剣道部 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
世界には魅力が詰まっている! ~不確定な未来(世界)への冒険~
[文量→大盛り・内容→考察系]
【総括】
雰囲気系アニメとしては、かなり高いクオリティ。作り手の遊び心というか、自由度を感じる。ストーリーは一応流れているものの、基本は1話完結なので、(終盤以外は)どこを切り取っても面白い。私は考察しちゃったけど、「考えるな、感じるんだ!」で、翻弄されるように楽しんだ方が、良いかもしれませんね。
《以下ネタバレ》
【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
これぞアニメーション、っていう作品。
風景は昔のアニメのようで好印象。絵が綺麗、というのとも一味違って、なんか魅力的。現実ではありえない世界観と合わせて、正に「アニメでしか観られない」物語だと思います(同時期の「オカルティックナイン」が「言葉で魅せるSF」なら、「フリップフラッパーズ」は「映像で魅せるSF」といった感じでした)。
何気に好きだったシーンが、第1話でココナがパピカと出会うシーン(路面電車のところ)。踏み切りで待つココナは、ふと空を見上げます。そこに、不思議なボードに乗った少女が空を飛んで現れるのですが、それに気付いたのはココナだけでした。なぜなら、他の生徒はみな、スマホをいじっていたから(背景となっているモブの生かし方が絶妙)。
私事ですが、今の職場からの帰り道、必ずとある高校前のバス停を通ります。時間的にちょうど高校生達がスクールバスを待っています。バス停の前には20人近くの高校生が立っているのですが、皆一様に視線を落とし、スマホをパチパチ。あれは凄く、もの凄く異様な光景です。
すぐ隣にいても、隣には誰もいない集団。普通、隣の人と世間話のひとつでもしませんか? 同じ部活の奴とか、クラスは違うけど同中でそん時しか会えない奴とか、いないの? 懐古主義のおじさんの戯言かもしれないけれど、彼ら彼女らは、何か大切なものを見落としていると思います。
例えば、パピカとの素敵な出会い、とかね(笑)
本作では、ココナとパピカが現実と空想の境目のような不思議な世界(ピュアイリュージョン)を冒険して回ります。まるで、サン=テグジュペリの「星の王子さま」のような世界観(もしくは宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」)。「星の王子さま」の有名な一節に、「砂漠が美しいのは、どこかに井戸をかくしているからだよ」「いちばんたいせつなことは、目に見えない」「子どもたちだけが、なにをさがしているのか、わかってるんだね」 などというものがありますが、同じようなメッセージを、この「フリップフラッパーズ」からも感じました。
この作品を貫くテーマは、「不確定な未来(世界)への冒険」だと思います。それを、百合と神作画に乗せて、雰囲気アニメとして表現したのが、「フリップフラッパーズ」という解釈です。
最終回では、母親の比護下から飛び出すココナが描かれていました。例えばお祭りなんか、子供の頃は家族と一緒に行っていましたが、中学生くらいになると、友達だったり付き合っている相手と一緒出掛けるわけで。親としては寂しいし不安だけど、やっぱり子供としては成長なんだと思います。そういう比喩(親離れ、子離れ、冒険、成長)に感じました。
