どらむろ さんの感想・評価
4.3
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
全般的な稚拙さで名作にはなれなかった、娯楽作品としては一品級なサンライズロボット。
2013年にサンライズが超豪華布陣で放った、オリジナルロボットアニメ全24話です。
ガンダムシードや無限のリヴァイアス、コードギアス等の過去作の作風をごった煮にしつつ…予想の斜め下(上と言いたいところだが…)な展開の連続で飽きさせないです。
良作か駄作かと問われれば駄作なんですが…クオリティーの高さと「ライブ感」(その時々で飽きさせない)でゴリ押ししてくる。
面白い。けれど「深み」は乏しい。「真面目な良作」を期待していると失望するかも?
酷評多いのは仕方が無い面が多々ありますが…(終盤以外は)かなり面白いです。
…「終わり良ければ全て良し」の逆なのが評価落ちる。
16話「マリエ解放」に限れば名作なのに…。
(レビューは2シーズンも含めます)
{netabare}『物語』
平和だった宇宙の居住地(本作ではダイソンスフィアという。ガンダムのスペースコロニー的な)の学生たちが、突如戦争に巻き込まれ、謎のロボットで戦う。
そこに、強力な異能や超兵器を担保に大国相手に独立して見せるコードギアスやギルティクラウンっぽい展開(に加えて無限のリヴァイアスを鬱控えめにした感じ)、先を読ませない予想外の連続、謎を小出しにしてくる…。
基本設定自体はサンライズロボットの王道お約束を(ゴッタ煮で)踏襲しつつ、フタを開けて見れば、色んな意味で予想を(斜め下に)超えてくる…毎話かなり面白いです。
…設定がありがちというのは本作の評価を下げない。
王道な各要素を上手く合わせて分かり易い作風で良いのでは。
ダブル主人公が機能している。
切り札的な異能持ちのハルトがヘタレ、知力武力超人的なエルエルフが無能力なのが面白い。
全編通して1人旅団ことエルエルフの活躍が目立ちますが、後半はハルトの成長もあり、バランス良いです。
2つの大国相手に学園祭のノリで独立戦争やっちゃう幼稚な雰囲気自体も、本作特有の面白さに繋がってましたし…
次々と襲い来る敵のメカ(色んなギミックで超兵器に対抗してくる所は、伝説巨神イデオンのバッフクランっぽい)とヴァルヴレイヴのバトルはかなり見応えあるし、次々と搭乗者増えるのも熱い。
粗いですけど。ノリが熱いです。
群像劇としても、無限のリヴァイアスをちょっぴり彷彿としつつ、あまり鬱にならず(ただし犠牲はこちらの方が大きい)にその場のノリでイケイケな雰囲気好き。
ヘタレ生徒会長の連坊小路サトミの成長は、無限のリヴァイアスのルクスン・北条を想起させる。
ヒロインたちの立ち回りが、常に予想の斜め下を行くのも本作の特徴、ここが賛否割れてる感じ。
「強大な力と、その代償による悲劇」設定が非常にドラマチック。
特に16話「マリエ解放」は涙なくしては観れないです…。
その悲劇性は圧巻!ロボットアニメ史上でも「ラーゼフォン」19話「ブルーフレンド」に匹敵する。
アイディンティティーの危機、それでも大切な友達への想いを胸に、文字通り魂削って戦う…
友達との大切な思い出がパリーン!と壊れていくなんちゅう残酷なシーンだ…
あぁ^~マリエちゃん切ないんじゃ~~~
この切なさ、「ムシウタ」のレイディー・バードの最期も彷彿。「記憶」って、生きてる証そのものですから…。
16話は初見よりも、2回目3回目と観直す度に泣けてきた。
…余談ですが。「M3~ソノ黒キ鋼~」弓月マァムの終盤の活躍を見た際、マリエちゃんの悪夢が脳裏をよぎった。
(福圓美里さん)
…16話付近まではかなり良かったのですが、以降ラストに至るまで迷走した挙句、あまりスッキリしない作品になってしまった。
エルエルフとリーゼロッテ姫の恋も途中まではドラマチックでしたが、最終的には物足りない。
またマリエの悲劇がその後のドラマにあまり活かされないのも勿体ない。
ここら辺は脚本が「やりたいシチュエーションありき、キャラクターを大切に扱っていない」と感じる。
エルエルフの活躍や姫への一途な想い、マリエの悲劇など、個別回での盛り上がりが凄い一方で、作品全体としては纏めきれなかった感。
※ちなみに未来でサキがハルトとエルエルフ似のショタに昔語りをするシーン、元ネタは「ドラゴンクエスト勇者アベル伝説32話」と思われ。
「這いよれ!ニャル子さん」2期3話に続き、アベル伝説ネタですな。(大河内さんが意図してたのかは不明)
…終始先を読ませない。良い意味でも、悪い意味でも。
本作が不評な一因と思われる、全般に漂う稚拙さ…
「汚い大人に、無垢な子どもが異能チートで立ち向かう」構図自体は王道で良いんですが、センスが無い。
セリフ回しは分かり易くて悪くは無いんですが…
また「ソーシャルメディア世代に対する、老人世代から見た皮肉」も一面の理は感じますが、似たテーマの「ガッチャマンクラウズ」に比べてやはりセンスが無い。
老人(脚本家、主に大河内一楼さん?)が、今時の若者をどう見ているかが透けて見える。多分大河内さん、ソーシャルメディア分かって無さそう。
…私は若者とはいえないけれど、今の若い人たちって、そこまで愚かじゃないと思いますがねぇ。
本作に反感を持つ人が多い一因は多分「御年配の脚本家が、今の若者を理解できてない、バカにしている」空気があるからでは…?
