Kuzuryujin さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
青春時代の一期一会
2015年春クール、一期全13話を
リアルタイムで観て、話に惹き込まれた。
ひと言で言えば
「面白い作品」と言うより
「心に響く作品」と言った方が的を射ている。
そう考えると「響け!ユーフォニアム」は、
物理的なものでなく
「心に響かせろ!~」と言う意味合いが強く、
言い得て妙なタイトルだ。
<噛めば噛むほど味がでるスルメのよう>
この作品には、魔法がかかってる。
1話1話を何度も観たくなる。
制作者が日本人ならでは。
やさしさと、言葉少なくとも伝わる
繊細な台本、演出、演技が心地よい。
人情の機微を非常に良く心得ている。
顔、動作、仕草…表情豊かで含みが多い。
背景、アングルなども拘り強く
いろんな含みが感じられることもある。
そんな様々なヒントが転がり
いかようにも考察し、解釈ができるから、
その日の気分や体調で味わいも変わる。
<やはり今作は傑作!>
2期の第4話を観終った時点で既にそう思えた。
1期で気になった伏線は、ゆっくり丁寧に回収。
4話目にして一つの区切りもついてすっきりして心地よい。
まだまだある伏線もきっと無事回収されそうな安心感が得られた。
まだ半分も終らぬこの時点で、
演出と脚本に迷いなしで最後まで魅せてくれそうと直観した。
以降、石原立也監督と脚本・シリーズ構成の花田十輝氏を
中心とする制作チームを信用して
5話視聴後、オール5の作品評価に。
それは、結果的に最後まで観ても変わることはなかった。
<アニメ第一期について>
{netabare}
思えば一期の6話目くらいまでは、
キャラの漫画チックな作画や演出、
いかにもアニメなコミカルな動作も混在していた。
しかしそんな手探りな状況も、
徐々に演出の方向性が定まり、
6話のルビー&プラチナダイヤモンド川島や
被り物チューバ君のネタを最後に
露骨なコミカル描写は激減した。
7話目の葵の話の頃からシリアス感が強くなった。
以降、リアル寄り演出&作画が増えた印象。
キャラの自然な表情から喜怒哀楽を表現し、
より深い人間ドラマの方向性に定まっていった。
また8話の最後の大吉山での二重奏以降は
音楽の力をより取り込んで、抒情性が倍増。
胸が締め付けられるような切なさや
深い感動を得られる回も多くなった。
二期でもその方向性にブレなし。
非常に安定してポイントを外さない作風は一貫。
グッとくる脚本と演出で
毎回次回が非常に楽しみなのは一期以上。
リアルな心理描写で感情移入も深い。
<郷土愛がもたらしたもの>
作画、色彩設計も京アニならではの独壇場。
風情があって時に感動するほどの画に出会える。
またキャラクターの作画は、
水気たっぷり含んだ瞳で表情も豊か。
時に台詞以上に感情を表現する。
原作者は、京都府宇治市出身。
ある日、川の氾濫で、幼いころから慣れ親しんだ
故郷の美しい風景もあっけなく壊されてしまう
という現実と出会う。
そこで、自らの作品に、
ずっと変わらぬ宇治の原風景を
残しておきたいという動機から
宇治を舞台にしたこの作品が
生み出されることになったそうだ。
そこに同じ地元の京アニがアニメ化。
当然、作画や音響、演出にと
自然と力が入るのも道理。
そのおかげか、
多くの日本人の心の琴線に触れる作品が生まれた。
作者と制作者の拠点が同郷ということが
いい化学反応を生み出したのかもしれない。
{/netabare}
<失言マスターは今日も行く>
{netabare}
主人公、おっとり久美子は
天然さと残念さが二期でさらに磨きかかってる。
タコが頭に被さってるような髪型と相まって
一期では他のキャラと比べると存在感が微妙だったが
二期目ともなるといい味が出るようになった。
ほどほどの熱量の脱力系で愛嬌も感じられて可愛い。
久美子は思ったことを無意識で声に出す悪い癖がある。
しかし、時折閃きのその発言は、
話し相手に響く鋭い発言をする。
実はそれが彼女が今作の主人公たらしめてたんだと
気付いたのは二期の9話目だった。
彼女は只者ではなかった。
きっと最後まで
周りに巻き込まれてばかりなんだろうけど、
これからも関わる人すべてに
タコ頭に相応しく、ご多幸を振りまいて欲しいものだ。
{/netabare}
<吹奏楽部員、皆味わい豊か>
{netabare}
一期からのファンなのでキャラクターに愛着が強い。
二期も新キャラ含め、すべてのキャラに命宿る。
4話目にして、
一期ではどちらかと言えば「困ったちゃん」だった
デカリボン吉川優子もとても魅力あるキャラになった。
久美子は、なぜか遠慮少なく優子とは話しやすそう。
意外と相性良さそうで微笑ましい。
優子の中の人、山岡ゆり氏は
実際に中高の6年間、吹部で一貫してトランペット担当で
なんと高3時、全国コンクールに出場で金賞を受賞した経験がある。
上下関係に体育会系の厳しさがたっぷりで
北宇治以上にハードだったようだ。
山岡氏曰く、体験上、トランペットは自己主張の強い女子、
フルートは可愛い女子、ホルンはしっかり者、
チューバはどっしりした女子が多いのだそう。
(電波ラボラトリー、ゲスト出演時のコメント)
中学時、トランペット選んだきっかけは
香織先輩のような綺麗で憧れる先輩に誘われたから。
吉川優子、山岡ゆり、どちらもイニシャルY.Y.
