退会済のユーザー さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
小説や洋画的な目線で観るべきアニメ
禁酒法時代のアメリカを舞台にしたイタリア系マフィアのアニメ。ある男の復讐と友情を描いた91日間の物語。
見る前に注意してもらいたいのは、この作品はあくまで復讐と友情をテーマにしているということ。マフィアの暗~い裏事情や緊張感のあるアクションを描くことに力を入れた作品ではないので、どこかの洋画とこのアニメを比べるのはお門違い。また、アニメはアニメでも少しドラマに近いといった感じ。
とにもかくにも、頭を空っぽにして見るような内容ではない。この作品の内容を全て理解するのは相当難しい。人の捉え方によって話の色や価値観が変わってくるから人に勧めるのには不向きなアニメだと思う。
大体の人は主人公がどう復讐していくか、手紙を出した人物は誰かという展開を追った楽しみ方をしているので描写で終わったラストには物足りなさを感じているかもしれない。ネットには既にその考察で筋が通ったものが転がっているが、それを見て終わるのではなく、個人的にはキャラの心情に注目してほしい。
キャラの心情に関しては直接的な表現がほとんど避けられていたので細かな表情の描き分けや暗喩、台詞を元に、ストーリー全体となぞらえながら読み解いていくことになる。
最初から自分で考えることを放棄してしまえばそれほど感情移入はできない。最近のアニメは何も考えなくてもキャラが勝手に感情を吐露してくれるのでわかりやすいが、この作品は自分で考え、人と意見を交わすことで“そんな考え方もあるのか”と色んな可能性を広げ、より深みを増してくれる。そういう作りになっている。日常系アニメのような感覚で見るのはおすすめしない。
例えば
{netabare} 10話コルテオの「どのみち僕は…」という台詞の後に続く言葉なんかも考察してみると面白い。
どのみち僕は…
①ここへ戻ってきただろう
②一人で生きるつもりはなかった
③いつか見つかって殺されていただろう
…もしかしたら他にも考え方があるかもしれない。
それまでのストーリーやキャラの心情の捉え方によってどれだと思うか、人によって意見が分かれるところ。{/netabare}
ただしキャラの心情を考察する時は、あくまでストーリーに基いて客観的に追っていかなければエンディングが変わるので注意したい。視聴者にお任せエンドだと思った人もいるが、最後の暗喩は確かに1つのエンディングを描いている。どうしても答えを見つけられなかった人は、小説の下巻ではキャラの心情が細かく描かれていたのでその流れではっきりとわかるはず。しかしここまで考える余地のあるアニメも珍しいのでどれが正しいのかを抜きにしても、色んな人の考えを読んでみた方がよりいっそう楽しめる。
また、数々見受けられる暗喩や対比表現はさすが洋画を研究して作られただけのことはあるといった感じ。普段洋画をよく見る人ならすぐに気付いたかもしれない。同じ台詞でも心情の移り変わりがあるのでそれに関しては小説を読んでいる人は楽しめそうなところ。
みんなで良い作品にしようと協力しあって作られたアニメのように感じられた。
思ったより細かい工夫が凝らされているので暇な人は張り巡らされた伏線や制作の遊びもネットで検索してみるといい。