それが本作のネックである「キャラの行動や思考がおかしい」特に終盤のダメさにも繋がってくる…。
ハルト達の咲森学園は、実は普通の学園では無かった事実が次第に明かさる、それを踏まえると、彼らの異様な世間知らずにも相応の理由はあった(のかも)?
と一応の擁護は出来るのですが、17話~終盤に至る迷走劇は、あまり愉快じゃない。
総じて
序盤 ありがちな設定…からの先を読ませぬ意外性で飽きさせず
中盤 面白さ増してくる。16話のピークまでならば名作か!?
後半 次第に核心に迫り興味深いが意外と盛り上がらず
終盤 迷走。最終的な評価は微妙に…。
…正直なところ「粗が多いものの、面白かった」のは確か。
粗の少ない良作以上に「駄作だけど面白い」
「ネタ」「話題性」はあるので…「記憶に残る駄作(面白かった)」という評価に。
ただ、超豪華素材を投入した割には、名作級にはなれなかった。(ギルティクラウンを彷彿)
惜しいんですが…娯楽作品と割り切れば、水準以上ではありました。
全般に漂う稚拙さをどう許容していくかが、本作を楽しめるか否かの鍵なのでは。
『作画』
各分野錚々たる一流スタッフを投入、キャラデザ面でも、メカデザインもかなり良いです。
ヴァルヴレイヴのギミックも良いんですが、ドルシアの兵器もカッコ良かった。
モブの軍事兵器のデザインや描写も凝っている。
演出面では、16話のマリエ解放が良かった。
『声優』
やはり豪華人気声優を投入。
ハルトの逢坂良太さん、エルエルフの木村良平さんナイスコンビ。
ドルシア側の男性声優が超豪華、女性も水樹奈々さんが。
悠木碧さんの引きこもり少女も良かったのですが、MVPはマリエ役の福圓美里さん。
マリエ解放の鬼気迫る切なさ圧巻でした…。
『音楽』
楽曲面でも一流、特に序盤のED「僕じゃない」がイイ♪
ボクジャナーイ♪ボクジャナイ♪ボクジャーナイー♪
注目は7~12話のED「そばにいるよ」16話のマリエ解放のシーンでも挿入歌として使われ、これマリエちゃんの主題歌だったのか…。
ちくしょう完全に泣かせにきてやがる!
『キャラ』
「1人旅団」の異名を持つ、ルルーシュ(アルドノアゼロではスレイン)ポジのエルエルフのインパクトが大。
異能無しでも戦局を動かして見せるチートキャラ、幼き日の姫との約束の為に戦う信念など、まさに主人公していた。
口癖「導き出される結論は…」
未だにニコニコ動画でキャラが推理するシーンで多用されてたり、ネタ的にも存在感を残した。
ハルトは前半はエルエルフに押されて平凡な主人公であったが、後半の成長ぶりは中々。
惜しむらくはドラマ自体が迷走していて成長後の活躍がイマイチだった事か。
ダブルヒロインのショーコとサキも(色んな意味で)存在感大でした。
どちらも視聴者の予想を超えてくるトンデモな思考と行動で驚かせてくれる。
ショーコは終盤の行動でかり評価下げてますが…指導者として(愚かなりに)選択した結果なので。
良くも悪くも(大抵は悪い意味で)ドラマを動かしてきた迷ヒロイン。
サキの方がヒロイン度は高いんですが、やはり予想外の展開に翻弄されてて悲運なヒロインだった。
いじめられて心を閉ざしたスーパーハッカー・アキラちゃんが一番かわいいです。
本作随一の悲劇のヒロイン・野火マリエちゃん…
がんばった割には、友達ふたり(ショーコとアキラ)からのリアクションが無いのが切ないです。
…ここら辺も本作の惜しさ、個々のキャラは良くても、繋がりが弱いんですよねぇ。
ここら辺も脚本が「意外性ライブ感重視でキャラを大切にしていない」のを感じる。
リーゼロッテ姫やドルシア側の人物もただの悪党ではない内部ドラマ良かった。
エルエルフ以外との因縁殆どないですけど。
…私的に結構お気に入りキャラが、連坊小路サトミです。
口先だけ達者でプライド先行の無能、当初リーダーだったが信用失墜、成長著しいなど、リヴァイアスのルクスン北条の後継者か。
融通が利かないだけで能力的には高く、次第に適材適所で力を発揮。聖徳太子ばりの活躍シーン好き。
あとシスコンで妹のアキラちゃんラブなのも良い!
…彼の存在は、私の中で本作の評価好意的な要因の一つだったり。
一見無能なキャラが成長して活躍に至る、こういうの好きなので。{/netabare}