そんな彼女は、今作中キャラとのシンクロ率が
一番高かったかもしれない。
デカリボンの気持ちが痛いほど解ったんじゃないだろうか。
思えば、一期での感情むき出しの台詞も、
演技を超えた説得力があった気がする。
ほかのメンバーも
その個性に相応しい描かれ方で安心できる。
確立された、
節度があり無駄のない演出、挟まれる適度なユーモア。
二期では、3秒ルール、「北宇治~っ、ファイトぉ~」再び、
高坂麗奈の死んだ目、さふぁいあみどりの和み溢れる言動など…
基本シリアスな物語なのに時折頬が緩む。
{/netabare}
wikipediaで思いっきりネタバレされてる。
原作未読で話の行方を
アニメだけで楽しみたい方は閲覧要注意。
でも原作上の今後の展開を知ってても
アニメはアニメとして
オリジナル要素もあって十分楽しめると思う。
(例えば一期では、
「チームもなか」の存在など)
ただ、物語が非常に丁寧に描かれる故
二期からだとキャラにまだ魅力感じられず
あまり話に惹き込まれないかもしれない。
一期から観た方が絶対いい。
★ 第五回「きせきのハーモニー」
{netabare}
全国までの道のりはまだ続くが、
北宇治高校吹奏楽部のメンバー全員は、
全身全霊の音楽を達成し、
それに相応しい評価が与えられたこの日を
決して一生忘れないだろう。
一期含め、丁寧な物語の積み重ねの集大成となった
最上の演出に満ちた感動回だった。
二期としては1クールの半分近くの段階にも関わらず
最終回のようなクライマックス。
しかし、一期からの通算だと
第19話(番外編含む)に相当するので感慨深い。
この時点で評価はオール5献上で更新。
演出、構成、演技、作画、音楽…
すべてが神がかり、これこそまさに神回。
「きせきのハーモニー」という
奇跡と軌跡を掛けたサブタイトルが見事に当てはまる。
アニメならではの現実の美化表現と
写実的な世界観の調和がすごい。
<Aパート、関西大会直前>
描写が絶妙で、6分ほどの短かさにかかわらず
キャラと一緒にハラハラドキドキ。
<Bパート、関西大会当日>
たっぷり尺を取り本番までの緊張感と闘志を丁寧に演出。
コンクール―での各校の持ち時間12分の内、
課題曲はほとんど省略されたものの、約7分にも及ぶ
ノーカット完全版の自由曲「三日月の舞」の演奏が圧巻。
魂を浄化してくれるような全体演奏だった。
音楽の神にささげるが如く、
ひたすらに一途に指揮者と部員は一体となって音を奏でる。
楽譜の書き込み、貼られたスナップ、回想シーン、
皆の思いを深く共有できた。
部員を信頼しきったマエストロ滝の表情もいい。
演奏に参加できない、見守ることしかできない、
バックステージのサポーターは、思いが念いとなって
ひたすらそれぞれの神なる存在に北宇治の勝利を祈る。
臨場感が半端無い。
自分もすっかりサポーターの一員になってしまった。
映画でもドラマでもアニメでも、
一生忘れられずふとした機会に思い出してしまう
一瞬のシーンがいくつかある。
今回のエンディング後のCパートのラストシーン、
鎧塚みぞれの笑顔がまさにそれにあたるだろう。
感情表現が苦手だったキャラが成長し、
本番で豊かな情感に溢れた優しい音色を奏でた。
そんな彼女の笑顔には神々しさまで感じられた。
今回で、映像作品としてとうとう原作を超えてしまった感。
部長のお約束の掛け声と両手上げのさふぁいあも可愛かった。
{/netabare}
★ 第九回「ひびけ!ユーフォニアム」
{netabare}
一期から一番知りたかった謎が見事に氷解した
とてもいい余韻の残る優秀回だった。
今作効果で各学校の吹奏楽部入部希望者は
増えそうだけど、さらに今回のおかげで
新入部員のユーフォ希望者も
爆増するんじゃないかと思えた。
少なくとも今作を視聴中の
全国のユーフォニアム奏者は
ユーフォやってて良かったと
皆思ったんじゃなかろうか。
特殊エンディングの、
あすかのユーフォニアムの音色が、
まどろむ猫しかいないような
あたかも無人の夕方の街並みに
沁みこむシーンにジーンときた。
背景の街に人影を描かなかったのは、
あすかが孤独に今まで生きてきたという
象徴なんだろうか?
