どらむろ さんの感想・評価
3.4
物語 : 2.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
未来情報でメンヘラ男子を「全員で」攻略せよ!(難易度理不尽) 青春の雰囲気(だけは)良かったです。
ヒロインと仲間たちが、未来の自分からの手紙を頼りに、この後自殺する予定の少年を救うべく奮闘する、青春ラブストーリーです。
タイムリープ…ではありませんが、間接的には「やり直す」系譜。
見所は「選択肢」を間違わぬよう苦慮するハラハラ感と、甘酸っぱい青春ラブコメの雰囲気にあり。
少女漫画原作ですが、なんとなく乙女ゲーの攻略を思わせる。
…賛否両論、私の好みには合わなかったです。
まあ、女性向けの男子攻略ゲーム的な面白味はありました(乙女ゲーやった事ないけれど)
{netabare}『物語』
タイムリープ。現実にはあり得ないけれど、物語では「過去をやり直したい!」根強い願望を反映してか、一定の勢力を築いている。
本作はタイムリープではありませんが、「未来を知る自分からの指示」という形で、間接的にやり直しに挑戦していく物語です。
…序盤~前半は、断片的な未来情報を頼りに、翔(かける)君の好感度をどう上げていくか、地雷を踏まないか…
なんだが乙女ゲーの男子攻略パートっぽいなぁ~(やった事ないけど)
面白いと思ったのは「菜穂が必ずしも効率的に行動しない」
手紙の指示を必ずしも遂行するとは限らない展開、菜穂ちゃん、なんで一気に手紙読まないんだ!?
といった諸々のもどかしさもまた、悩める等身大の女の子らしくて良かったのでは。
まあ、続き読むのが怖かったり、分かっちゃいても恥ずかしかったり、そういう繊細な機微はむしろ本作の長所。
だって人間だもの。
人生に後悔はつきもの。ましてやまだ若い高校生なら、沢山間違うでしょう。
沢山後悔しつつも、未来の自分からの道標を頼ったり頼らなかったりで進んでいくドラマ自体は引き込まれました。
また、良き仲間たちを交えた青春ドラマの雰囲気も良かった。
菜穂が誰にも打ち明けられず、何度も選択を間違えたり苦悩するけれど、周囲の仲間たちのお陰で青春劇として輝いている。
翔もやや陰があるけれど普通以上に好少年、男女ともに友情が結ばれていくのは心地よかったです。
自殺。死んでしまっては、もう未来はないんです。それは非常に勿体ない。
未来からの手紙で、未来を繋ごうとがんばる。そのコンセプトは正しい。
さてさて、菜穂ちゃん、難易度は高いけどがんばれ~。
…ところが。
中盤、菜穂以外の仲間たちも未来からの手紙受け取っていた事が判明!
ええ~~~!?
