kurosuke40 さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
運命の人は”運命の人だから”惚れるのですか?
小説未読。映画だけ。
エンターテイメントとしてはとても面白い。
ただ、いろいろと過程がなくて、感情移入できずに
惚気た二人の物語を他人事のように見ていたような……。
新海さんはインタビューで
「若い観客の多くは、まだ自分の好みが定まっていません。何が好きなのか分かっていないからこそ、その材料を提供するような作品にしたいと思いました。(中略)ええ。「面白くても散らかっていない」と言いますか、面白いのが大前提で「詰め込み気味だけど、形は整えられていてその中に収まっている」というイメージです。そのため、映画の見方がある程度定まっている人や、好みが定まっている年配の方にとっては「少し違う」と苦言を呈されてもおかしくはありません。」
うん、こんな感じの映画でした。
面白い! そして以下が私の苦言になります(笑)
瀧と三葉、お互いが相手に惚れる理由とタイミングが明示的に示されなかったので、
いつの間にか相思相愛になって話が進んでいってしまったのが私には合わなかったかな。
「人の人間関係滅茶苦茶にしやがってー」と互いに罵り合っていたあたりで、
(まぁ実際に無茶苦茶にした部分もあるだろうけど、)
三葉がミキ先輩と瀧の仲を深めたり、瀧が陰口に机を倒して威圧したりして
お互いのことを知りつつ、ちょっとずつ相手が自分の人間関係を改善していってくれてる。
その過程で恋慕の情を抱いたのだろうなとは想像はできる。
ある程度想像に任せる部分はあってもいいと思うけど、
それでも、ミキ先輩との仲の進展における、三葉からの瀧への要素はまだわかりやすかったのだけど、
瀧によって三葉の人間関係がどう変わったのか、またその他惚れた原因っぽいものの描写が薄くて、
特に三葉が理由なく唐突に惚れているように見えてしまった。
描写が薄かったために
「男女が入れ替われば互いに惚れる。古典にもそう書いてある。いいね?」という
ある種の自然法理(自然だから当たり前という論法)で話が進められて、
いや、ちょっと待ってくださいよ、例えば仮に私がイケメンに生まれて、
三葉と入れ替わっても、多分三葉は私に惚れないし、私も三葉に惚れないと思いますよ(もちろん瀧にも)
と反論を返さずにはいられず、どうも瀧にも三葉にも感情移入できませんでしたね。
故になんか相思相愛のカップルがいるんだなーと他人事のように見てしまっていたような気がします。
だから恋愛要素として二人に盛り上がりに、あんまり一緒に盛り上がれなかったかな。
またSF要素としての物語の最大の難関であろう、三葉父の説得もカットされ、
ここも過程はないが、結果だけがあって……。
恋愛要素として山場は終わったし、エンタメのテンポ重視だし、
父の描写が少なすぎて”視聴者を”説得できる説得方法もなさそうでし、
でカットの意図はわかるのですが、
恋愛要素に一緒に盛り上げれなかったので、
こっちも過程がないとなるとなんか物語として落ちた感じがしませんね。
色々と不満を書いてますが、
エンタメ的にはとてもよくできていて、面白いのは確かです。
小説を読んで過程を埋めることができれば、結構好きな作品になるかも、と思いますね。
(できれば映画内でやってほしかったですけど)
また最後の最後、
あんなに互いに探し合っていたのに、一度すれ違ってから話しかける、
あの冗長で情緒的な場面がたまらないですね。
ここは特に今までの新海さんっぽい。
あの場面だけで見てよかったと思います。
昔はエンタメ性重視してたのに、いつの間にか私の趣向も大きく変わっていたんだなと気付かされました。
女々しくなったね。後悔はしてない。
ご精読ありがとうございました。