全体的にも今回は、
学校内でも登場人物はかなり削られ、
モブキャラもいないほど。
主要キャラなはずの、
葉月は「どうなっちゃうんだろうね」、
緑輝は「ですよね」の
一言のみで一瞬だけの登場。
今回、あすかが一番、
麗奈は二番目のメイン。
その他にまともな久美子との絡みが見られたのは、
夏紀、香織。
皆、久美子と関わることにより
過去にいろいろ吹っ切れたことのあるキャラばかり。
(香織は、間に麗奈が入り、
久美子と直接関わった訳でははないが)
同じく久美子には恩がある
希美、みぞれも久美子にあすか問題の希望を託しに
ちょっとだけ顔を見せる。
彼女たちは皆、久美子の問題解決運を買ってるようだ。
意図した交渉力、説得力はないけど、
妙に久美子は問題の渦中に嵌り周りを変えてしまう。
そうした運も実力の内なのだ。
もはや吹部の福の神。
香織は、一期では芋好き描写もあったから
食べ物に拘るのが相変わらずだし、
おいしい食べ物こそ人を説得できる的な
発想が香織らしくて実に微笑ましい。
「あすか先輩を連れ戻すぞ!大作戦」
というストレートな命名も香織らしくていい。
夏紀は、大局を見通せる賢い娘。
私情を挟まず部にとって一番を考えていた。
人柄の良さが伝わりまた魅力アップ。
そして、久美子と目を合わせられない夏紀が可愛い。
<顔と手足のドアップが盛り沢山>
特に足画の拘りがすごい。
あえて顔の上部を映さなかったりと
不自然で意外なアングルも多く、
他回とは異彩を放つ印象的な演出回だった。
顔、特に目元が見えなくなると
その人物の考えも見えなくなり
不安感が増すので緊張感漂う雰囲気が濃厚となる。
おかげでシリアス感が今までで最高だった。
また、顔アップは、言葉以上の表情の豊かさが求められる
作画力はさすがの京アニでその課題は楽々クリア。
そして今回は、目と手足が口以上に雄弁に語る。
久美子、麗奈、あすかの心の繊細な動きが伝わった。
<Aパート高坂麗奈、Bパート田中あすかで魅せる>
特にAパートの麗奈、
滝先生に鍵を手渡しする時の作画が素晴らしい。
瞳うるうる状態の恋する乙女、麗奈。
鍵を受け取る先生の指先が彼女の掌に触れる。
そこで、もっと触れていたいという想いの伝わる彼女の両手、
思わぬスキンシップの動揺で思わず浮いてしまうつま先。
その後、滝先生と亡くなった奥様の写真を見てしまった後の
心の動きも台詞なくても瞳だけで伝わってくるようだった。
そして、帰りの電車の中で無言で上の空の久美子と麗奈。
全く別な思いで心揺れるさまが伝わり奥深い。
Bパートはあすか宅にて
あすかは旧家の令嬢だったのか?
殺風景で女子の部屋らしからぬ彼女の部屋。
一期の7話でもちょっとだけ登場して印象深かったのだが、
まさかあんな家に住んでいたとはびっくり。
さらに六法全書があったのは驚いた。
高校生の部屋とはとても思えない。
彼女は法律家を目指してるんだろうか?
<やはり久美子が主人公>
久美子が「ユーフォっぽい」ってなんだろう?
