jujube さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
実質は差別問題に切り込んだ大人向け作品
まずヒロインうさぎが夢の大都会ズートピアに初上陸した描写がカラフルで活気ある街を表現していて一気に世界観に惹き込まれた。
各サイズ違いの動物達が一同に快適に乗れる、一風変わった素敵な長距離列車へと飛び乗り、ヒロインは希望の街へ。
警察官になって初めての勤務地へ赴く、ヒロインの期待と高揚感を乗せて、軽快な主題歌をバックに次々と四季折々の街を追い越して行く様は疾走感がとても気持ちいい。
その辺の描写と音楽の組み合わせと使い方はさすがディズニー、お手の物だね!
あー制作費に予算があるっていいなあ。この無尽蔵な街のキャラクター達も一つ一つモデリングして個別に動かせるんだもんなぁ。
しかも絶妙に人間ぽい動きだけに限らず、個別の動物らしい動きや表現を加えつつ出来るって脱帽!
そしてこの作品が世間的にも高評価の訳はもちろんストーリー!
OK、記者会見のところで終わってたら、それはいつもの子供向けディズニーの域を出なかった。悪いけど、アナ雪はここまでのレベルだ。
ズートピアが他より突出できたのはまさにここからが肝心、
ヒロインうさぎの初金星☆お手柄記者会見で、ちょっと舞い上がって言葉選びを間違ってしまったが故に、マスコミの上げ足取りに引っかかり、黒幕の思惑通り誘導されたのか肉食動物と草食動物との街を二分する種族対立へと街を一変させてしまうことに。それも少数の肉食動物が逆差別される方向へ。
描かれてないけど、黒幕が記者買収を裏でしていたとしてもおかしくないし、現実はもっと汚いやり口もある。
その中でもいたずらに人民の恐怖心を煽るマスコミが、あたかも正論かのように世論を誘導する様は皮肉過ぎて嫌らしい。
そもそも一見うまく行っていたグローバリズム世界=ズートピアも、体格で圧倒的に勝てる肉食動物が支配しているかのようで、草食動物それも体格の小さな者は侮られ、下に見られてきたという背景がある。そりゃ彼らにも鬱屈が溜まるのも無理からぬことだ。
さらにキツネは肉食動物だが、種族的なイメージから偏見の常態から逃れられずにいる。常に異種族間の共存繁栄を謳うこの世界にも実際は偏見は無くせてない、理想郷ではさらさらない。まさにアメリカに横たわる現実の投影である。
※ネズミのマフィアボスの事はスピンオフで半生を知りたいものだ。
せっかくなりゆきでも抜群のコンビネーションで事件解決によってお互い分かりあえたかに思えたキツネの相棒にも記者会見のことで誤解され、決定的に失敗をして落ち込むうさぎ。
人生に挫折して警官も辞め、田舎の実家へ失意のトンボ帰り。
どん底の中、事件解決の糸口を見つけてからの終幕まではまさにフルスロットル。
ストーリー展開は少々都合が良すぎるくらいだが、序盤の伏線と各キャラが過不足なくまとめられてて、本当に無駄が無い。まさに西欧的合理主義。
惜しむらくは物語の余白が余り無いことくらいか。
そうは言っても、全体的にテンポが良すぎてこれなら子供でも飽きずに鑑賞できるだろう。
キャラ立ちとしては、
うさぎとキツネの化かし合いならぬ掛け合いが絶妙で良い関係性だ。異種族間とはいえここまでの信頼関係が出来たなら2人が恋に落ちても良いのではないかと思うが、作中では相棒止まり。そこはアメリカ人が本能的に嫌なのだろうか。実際には白人、黒人、アジアンと人種で固まって過ごすみたいに。
子供にも異種族間恋愛を説明する時のハードルが高いかもね。キャラ付けのために擬人化ならぬ動物化してるんだし、種族が違うって色々とどうなるの?と。
次にディズニーが今作を超えようと思うなら、真剣に異種族間恋愛を取り扱ってみてはどうだろうか。
まあ今作はただ動物化するだけじゃなく、その動物だからこそ、それぞれ役割に意味があるところが良かった。
ディズニーは今までただ可愛い動物が画面に居れば良いていう節があったから、人間がやってることを単に動物化させて余計子供騙しに拍車かけてたけど。
あと署長の掌返しが熱いw
ヒロインうさぎには、謝罪の言葉くらい欲しかったかな。
ネズミは上記に書いた通り、気になるキャラだけど、
冒頭に居た赤ちゃん真似の上手いキツネ?は何なんだw気持ち悪いぞ。
世間で偏見に晒されてきた相棒のキツネは、幼い頃に傷つけらても消せなかった正義感と、根の優しさで、うさぎの後押しもあって警官になったのが本当に嬉しそうで良かった!これで名実共に相棒に‼︎
後はなんだかんだまた矛盾を抱えながらも大団円を迎えてフィーバーする街の様子がエンドロールに。
あーアメリカだわー。ラスベガスかニューヨークかって雰囲気かよ、ノリノリだね。
また主題歌がエンディングBGMだけど、本当に合うね。
以上でスッキリENDで満足感の高い作品でした。