おぬごん さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
「青春」の爽やかさ&ほろ苦さの描き方は素晴らしいが、終盤の展開の雑さが…
鎌倉を舞台に合唱を通じた少年少女5人の青春を描いたPA WORKSのオリジナル作品
放送当時も注目していたのですが、バイトと時間が重なってた関係で録画が溜まり、3話くらいで止まってしまってました
この度、Abema TVの一挙放送で4年越しの視聴です(4年も前になるんですね…)
メイン5人の境遇や心情を描いた10話くらいまでは、酸いも甘いも、爽やかなのもほろ苦いのも、まさに「青春!」という感じで素晴らしかったと思います
大好きな歌での大きな失敗と仲間との軋轢、それをどうにか挽回したい気持ち
反抗期気味だった中学生時代の親とのやりとり、失った後に気付く後悔
「好き」だけではどうすることもできない現実との直面、親との衝突
ヒロイン3人の青春らしい悩みが、他の4人との部活動「歌」を通して少しずつほどけていく流れは素晴らしかったですね
また話しが重くなりすぎないよう、男2人に大きな問題を与えず、明るいキャラとして描いたのも上手かったと思います
恋愛描写をほぼ描かなかったことからも、話のメインストリームがあくまで上の問題の解決だということを示す潔さが感じられました
…個人的には高校生の男女が集まってるんだから、もっと色々あって欲しかったですけどねw
それでいて和奏が作曲に苦心する姿が描かれたのは、音楽を主軸とする作品としての姿勢を感じられました
他のアニメだと、作曲描写ってかなり省かれがちですよねw音楽経験者は誰でも作曲できると言わんばかりでw
またメイン5人と対比される、大人たちの描き方も素晴らしかったですね
メインヒロインと言っても差し支えない(?)教頭をはじめ、和奏や紗羽の父親にもグッときました
ただ11話以降、物語にあからさまな「悪役」が登場する展開にはかなり雑さを感じました
やりたいことは分かるんですよ
あのまま大団円で終わるだけでは物足りないので、一つ大きな障害を用意して、キャラたちの物語を通じた成長を描く…っていうのは王道の落としどころだと思います
ただ、もうちょっと上手くやれなかったものかなあ…と…以下ネタバレ含む違和感
{netabare}
・文化祭の準備が始まるまで廃校を隠していた癖に、明らかになった途端に超性急に工事が始まる
・「部室の棚の一番上」なんて分かりにくい所にある文化祭の小道具を確認もせず勝手に廃棄する業者
・そもそも白浜坂高校が、劇中の描写では廃校するほど生徒が少なくなっているように見えない。帰国子女のウィーンの受け入れまでしてるくらいだし。
・「地域とも上手くやっていきたい」と言ってるのに、文化祭の強制中止や工事の性急な強行を行なう、休日の登校を完全禁止するなど「白高出身者の多い」地域の反発を招くようにしか思えない理事長の言動。
・鎌倉という津波で壊滅した歴史がある地域で、海の見える地域の高台にあり避難場所としての価値がある校舎まで取り潰しマンションを建てるのはかなり無理がある。
{/netabare}
音楽は作品の根幹をなすだけあって、劇中歌がほとんどオリジナル曲だったりと力が入っていたとは思います
…が、せっかく合唱がテーマなので、もうちょっと定番の合唱曲とか、1話の「リフレクティア」のような既存曲など、キャッチーな選曲があってもよかったんじゃないかと思います
バンドやアイドルなどのポップスやロックは、料理にたとえるならいわばジャンクフードです
味さえ良ければ誰にでもガツンとインパクトを与えることができます
一方で合唱はほとんど誰もが経験してる分、その音楽としての良さはあまり意識されていないという意味で、家庭料理といったところでしょうか
誰も見たことの無い料理より、いつも家で食べてる料理や普段は店でしか見ない料理が食卓に並んだ方が興味を引けたのでは無いかと思います
もちろんここぞという場面のためにオリジナル曲を使うのは効果的ですが、音楽そのものに分かりやすいインパクトがない分、そうでない場面では既存曲を上手く使っても良かったんじゃないかな~と
これは本作品と同じく浜口史郎が音楽を担当する橋本昌和監督のPA WORKS作品「ハルチカ」にも言えることだと思いますが、劇中歌(曲)の使い方がイマイチ上手くないように感じています…個人的な意見ですが
「青春」の描き方は素晴らしかったのですが、終盤の展開の雑さや、音楽の使い方の物足りなさなど、勿体ないな~という印象の作品でした