最終回では一度、「現実世界風ピュアイリュージョン」に行きます。全体を通し、灰色の(色の少ない)暗い風景。テレビからは不幸なニュースが流れ、街には機械の音だけが無機質に響く。ユクスキュルはただのウサギになり、セーラー服も地味に(笑) これまで見てきた数多のピュアイリュージョンの中でも一番つまらない世界。
でも、それこそが私達(視聴者)が生活しているリアルな世界なわけです。
これ、1話冒頭のココナが塾で模試を受けている場面(世界観)に似ていました。(もしかしたら、あのテストの最中にココナは初めて能力を発動させ、そのあと過ごした世界はずっとココナのピュアイリュージョンだったのかもしれませんね。)
そんな灰色の世界に再び現れたパピカ。パピカの登場と共に音楽(特殊挿入歌)が鳴り始め、世界は色を取り戻します。そして、ココナとパピカは手を繋ぎ、そんな灰色(リアル)の世界を飛び出します。
(そう考えた時、この「フリップフラッパーズ」という作品自体が、毎週、私達(視聴者)をリアルの世界からピュアイリュージョン(アニメ、空想の世界)に連れていってくれたのかも。ココナにとってのパピカが、私達(視聴者)にとってのフリップフラッパーズ、みたいな感じ。毎週、難解で不思議な話ばかりでたくさん振り回されたけど、なんだかんだ楽しかったな~、というこの作品の感想は、ココナがパピカに抱く印象と同じなのかもしれませんね。)
ラストシーンもまた印象的。まず、ユクスキュルが空を見上げ(多分そこにはパピカとココナがいて)、続いてヤヤカも空を見上げます(この時の表情が実に良いです。眉間にシワが寄り眉毛が下がる困り顔でありながら、口角は上がり、口元は笑顔。苦笑、「アイツらしょーがねぇーなぁ」という声が聞こえてきそうでした)。続いて、歩道橋で遊んでいたトト、ユユ、ニュニュが空を見上げ、絵を描いていた いろは先輩が空を見上げます。私はここに、前述の「1話でのパピカとの出会いのシーンでうつむくモブ達」との対比を感じました(世界の美しさに気付けた人達)。ユクスキュルやパピカと仲良くなった、ヤヤカ。戦い以外の日常系を得た、アモルファスの子供達。空を切り取ったいろは先輩の爪には、しっかりとマニキュアが塗られていて。それぞれのサブキャラもちゃんと「何かを得た」んだな~と、感動しました。
この作品はとにかく難解で、最終回を見終えても、正直半分も謎を解けていないように思います(つか100%理解できてる視聴者っているのかな)。なんだったら、制作自身も明確な答えがない、あるいは求めていないのかもしれません。
「あなたに世界はどう見えていますか?」……
この世界には、見えないだけで、見てないだけで、気づいていないだけで、気づこうとしていないだけで、実は魅力がいっっっぱい詰まっているんだよ!
未来は不確定で、100%こうなるなんて保証はないけれど、だからこそ面白い。さあ、冒険にいこう!
具体的に言えば、考察なんかしきれなくても良いじゃないか、さあ、アニメを楽しもう(笑)!
と、そんなメッセージが込められた作品だと思いましたw
「フリップフラッパーズ」……「flip flap」で、宙返りの意味。確かに、作風に合っています。しかし、「flip」だけなら、「はじく、めくる」。「flapper」だけなら「おてんば娘」。私は、単語を分けた方が好きですね。
「世界をめくるおてんば娘達」
なんか素敵でぴったりなタイトル解釈だと思うのですが。
{/netabare}
【視聴終了(要約バージョン小盛りレビュー)】
{netabare}
我々は、灰色の日常の中にある、素敵なモノを見落としてはいないだろうか?