Aパートの麗奈の台詞はヒントになるが、
具体的な説明は一切ない。
でも感覚的に腑に落ちるのは
今までの丁寧な人物描写あればこそ。
漠然とだけどもなんか解った気になる。
あすかが久美子を自宅に招いたのは
久美子に話を聞いてもらいたかったから、らしい。
長年、ユーフォに真剣に向き合っていたあすかにとって
ユーフォっぽい久美子を本音を話せる相手として選んだのは
当然なのだろう。
あすかの話は重いけど、
久美子の不器用さとお間抜け具合が
ほどよく緊張を緩和してくれる。
<あすか、仮面を剥いで一人の悩める乙女になる>
さすが切り込み隊長!久美子
麗奈も買ってる、
どっか見透かされてるような鋭い発言と
感極まった素直な想いで相手をリード。
あすかから多くの話を引き出す。
あすかは、アップになると
黒髪の中に3本の白髪らしきものが見え、
彼女の、人には言えない心労が垣間見えた。
(ただし、その3本は幼少時にもあったので単に
黒髪の単調な色彩を回避するためのアクセントで、
作画に白髪の意図はないかも)
同期の晴香や香織にも見せない表情を見せ
本音を久美子の前で吐露するあすか。
そして、あすかにユーフォを吹きたくさせる。
<穏やかで平和なラスト>
母親を説得したわけでも
具体的解決策を提示したわけでもないのに
なんとかなりそうな雰囲気が心地よい。
そして今回で、
今までのあすかのすべての行動原理が解り
とてもすっきり。
ようやく感情移入しやすいキャラになった。
後、あすかの自室では
天井から見下ろす形のアングルで
あすかと久美子の会話が描かれたのが印象的だったが
「神様は見てるってことだよね」のあすかの台詞で
その意図を汲みとれた。
また観直して気付いたことだが
あすかの部屋にて、午後4時半、秒針のない壁掛け時計。
長針がリアルにちゃんと動いたのも作画への驚きだった。
普通なら、秒針がない壁掛け時計で
こんな細かいことに気付く視聴者は少ないだろうから
わざわざ動かす必要もないだろう。
この拘りは劇場映画並みの拘り。
二作目の劇場版があっても対応できるよう作りこんだのか?
細部に抜かりない製作者に脱帽である。
{/netabare}
★ 第十回「ほうかごオブリガート」
{netabare}
ネットの反応で一部、
あっけないように解決してしまった
あすかの部活の進退問題に対し
拍子抜けして前回のやりとりさえ
無意味に感じた視聴者もいたようだ。
私は、そんなことはないと思う。
むしろ無駄のない、
無理もない有機的な構成が
実に見事と思えたし感動も深かった。
ただ今回、若干物足りないと感じたのは
自宅であったであろう
あすかと母のガチバトルの描写を省略したこと。
娘の初めての、
親に歯向かう自発的な行動に、
娘の成長を感じ
寂しさとうれしさ両方を感じられた、
なんて描写があったら最高だった。
今までが非常に丁寧に描かれただけに少し残念。
あと5分でも尺にゆとりあれば描けたかもしれない。
でも、このシーンがなくても
作品評価を下げるほどのこともない。
一期での14話のように
今回の補足が含まれた番外編が
生れること、ぜひ希望したい。
<久美子、あすかの本気スイッチ押す、の巻>
今回、久美子とあすかの真っ向勝負の
舞台となった渡り廊下の屋根と柱に、
意味深に張り巡らされた蜘蛛の巣があった。
蜘蛛の糸に捉えられた蝶が
「あすかは、母の呪縛にがんじがらめ」
というメッセージと受け取れる。
その呪縛の糸を、久美子は見事に断ち切った。
今回、最も描きたかったポイントは
そこかもしれない。
久美子は普段は
積極的に相手の懐に飛び込むことはない。
前回のあすかとの絡みと今回の姉との絡み。
久美子が彼女らしくもなく
相手の懐に飛び込んで
子供のように思いの丈を
他者にぶつけさせるためには
必要不可欠な体験だった。
そんな久美子のストレートな想いが
大人ぶって、自分の本心を押し殺して
親の言いなりをよしとする
優等生あすかの
凝り固まって柔軟性を失っていた心を溶きほぐし、
活力を与えてくれた。
それで十分。
今回、久美子が、後悔しない人生のヒントと
自分を必要としてくれる後輩の存在、
と言う大義名分を与えてくれたからこそ
あすか自身が母を説得できたんだと思う。
<ありきたりでない、深い人間描写がすごい>