本作はここを境に微妙になっていく…。
序盤からそれっぽい伏線や言動行動が見られない等の粗さは、別に構わんです。
お前ら、互いの情報交換しろよ…とか、色々とツッコミ所が増えていきますが、まあそこは良いでしょう。
(私、そういう部分はあえて、いい加減に見るスタンス)
私が気に入らないのは一点のみ
「翔攻略ゲーのプレーヤーが菜穂ちゃんだけではなくなる」
翔はたしかに面倒なメンヘラ男子ですが、難易度高い程萌える面もありますし。
ただし、それは主人公(菜穂)が主体的にプレイしてのもの。
中盤以降は仲間たち、特に須和(理想的な性格イケメン)程の良い男が、翔(内面描写なく視聴者視点では魅力乏しい)ひとりの為に、己の未来含めた全てを犠牲にして行動する…納得いかん。
「非常に歪な翔ハーレム」状態、その翔は内面の魅力を殆ど描かれないまま、ひたすらに面倒くさいときた。
…ここら辺は須和の人柄と、青春劇の雰囲気の良さで幾分は緩和されてはいましたが、見ていて面白くは無かったです。
終盤にいたる、地雷率急上昇でバットエンドか!?とハラハラさせる展開は、正直…結構面白かった。
翔の事情なら無理もないし、誰も悪くはないです。若いんだもの。
すれ違う少年少女のラブコメ、これは悪くなかった。
ラストの締め方も、まあ悪くは無いです。
SF的には?ご都合主義?そこは一切悪いとは思わない、物語だもの。
多世界解釈、未来側の視点から、後悔も今も受け止めていく姿勢は良かった。
…ただ終盤が、分かり難く、誤解を招いている感も。
決して須和と菜穂の未来の形(の一つ)を否定しているワケではないハズなんですが…かなり誤解を招いてしまっているのは、脚本が悪い。
総じて本作の脚本一番の戦犯はずばり
「菜穂以外の全員が手紙読んでいる」に尽きると思う。
これのせいで、歪で気持ちの悪い翔至上主義的な作風になってしまっている。
最後まで菜穂ひとりでメンヘラ男子を攻略、須和は事情知らないけれど菜穂と翔の狭間で苦悩する…
的な流れなら、ドラマ的には終始緊張感が維持出来ただろうし、その過程で翔の(視聴者に対する)好感度も上げる機会があったのでは。
…菜穂だけが未来知っている間はかなり面白かったし、青春劇としては終始良く、落とし所もまずまずなので、脚本に難がある割には、さほど嫌いではない作品です(好きでもないけれど)。
『作画』
キャラデザが好みじゃない。悪くは無いんですが、アニメ的な萌えではなく、実写ドラマ寄りなんですな。
作風には合っているんでしょうけれど、私萌えオタなので…。
それでも水準以上に美男美女揃い、後半やや作画が乱れたものの、気にならないです。
青春劇としての背景描写がかなり良い点は高評価。
過去を後悔する未来から見ての、青春のノスタルジーをしっかり表現していた。
お陰で青春劇としての雰囲気の良さは持続できました。
『声優』
花澤香菜さんが菜穂を好演。後悔と恐れに揺れる少女の心情伝わる、流石です。
山下誠一郎さんも、特に後半~終盤の追い詰められた感が迫真でした。
佐倉綾音さんの憎々しい先輩も中々…サイコパスでは花澤さんの後輩、本作では先輩…どっちも憎まれ役とは…。
『音楽』
中々良い雰囲気なのでは。
アニソンとしては好みから外れますけど。
実写ドラマ向きの楽曲でした。
『キャラ』
翔のメンヘラっぷりが不人気の模様ですが…私は別に嫌いじゃ無いです(現実にいたらともかく、物語の人物としては)
翔がおかれた状況ならば無理も無いし、翔は悪くない。
…彼は「乙女ゲーの攻略キャラ」の典型かも。
主体的な内面が一切見えない、一種のお人形さん。
あくまで攻略対象なんですな。乙女ゲーアニメの主人公(女の子)は結構いますが、男子でこのタイプは何気に珍しい(アニメでは初めて?)
菜穂ちゃんは十分に可愛かった。奥ゆかしい性格が好ましい。
優柔不断で度々チャンスを棒に振る愚かしさも含めて、可愛らしい女の子ですよ。
おそらくは翔よりも断然人気と思われる、須和マジイケメンでした。良い奴過ぎませんか…。
こんないい男、他作品でも中々見ない。
それだけに、自分の幸せを犠牲にする行動が見ていて辛いです。
その他仲間たちは理想的な友人たちでした。
…理想的すぎて若干違和感を感じなくもないですが。
萩田とあずさのラブコメの方が微笑ましかったかも。
上田先輩は典型的な嫌われ役でしたが、彼女孤立無援で菜穂の過保護な仲間たちに阻止される、なんだか気の毒なような。
このポジションにしては大人しかったなぁ…{/netabare}