あんにゅい さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
幻想的な空気感が漂っているのがおもしろさの一部かなと思って
クラナドは個人的にkey作品のなかでも特別好きな作品です。
クラナドで主人公朋也が出会う女の子たちは、誰が朋也と恋愛関係になってもおかしくないのですが、その中で一人が選ばれます。それが物語冒頭から登場するメインヒロインの渚ですが、クラナドではどうして彼女だけが主人公にとって特別な関係になるのか?に必然性が与えられています。
クラナドとアフターストーリーを通じて何度か語られる「幻想世界」(ガラクタで組み上げられたロボットと謎の少女のいる世界)が、ある悲劇を回避するために設けられたSF的な装置なのですね。この装置を利用して朋也は悲劇を回避しなくてはならない使命を帯びています。こうした設定によって、ラブコメあるいは純愛モノのテイストに幻想的な奇跡の物語を交えています。主人公が奇跡を起こさなくてはならないことが、より感動的なおとぎ話へ昇華しているように感じます。
幻想的で儚いうたかたの夢のような雰囲気がクラナドの印象的なところですね。それは幾度か起きる奇跡によって構成されます。
「奇跡」が劇中起きることがあり、おおむねその結果失われた大切な何かが戻ってきます。具体的には幽霊として現前する風子/志麻や、街が世界を作り変えてしまうことなどが挙げられます。「奇跡」が起きている間は大変満たされたきもちになりますが、「奇跡」はほとんど一時的なもので、なんらかの目的を果たすと解消してしまいます。そして、狐に摘まれたような気分のうちに別の現実が再構成されている、もしくは元に戻っている。まるで夢を見ていたようなことが、日常の中で密かに起きます。
「奇跡」をご都合主義だといいたいわけではなく、むしろそれによって何かと重くなりがちな人生・家族といったテーマを物語るのに、ロマンティックな彩りを添えています。また逆に、大胆な「奇跡」によっておとぎ話と解釈できるので、都合のいい偶然を積み重ねたいわゆるご都合主義とは違いますね。
クラナドはアフターストーリーと合わせて50話近くありますが、そうとは感じさせない面白さと感動があります。テンポの良さ、動きの快感、表情の豊かさといった京都アニメーションが得意とする表現に酔いながら、原作が持つ物語の感動を味わうことができる傑作だなあと思います。