オキシドール大魔神 さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
コナン、赤井、安室の共闘が熱い
ついに劇場版20作目となる本作。なかなか面白いのは確かだが、ちょっと切ない、説明不足な個所がある、掘り下げが足りない、が若干のマイナスポイント。
説明不足なのは、キュラソーの特殊能力について。オセロの配置など、作中でそれっぽい描写はいくつかあるし、調べればそれっぽい説明はわんさか出てくるが、作中で説明してほしかったところ。
キュラソーの裏切りも、いまいち説得力がない。前半で少年探偵団と心を通わす描写があるが、あれだけじゃあさすがに足りないなあと感じる。元々黒の組織にそれほどの忠誠心がなかったのかもしれないが、それらしい描写はベルモットに殺されそうになったシーンと、『有用そうな道具として』ラムが救ったシーンだけ。せっかくのキーパーソンなんだから、出自とか過去とか、もっと掘り下げてくれたら、ラストシーンなどもっと際立ったのにと思う。
そんでもって、掘り下げが足りないとかなんだかんだ言いつつ、キュラソーの死が切ない。もうちょっと悪性が強い人間だったら、具体的に言えばそれこそアイリッシュぐらいの人間だったら、まあ黒の組織でいろいろやってきたんだろうし因果応報だろうと思えるが、何せ作中でのキュラソーはノックリストの盗み以外はただのいいお姉さんどころか人名救出までやってのけるから、好感度が上がっちゃって困りもの。極めつけに死に方が悲惨なのも悲しいところ。
マイナスポイントばかり列挙してきたが、先述の通り、それらは若干程度。ミステリー要素は少ないが、本作のキャッチコピーはバトルロイヤルサスペンスであり、それは達成されている。作画もかなり良く、序盤のカーチェイス、キュラソーのトンデモアクション、赤井vs安室、ごり押ししてくる黒の組織に対して、コナン、赤井、安室の共闘は熱かった。安室の活躍シーンが多いので、彼が好きな人にはおすすめ。三人の共闘でヘリは何とか撃退するも、観覧車は落とされ水族館が危機に陥り……という一難去ってまた一難のお約束展開もしっかりとある。
ゲスト声優はヘタではなかったが上手でもない。
本作は、蘭がさほど活躍しない、ピンチにならない、ベストエンドではなくビターエンドなど、これまでの劇場版と比べると少々異質な点が散見する。ただ、蘭が活躍しないなどは、蘭がコナン作中に限らず全フィクションの女キャラでも上位に来るほど好きな自分でも別に不満ではない。自分くらいになると、助かると分かっていても蘭が苦しんだり泣いたりするシーンは見たくないからだ。むしろ、そういう意味では今作はストレスが若干少なかった。それに、その分活躍するキャラは存分に活躍しており、ヘタにいろんなキャラに活躍させようとして場面が飛び飛びになって見辛い、活躍の度合いも中途半端になるなどの弊害(探偵達の鎮魂歌がその典型例)がなく、とても見やすい構成だった。
だが、ビターエンドなのは、先述しているが、やはり少々不満である。もっとキュラソーを悪く描くとか、本堂弟のように死なせないキャラ退場とか、いい塩梅でどうにかできたのではないか。『いろんな人の命を守る形で死ぬ』というのは、元悪役のキャラ退場としては王道的で感動的かもしれないが、やはり自分はしっくりこない。
本作に限った話ではないが、ちょっと予告詐欺気味かなと感じる。キュラソーのオッドアイなんて、彼女をラムだと思わせるミスリード以上の意味が感じられないのがそう思う理由だ。まあ普通に考えれば劇場版でラムみたいな重要なキャラが出るわけないとは判断できるが、そういう理屈の問題ではない。
ラストの蘭のセリフがちょっとした救い。