りつは さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
見ごたえあり:シナリオ作画音楽声優安定、ただの学園xリープ系ではなかった
前知識なくあにこれのうわさで鑑賞した。本作は見ごたえありとてもおすすめ。
設定はあらすじ参照。厳密に言えばリープではない。
本作はなんといってもとにかく登場人物一人一人のキャラの描写に長けており、それぞれの成長がとてもみもの。個人的には同じ琴線にふれた学園リープモノの「オレンジ」よりもシナリオとキャラの設定が綿密に編みこまれている点で楽しめた。
主人公&ヒロインのみならず、周囲のともに青春する仲間たちそれぞれに詳細なストーリー設定があり、各話でうまく取り上げられている。
皆、過去の体験に基づいた心理的傾向があり、行動パターンが決まっていくわけだが、物語が進行するにつれ、それぞれが自身の過去や友人の過去に(まさに高校生活らしく)真剣に向き合い、葛藤しながら自己や他者の行動を変容させていく。
経験や困難から目を背けず、くじけそうなら仲間とともにそれを解決していく姿、友人を見捨てない姿勢、間違いや失敗を許し、互いを尊重しようと努力し、支え合い高め合っていこうともがく姿勢、そうすることでみなが精神的に成長し人間として深みを増していく姿には本当に心を打たれる。
声優陣の演技も迫力があり、特に戸松っちゃん演じるレナの技量は物語のあるキーになっており、とても厚みと影響力がある。彼女の本作での演技ははっきり言ってテレビドラマの見てくれだけの俳優女優より心に響くと感じるのは偏見がすぎるか。
シナリオは、めだった齟齬や違和感なくすすむ。ファンタジーものにしばしば見られる無理設定や短絡的なご都合主義に視聴者が振り回されることなくロジカルにできており、またやたらと複雑な背景や専門用語に翻弄されるよくわからない感や置いてきぼり感なく受け入れられた。
また、作画崩壊もほとんど見られず、キャラの心理描写に合わせた表情の微妙な変化のアニメーションは綺麗だった。
音楽も楽しめる。各話のエンデイングテーマは奥田民生・TMR・パフィー・ブラピなど90~00年代の流行り曲を毎回異なる形で利用。各話のテーマと関連させて、実に効果的に利用されている。特にこれらの曲の流行った頃にMDで聞きながら通学してた世代は毎回ワクワクもしくはしんみりすること間違いない!
よく挟まるギャグ的な展開はさらっと面白く、シリアスばかりに偏ることないエッセンスとしてうまくシナリオの緊張感を解きほぐす。ぼけツッコミシーンもくどすぎると話が台無しだが本作はいやみなく機能していると感じた。
考えさせられたこともおおい。
現実社会(学生含む)で起こりうる諦念や悲観的な妥協や他者への拒絶や過剰な自己弁護や自己受容の難しさを、何か言い訳してわざと無視したりやりすごそうとしていないだろうか。
事実の歪曲でしか自分を肯定できない寂しさ、それに気づいているがどうしようもできず演技を続ける自分を、1年間、高3の生活をやり直せるとしたら、私たちはどうリライフしていくだろうか。本作からはそんな問いも引き出される。
話は完結しておらず、伏線もまとまりは付いているがこれから大いに展開できる内容。
二期が出ることに実に期待している。