ドラマでもアニメでもありがちな、
主人公が当事者の間に入って
家族の問題を解決する
嘘くさい展開じゃなくて新鮮だった。
因果関係が明確。
現実的、自然な解決の流れがあった。
あすかと母の問題は田中家の問題であって
本来、部外者の久美子が口を挟むものではない。
大事なのは当事者であるあすかが
本気を直接母に伝えて説得することである。
今までのあすか問題の
理想的解決の流れがここにあった。
<案ずるより産むが易し>
大切なのは当事者が、
真剣に腹くくって問題に自ら飛び込むこと。
あっさり解決というのがむしろリアル。
現実なんて本人さえやる気になれば
意外とこんな形で決着することも多い。
<黄前久美子は勇者である>
親を説得することを諦め
問題解決への意欲を失っていたあすかを
やる気にさせた久美子の功績は大きい。
今回、久美子を、
初めて主人公として頼もしいと思えた。
高校入学時から半年くらいか…。
彼女の成長は凄まじい速さだ。
次から次へとやっかいごとが降りかかり
鍛えられる久美子。
次回だって、麗奈様の御冠(おかんむり)
に向きあわないと…。
この調子なら、彼女が3年になる頃は、
部長か副部長も務まりそうである。
<あすかの才能>
あすかの母の登場は7話だった。
ちょっと娘に執着しすぎて危ない風だった。
しかし、感情の行き過ぎを
素直に娘に詫びる描写もあった。
ゆえに、DV親とか
救いようがないわけでなく、
娘となら冷静に話し合えれば
解りあうこともできると思った。
ただ、部外者に対しては
譲れない壁は厚そうとも思えた。
交渉力はあすかの十八番。
理路整然と母を説得。
相手の弱点を見逃さず、
反論許さず強引に捻じ伏せたことだろう。
麗奈のごとくに・・・。
言論で久美子を追い詰める様がさすが。
そこから察するに、
今回は、たまたま模試の結果と言う切り札が得られたが
仮にそんなものなくても頭のいいあすかのことだ。
本気にさえなれば、痛いところをついて
母親を攻略できたように思う。
あすかの家にあった
六法全書や法律の入門書などから察するに
弁護士、検察官、裁判官…
彼女は、司法の世界に進むつもりかもしれない。
それならそれで確実に大成しそうである。
<サブタイトルが洒落てる>
「ごめん、遅れた…」
すっきりした表情で部活に復帰するあすか。
久美子とのやり取り後、
おそらく数日以内の時間経過があり
自ら為すべきことをして母を説得できたようだ。
『ほうかごオブリガート』
このタイトルから、
あすかはこの放課後を一生忘れず、
久美子に感謝し続けると暗示してるように思えた。
オブリガートobbligatoは、
イタリア語の音楽用語で「助奏」を意味するが
ここでは「ありがとう」の意味のポルトガル語の
オブリガードobrigadoに掛けてるように思える。
だた、男性用の言葉で
女性が「ありがとう」というときは
「オブリガーダ(obrigada)」になる。
でも、そんじょそこらの男よりも頼もしい
あすかならオブリガードでも違和感ない。
ネット上のピクシブ百科事典によると、
あすかは、元宝塚でテレビでもよく見かける
主演女優、天海祐希と同じ身長の171cmの設定らしいし、
髪型変えれば男装の麗人も見事に嵌りそうである。
後、ついでに同上によると、
あすかの血液型は、AB型という設定。
今までの彼女の言動は、
当にAB型の気質(性格ではない)っぽいと思う。
・趣味に生きたがる人が多い。
・多才で有能な人が多いが、
意外と執着心が少ないので器用貧乏で終わる可能性がある。
・公私のスイッチの切り替えが自在で
あまりの切り替えの素早さからギャップ大きく
二重人格のように見える時がある。
・分析力が鋭く人の裏表を憎む。
・所属する家庭や職場の自分の立ち位置に忠実で
約束や契約などに縛られやすい。
・身びいきせず中立公平を得意とし仲介能力に優れる。
・社交的に見えても、趣味を同じくする仲間以外は
一定の距離を置きたがる。
・自分の縄張りに許可なく踏み込むことを極端に嫌う。
・スキンシップはあまり得意でない。
・博愛主義的で頼まれると嫌とは言えない etc...。
そんなAB型は私の周りにも多い。
{/netabare}
★ 第十一回「はつこいトランペット」