美しい映像で描かれた素敵で多彩な世界が、「不確定な未来への冒険」を疑似体験させてくれます。
難解ながらも、キッチリと感動を伝えてくれる、良作です。
{/netabare}
【余談 ~パロディーまとめ(気付いたものだけ)~】
{netabare}
スペースダンディに似ている。もしくは、不思議の国のアリス(第2話なんてモロに)。
てか、パロが多すぎ。個人的には、パロなんか入れ込まなくても、素敵な絵と魅力的なキャラ、不思議な世界観だけで充分に良作に成り得たのでは? という立場(パロにはやや否定的)です。
1話→ジブリ(魔女宅&トトロ&ナウシカ&ラピュタ)。2話→アリス。3話→北斗&ドラゴンボール&スケバン刑事&セーラームーン&必殺仕事人。4話→エヴァ&ナディア? 5話→スペースダンディ? 6話→まどマギ? 7話→スタンドバイミー? 8話→超新星フラッシュマン? 10話→エヴァ? 11話→ラピュタ? 12話→ロックマン(笑) 13話→ドラクエ(笑) セーラームーンやらスケバン刑事やら、これまのネタ元のポスターがw
第1話の中には有名な錯視(ルビンの壺、少女と老婆、少女と骸骨)が登場しますが、この3つは全て「ちょっと立ち止まって(光村図書・中1版)」という、国語の教科書に載ってるやつなんで、そこからとったのでしょうね。「私たちが見ている世界だけが世界じゃない」ということでしょうね。
ココナが授業中に読んでいたのは、夏目漱石の「夢十夜」。現在過去未来の不思議な世界を夢でみる小説で、明らかにフリップフラッパーズと被る。
EDは「ヘンゼルとグレーテル」? 幸せは意外と身近にあったとか、そういうノリか。
{/netabare}
【各話感想(レビュー)】
{netabare}
【印象に残った回①】⬅一番好きな回でした。
4話。これといってなにかあった回ではなかった。サービス回? 無人島回? 百合回? まあ、なんでもいいけど、何かは分かんないけど、とにかく面白かったというのが率直な感想。パピカの部屋(土管ホームw)に入った瞬間の明るくカラフルな世界。無人島で迎える、夜の暗い海を照らすわずかな月明かり。対照的なんだけど、どちらにもハッと息を飲むような美しさがある。この作品の作画は、軽く流す所と「見せ所」を意識して力を入れるところの塩梅が実に上手く、的確だと思う(この姿勢を「ろんぐらぁいだぁす」に欲しかった)。エピソード的にも、時間の経過の中で、切るとこ切って見せる所はしっかりじっくり魅せている。なんか、「ステキ」が詰め込まれたような世界、というか、「素敵な写真で埋め尽くされたコルクボードを眺めながら共に思い出を語っているような幸福感」を覚えた良回でした。まっ、今になってもイマイチ意味は分かりませんが、雰囲気アニメの完成形のようにも思います(流石に言い過ぎかなw)
【印象に残った回②】
5話。ループ&ホラー回。がらっと作風を変えてきた回。スペースダンディのカレンダー回に近い感じ。しっかし、怖かったw なんどかマジで鳥肌たった。制作が楽しんで作っているのはわかる。
【印象に残った回③】
6話。なんか毎回になってきた(笑) いろちゃんは美術部の先輩(彩いろは)。 いろはがパピカでパピカがいろは? でも時代背景が? 過去に飛んでいろはの代わりにいろはのトラウマを解消したのかな? とすると、ピュアイリュージョンとは、人々の純粋な記憶の世界、とか?
【印象に残った回④】
7話。とにかくもう、M・A・Oさん凄いっす! こうして聴いてみると、本当に声優さんって技術職なんだと分かる。
【印象に残った回⑤】
8話。いや、ホントにもう毎回凄くて(汗) ダレる回がない。ロボ展開はそのうちあるかもと思ってたけど、まさか挿入歌まで作るとは(笑) Cパートはなんか怖かった……。
【印象に残った回⑥】
10話。やはりお祖母ちゃんは敵だったか。まあ、それは何となく分かっていたけど、ロボだったとは。謎解きが始まり、ラストへの助走となってましたね。
【印象に残った回⑦】
11話~最終話。ここまで、1話完結形式で様々なピュアイリュージョンを巡り、少しずつストーリーを進めてきた本作。11話を境に、伏線を回収しつつ一気にまとめてきましたね。ラストは「友達を救いにいく」「崩壊する世界を救う」という、THE王道の展開。母親の重すぎる深すぎる間違った愛……リアルモンスターペアレンツになっていましたね(笑) 13話は、これまで以上に意味不明な展開。謎解きが謎解きになってないよ(笑)
{/netabare}