「結城友奈は勇者である(TVアニメ動画)」

総合得点
77.9
感想・評価
1410
棚に入れた
6908
ランキング
591
★★★★☆ 3.7 (1410)
物語
3.7
作画
3.8
声優
3.7
音楽
3.7
キャラ
3.8

U-NEXTとは?(31日間無料トライアル)

ネタバレ

tag さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

散華を知らせないことの功罪

「結城友奈は勇者である」を見終わり、「鷲尾須美は勇者である」を読み終わってから書いています。以下、分析です。

「鷲尾須美は勇者である」の書き下ろし番外篇には当初の役目である「暴走する勇者の安全弁」のはずの園子が出撃を拒否するシーンが描かれています。
アニメ→ノベルの順番で読んだのですが、アニメを見たとき、風や東郷が暴走しているのにちっとも園子が出撃してこないので「拒否したって裏設定なんだろうなあ」と思ったらまさにその通りでした。番外編にはさりげなく「少女たちに真実を隠していたツケだった」などと書かれているけど、これほど当たり前の帰結(散華の真実を知った少女たちの反乱)を織り込んでないというのは人類の防御システムとしてありえなさすぎです。
アニメ最終回で一見、なんの理由もなく散華の障害が解消していくのを見て「ご都合主義的」という批判が多かったのですが、僕は実はこれは違うんじゃないかな、と思っています。

アニメでは大赦は度重なる風の問い合わせに対して「不調はないからいつか治る」と言い続けます。勇者視点に立ってしまっている視聴者は「勇者は騙されている」と思うのですが、しかし、イラストノベルでもアニメでも大赦側が「散華の真実」を認めて謝罪するという描写はとうとうありませんでした。

「散華の真実」を知れば、少女たちに暴走・反乱があることは織り込み済みのはずなのにしらを切りとおしたこと、「実際に」(園子も含めて)散華の後遺症は大赦の言う通り治ったこと、を考えると以下のような解釈が妥当であると思われます。

1 大赦はイラストノベルの満開シーンまで、散華の意味、あるいは深刻さを完全には理解していなかった。

2 実際に後遺症を発生させてしまった鷲尾と園子を診断し、「これはいつか治る障害だ」と判断し、園子にもそれを告げた。しかし、2年経過しても何も改善せず、園子は「大人たちは自分をだましている。この障害は治らない」と早とちりした

3 この様な誤認識を抱えている以上、大赦側としては(記憶がないために散華の障害についての大赦の見解をそもそも理解しようもない)東郷に園子をあわせるわけにはいかなくなった

4 アニメで現役勇者に散華の障害が発生した時も大赦は診断ののち「これは治る障害だ」と判断し、それを勇者に告げた。

5 しかし、中学生が「そのうち治る」と言われれば数週間、長くても数か月で治ると期待するのは当然である。2年経っても治らない東郷や園子という前例がある以上、大赦側は「いついつ治る」と言明できず、回復が見られず不安が募る現役勇者たちに「そのうち治る」と繰り返すしかない。

6 しかし、「誤認識」を抱えている園子が東郷と接触した結果、誤認識は現職勇者の間にも広まってしまった(実際、東郷は精霊が勇者の不死性を担保しているという事実から「その部分が園子の情報通りなら、散華の障害が治癒不能だという園子の『解釈』も真実だろう」と類推したに過ぎない)

7 誤認識のために風と東郷の暴走が発生。誤認識を払しょくできない園子は「勇者暴走の安全弁」という自らの役目を拒否

8 風の暴走はたまたま夏凜がそばに待機していた(実際、夏凜が風のそばにいたのは大赦の指示のおかげであり、大赦は暴走の可能性を看過していたわけではない)ため発見が早く大事には至らなかったが、同時進行だった(より深刻な)東郷の暴走の抑止には失敗する。

9 バーテックスの総攻撃を撃破したため、一時的にバーテックスの侵攻の間隔が伸び、勇者の出撃頻度は激減。大赦の予想通り、散華の障害は回復に向かう。

つまり、散華の障害は治癒不能というのは園子の誤認識が現役勇者に広まったものに過ぎない。アニメ最終回の治癒はご都合主義ではなく、大赦の当初からの見解が正しかったことの表れに過ぎない、こう思った方が「散華の障害の真実を知られた場合の少女たちの暴走を織り込んでないように見えるとんでもない馬鹿システム」という疑惑は晴れるのではないでしょうか?

「なんで都合よくみんな『同時に』治癒するんだ」という反論もあるかもしれませんが、散華の障害の治癒には時差がありました。園子の障害に匹敵する障害をうけたはずの夏凜はいち早く回復し、再登場時にはすでに視覚聴覚を回復し、残っているのは足の軽微な障害だけ、という驚くべき回復力です。一方、樹の声の回復と風の視覚の回復には明確な時差があり、友奈の意識の回復は他の勇者に大きく後れをとりました。園子は包帯をほどいて立つところが一瞬映っただけでどの程度の回復かも不明、うがった見方をすればあの園子の回復シーンは文化祭と「同時」ではないかもしれません。実際、東郷の「記憶」はアニメの最終回までには回復していないようです。

散華の障害の回復にはかなり個人差があり、現役勇者についてはバーテックスの攻撃が長期間停止したための早期の回復。園子は現役勇者の代替わりまで「自分は出撃していない」とは一言も言ってない。ひょっとしたら現役勇者の代替わりまでずっと一人でたたかっていたのかもしれません(実際、イラストノベルでは園子の満開の数を10回と推定していますが、アニメでの園子は21体の精霊をもっていました。その間、10回の満開を繰り返す機会があったと思うのが妥当でしょう。これでは治癒など望むべくもありません)。

いずれ真実は明かされると思いますが、

「散華の障害が不治だというのは勇者たちのはやとちり」

説がきっと真実なのでは、と思います。

投稿 : 2016/10/26
閲覧 : 260
サンキュー:

6

結城友奈は勇者であるのレビュー・感想/評価は、ユーザーの主観的なご意見・ご感想です。 あくまでも一つの参考としてご活用ください。 詳しくはこちら
結城友奈は勇者であるのレビュー・感想/評価に関する疑問点、ご質問などがございましたら こちらのフォーム よりお問い合わせください。

tagが他の作品に書いているレビューも読んでみよう

ページの先頭へ