャラで、元々宮本さんの声が好きな私にとって耳が幸せになれる作品です。
早苗さん役の篠原恵美さんも、色気がむんむんと香う未亡人感が物凄かったですね。
<音楽>
主題歌はどちらもエスカーゴが担当しています。
OPの「東京」はそれ単体では良い曲なんですけど、歌詞が作品に合ってないようにも思えました。
まず東京に来てないですし、寧ろ東京から出てってますし。
<キャラ>
アライグマという真のヒロイン、まさか冒頭で叩きのめした破落戸がこんなことになろうとは。
守ってオーラ出してて愛おして堪らない存在ですよね、最終話の電車に乗る前の会話なんて涙を啜ります。
基本的に銀鮫にしても田野倉にしても悪者なんですけど、どこか憎めないんですよね。
パチスロになってますよね、それ関連で偶に話題に挙がるくらいで、アニメとしてはマイナーなタイトルだと思います。
私は"おっさんが主人公"ってだけで視聴意欲が沸くタイプなので、観終わった後の満足度も含めて、大好きな作品です。