{netabare}
今回も、落ち着いた、
切なくも温かい、
味わいと抒情性が豊かな話だった。
すっかり定着した
相変わらずの非常に丁寧な描写で
麗奈と久美子の絆の深さも感じられた。
ネット上には、
麗奈は今回で、滝先生への恋に、
終止符を打とうと決めたという意見もある。
私は、奥様への未練を
今だ断ち切れない先生を
むしろより深く愛し、
久美子には言わなかったが、墓前で
奥様に恋のライバル宣言したんじゃないかと
勝手に思ってる。
簡単には諦めない。
そっちの方が麗奈らしい。
<さふぁいあが可愛い>
まるでコントラバスに運ばれてるかの
ような、さふぁいあ。
見た目も中の人の演技も絶妙なので
彼女が物語に絡むと非常に和み
ちょっとした台詞もツボに入る。
中年になったらご近所で有名な
世話焼き(おせっかい)おばさんになりそう。
この様子では最終的に、
一番好きなキャラになるかもしれない。
最近ご無沙汰の
白地に黒縁の久美子のアニメ目も
一発芸として上手く馴染んでて和んだ。
<天ヶ瀬ダムとその近隣の霊園>
ネットの反応のおかげでロケ地解明は早い。
関東圏に住む私でも放映の翌朝には
新しい聖地を知る。
天ヶ瀬ダムの写真が
一期のサントラCDのジャケットに
使われてるという情報もあった。
一期制作中から既に
滝先生の奥様の墓所は
この近辺と決まってたんだろうか。
興味深かったのでGoogleマップで検索。
久美子と麗奈の待ち合わせ場所の
宇治神社前からダムの正面に位置する
麗奈がトランペット吹いた橋まで
ルート検索したら1.9㎞あった。
ついでに、ほとんど1本道なので
ストリートビューでルート辿ってみた。
ゆるやかな勾配がずっと続き
変速機のないママチャリでは
帰りは楽チン、行きは結構大変そう。
さらにその橋から奥様眠る霊園候補は
割と固まって3か所くらいあるが、
私は、芝生があって墓石の独特さから
ロケ地は、京都天が瀬メモリアル公園が
怪しいと勝手に踏んだ。
さらにその橋から
仮にそこまででは1.3㎞。
でもヒルクライム向きの急こう配で笑った。
変速機ないと相当大変でヤバイ。
ママチャリ登坂と言えば
「弱虫ペダル」思い出す。
往路上り坂ありの総移動距離3.2km。
途中、自転車押して歩いたとしても
汗一つ搔かず、涼しい顔して霊園到着とは
麗奈と久美子の体力おそるべし!w
{/netabare}
★ 第十二回「さいごのコンクール」
{netabare}
今回は、京アニ取締役の一人でもある
木上益治(名義は三好一郎)氏が
絵コンテと演出を担当。
来年(2017年)には還暦を迎えられる、
石原監督より9歳年長の超ベテラン。
wikiによれば、
「何か厳しいことを言われる訳では無いが、
仕事に対する姿勢を見て衝撃を受ける。」(武本康弘氏談)
と言わしめるほど後進から尊敬される人望厚い方のようだ。
一期では、5話と12話、そして今期も5話と12話の
絵コンテと演出を担当されている。
今期5話の演奏シーンの説得力は三好氏の貢献が大きかった。
どちらも、クール折り返し半ばの6話と最終話の直前回。
単なる偶然かもしれないが、狙った人事にも思える。
石原監督にどのような意図があるのか、興味深い。
そして、今期に関して絵コンテは、
5話では石原監督、今回は山田尚子氏も参加している。
お二人とも、大先輩からいろいろ学び、
技を盗むつもりで担当させてもらったのかもしれない。
そのおかげか、今回の演出も見所多く
何回も観てしまいたくなるほど素晴らしかった。
もちろん、脚本が優れてるのが大前提。
特に何気ないのに印象深く、頭から離れないのは、
1年生の宿泊部屋でメガネっ娘が一人、
器用にお手玉してたシーン。
彼女は、3年生の加瀬まいな。
同じくクラリネット担当の
1年のメカクレキャラの高久ちえりとはいつも一緒。
設定では、吹部で意気投合した二人は、学年違えど
「いつも部屋の隅で変なオーラを出してお手玉しながら
ひそひそ話して二人の世界で盛り上がる」そうだ。
だから久美子たち1年生部屋の赤ジャージの中に
一人だけ3年生の証の緑ジャージ。
まいな先輩、1年部屋にちゃっかり、
ちえりと一緒に寝てる姿が可愛い。
二人とも瞳が見えないので作中で怪しく異様な雰囲気。
