Derp さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
一度観たら、ストーリーを把握した上でもう一度
ポーター・ロビンソンとMadeonのコラボ曲「Shelter」のミュージックビデオがA-1ピクチャーズ制作の全編アニメーションになっています。
ポーターが日本のゲームやアニメが好きということでこのMVが作られるきっかけになったようです。
ストーリーの原案もポーター自身。
たった6分のミュージックビデオの中で語られているとは思えないほどの情報量と観るものを満足させるストーリー。
ミュージックビデオは基本的には「曲のための映像」なのですが、このアニメーションMVはそれを全く感じさせないくらい本気なのが素晴らしい。
17歳の少女、凛は仮想世界の中で一人で暮らしており、タブレットを使って仮想世界を作り変えたり制御することが可能です。
何でもできて、非常に美しく平和な世界で暮らしていますが、長年孤独な生活を続けた彼女はたった一人の退屈な世界について疑問を抱き始め、外の世界を知りたいと思うようになります。
仮想世界のシミュレーターが彼女の意志に呼応する形で、これまで封じ込めていた彼女の過去の出来事を見せ、凛は、父との生活や地球に月程度の大きさの惑星が衝突しようとしているのを目にします。
科学者だった凛の父が、生命維持装置とVRシミュレーターが搭載された1人乗りの宇宙船を開発し、惑星の衝突前に彼女を装置に繋げて地球を脱出させていた事を凛は知り、なぜ今まで誰からもメールが来なかったのか、自分以外の人間がいないのか、そして自分の置かれた状況を理解します。
この物語は暖かくもあり、非常に悲しくもあります。
「ありがとう」という台詞があるものの、彼女が本当に幸福なのか否か、客観的には結論が出しづらい。
生命維持装置に繋がれた姿はとても残酷ですし、現実を知ってしまった彼女は、例え父親の愛情を感じることができたとしても、辛いものであるのは間違いありません。
その二面性が本作の良い部分だと思います。
ShelterはVRの扱い方が上手いですね。VRシミュレーターが世界を好きに作り変えられるということを利用して、凛の昔の生活を再構築して過去の出来事も再現する。
そしてこの楽曲、ポーター・ロビンソンとマデオンのコラボで生まれた「Shelter」は何より素晴らしい。
エレクトロポップらしい近未来感がありつつも、非常にエモーショナルです。
それがまたストーリーを引き立てています。
もしこれが30分や1時間くらいの作品だとまた違った印象になるのだと思いますが、6分のミュージックビデオだからこそ得られるものも大きいような気がしてなりません。
生命維持装置やシミュレーター、あるいは宇宙船そのものの維持をするエネルギーがいずれ枯渇するんじゃないかと思うのですが、そう考えると余計に悲しくなってきます。
いずれにせよ、曲と共に素晴らしい作品でした。
ポーター・ロビンソンの日本のポップカルチャーへの愛も感じられます。