吹部よりオカルト研あたりが相応しそうなタイプ。
そんな、まいなとちえりだが、
結果発表のシーンでそれぞれ一言だけ台詞も与えられ、
さらなる存在感を残した。
まいなは3年生だから、
続編あったとしてももう登場出来ない。
ここに、モブにもスポットライトあてて上げようという
母性の親心を感じた。
故にこれは、山田氏が絵コンテ描いたかな、
と推測するのも面白い。
<人間が主であり、音楽は従である>
5話の関西大会で、コンクールの演奏描写は、
妥協なき演出で最上のピークを迎えた。
今回、全国大会の演奏シーンはバッサリカットして
各キャラの成長と因果関係の集大成にしたことは
非常に納得だったし、想定内でもあった。
この作品は、
結果として、人間としての成長を描くことはあっても、
どちらかと言えば、コンクールなどの
勝負の世界で繰り広げられる個々人の技量の上達や
勝ち負けで魅せる物語ではないと思ってる。
私は、部活と言う日常の集団生活の中での、
等身大のキャラたちの化学反応で起こる
深みのある群像劇を主にしているからこそ魅せられた。
だから、コンクールはそんな彼らの一場面に過ぎない。
皆、実在してそうなキャラばかり。
まだこれからも続くであろう
彼らの青春時代のページを眺めていたくなる。
<あすか、麗奈、久美子の物語の本当の区切り>
1期の第1話からだと番外編込みで今回が第26話。
1話は60分枠2話分なので実質は第27話。
集大成に大感動、とても素晴らしい!
1期で提示された課題はすべて無事解決された。
・あすかの今までの試練と努力が、
今回でようやく晴れて報われた。
直接会って会話せずとも、
音楽で繋がる父娘の描き方が見事。
・まさか黄前姉妹で涙腺崩壊するとは思ってもみなかった。
・猪突猛進さと乙女の恥らいが同居してる麗奈に
この期に及んで、初めて萌える。
そんな彼女たちを見守るギャラリーも素敵。
<秀一と久美子の自販機前のシーンも秀逸>
そこでも、相変わらず焦れったい秀一だったが、
お互い解り過ぎるからこその距離感だと伝わった。
もはや長年寄り添った夫婦関係にも等しく感じる。
コンクール本番の久美子の譜面台に、
しっかり秀一からのプレゼント乗ってることから
伝わるものは明るい未来しかなかった。
また、姉を追いかける久美子をやさしく見守る秀一。
頼もしく見えるし、男前でいいじゃないか。
仮に最終話で二人の恋愛関係を描かなくても満足だ。
<部活抜きで仲良く喫茶店へGO!>
引退する3年の主要キャラたちの描き方も最高!
あすか、晴香、香織の友人関係。
今までは、あすかだけ浮いていたが、
これからが、あすか込の
本当の友情がスタートしそうな予感があった。
<その他いろいろ>
台詞ほとんどないのに
グータッチみぞれは、今までで一番可愛い。
そして、さふぁいあの、周りを振り回す
マイペースぶりは、当に血液B型流。
彼女に付いていけなくなってきて
持て余し気味の葉月や久美子はA型。
AとBが交わるとき、
リアルにあるあるな人間関係も
なんだか微笑ましい。
ところで、描くべきテーマは描き切ったのに
次週、どうやって幕を閉じるんだろう。
今までが良すぎて期待値MAX。
期待と不安が五分五分になって困ってしまった。
{/netabare}
★ 最終回「はるさきエピローグ」
{netabare}
さすがとしか言いようがない。
有終の美を飾るに相応しい最上の演出だった。
1話のアバンの謎が明かされた。
最後に明かされる作品タイトルの意味。
さらに1期1話、久美子があすかと初めて
邂逅した場でのあすかとの別れ。
エンディングも
メモリアルバージョンの楽曲と共に
描かれるノートと楽器。
そこには人物はいない。
いつまでも余韻に浸っていたくなる。
<ザ・世代交代>
まさか卒業生27名と在校生35名以上の
2組の演奏が聴けるとは。
希美は、在校生組の指揮者だったが、
南中では部長だっただけに堂々と頼もしい。
ブランクなければ部長候補筆頭だっただろう。
来期は、かなり頼もしい先輩として
吹部を盛り立ててくれそう。
来期の編成の課題も見えてきて興味深い。
例えばファゴットの
モデルのような美女二人は両方卒業生。
そのため在校生組はファゴット不在。
これでは、経験者20名以上の
新部員ゲットの目標立てないと
人材不足でコンクール出場すらおぼつかない。
逆に、この状況は新入生勧誘編だけでもドラマが生れる。
希美と共に部を辞めた彼女の同期生も呼び戻さないと。
原作者と連携してOVAでも何でもいいから作って欲しい。
新部長&副部長、優子と夏紀の
お笑いコンビの芸もピークに。
いじリ方が容赦ないので夏紀の前では
テンパらざるを得なくなる優子。
キレる優子の変顔は、いつの間にかシリーズ化。
6話、学園祭時のイチゴプレープ攻めの時より
顔崩れて本格的に。
今までの彼女の、そして1期での久美子や葉月も抜いて
ザ・ベスト・オブ変顔だった。
お多福顔とは実に縁起がいい。
北宇治に福が来たようだ。
<ザ・卒業>
卒部、卒業の描き方が非常にベタだったが
それが実に効果的だった。
自身の思い出の扉が開かれ心に沁みる。
こんな美しい思い出なんかじゃなかったけど。
制作者は、アニメ化に当たり、
原作では81名の部員を64名に絞り
部員全員に名前を与えた。
交友関係、趣味や嗜好の設定も抜かりなかったらしい。
その成果が滲み出てたように思う。
ちえり「先輩いなくなったら、私どうすれば…」
まいな「何をお言いで」
主要キャラの別れのシーンはもちろん素晴らしかったが
一番印象に残ったのは、
前回から存在感が倍増した加瀬まいなと高久ちえりの
一瞬の別れのシーン。
吹部になぜかお手玉道を持ち込む不思議な二人だったが…
ちえりは、新入生からお仲間見つけて
来期もその道を継承できるんだろうか。
<一期一会>
2期では、あまり活躍できなかったさふぁいあや葉月。
でも彼女たちとのとの出会いがなければ
久美子は吹部に入らなかったかもしれない。
そう考えると出番少なくてなっても
全話通じて変わらぬ最重要キャラと思える。
そして、久美子にとっては、
あすかとの出会いがあったから
ユーフォニアム奏者として大きな脱皮があった。
麗奈との交友関係があればこそ
特別で孤高な存在の価値と魅力を知った。
滝昇という素晴らしい指導者に出会えて
吹奏楽の醍醐味を味わうことができた。
高校1年生…一番輝ける青春の瞬間に
出会った人々は、あすかが教えてくれた楽曲と共に
一生忘れられない存在になったに違いない。
<久美子先輩と呼ばれる日は近い>
「さよなら」“Goodbye”
じゃなく「またね」“See you again”
きっと、久美子たちにまた会える。
そんな暗示が心地よい。
いつの間にか、
あすかと間違えられるほどの
奏者の技量を身につけていた彼女。
上級生となる久美子。
彼女の今後の活躍に思いを馳せる。
今度会うときには、
他者から感化される以上に
他者を感化する側に成長を遂げていそうだ。
以下は、原作者の武田綾乃氏の
アニメ最終回視聴後に寄せられた
2016年12月28日付のツイッターのメッセージの一部。
「努力は報われる、
ただしそれは本人が望む形とは限らない。
というのがユーフォシリーズを書く上で
一貫して決めているルールです。
北宇治高校以外の学校にもドラマがあり、
全ての部員たちが努力している。
その結果がどんな形であれ、
きっと一生大切にできる何かを
得られるんじゃないかなと思います。」
これに非常に共感。そして、
「久美子たちが二年生、三年生になり、
北宇治はどうなるのか……。
続きを読みたいと言ってくださる方に
良い報告ができるよう、
執筆活動を頑張りたいと思います。」
と続編への非常に前向きなメッセージを頂いた。
TVアニメの3期もずっと待ってます!!
そして、OPに一瞬映る大学時代の
滝先生、滝奥様、橋本先生、新山先生の4人。
櫻井孝宏、中村悠一、桑島法子各氏、
せっかくいい声優にめぐまれたことだし、
粘着イケメン、うっかりお調子者、おっとりしっかり、と
キャラも立っててこのままでは非常にもったいない。
スピンオフとして大学時代の滝先生を中心とした
4人を描くだけでもいい物語になりそう。
滝家の家庭事情、
滝昇の交友関係や奥様との馴れ初め、
トロンボーン奏者としての活躍などネタはたっぷり。
出来れば、小学生の麗奈や麗奈の父、滝昇の父も登場で
強豪だったころの北宇治描写も織り込んで。
滝昇が指導者となる決意を固めるまでを丁寧に描く物語。
企画されたら非常にうれしいですね。
{/netabare}