退会済のユーザー さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
実体験をファンタジー化した作品
現実でニート生活を送っていた菜月昴が突如異世界に迷いこんでしまう物語。
私はアニメ作品をよく見ますので、始まった当初は「ああ、また似たような異世界ものかぁ」と大した期待もせずに見ていました。
突然変な発言や行動をする主人公。なんだこいつウザすぎる。なんでこんな奴が主人公なんだと思いました。
しかし、話が進むにつれて小さな違和感を感じながら、徐々にこの物語が何なのかが分かりました。
これは「自分だ」と。
この菜月昴という主人公は、とても臆病な人間です。人とのコミュニケーション能力に欠け、自分の気持ちを圧し殺し、少しでも強く見られようと虚言をはき、本心を打ち明けない弱い人間です。
私と全く同じでした。
人に弱く見られたくないから明るく降るまい、弱く見られたくないから虚言をはく。
昴が素性を話せない理由は、異世界に来てから魔女の呪いを何者かにかけられ話すと死ぬ、又は他の人に災厄がもたらされるためでした。
これは私の解釈ですが、本当の事を言ってしまった時、良く見せようとしていた自分が壊れてしまう、自分を尊敬していた人達を裏切り幻滅されてしまうという恐怖心。虚言癖に苦しむ人達の比喩なのではないかと感じました。
作中で、昴は自分の気持ちを守るために、強く優しく正義感のある自分を見せようと、エミリアや他の人達にその思いを押し付けようとしてしまいます。
その結果拒絶され、薄っぺらな自分の人間性をより深く思いされることになりました。
私にも全く同じ経験があり、見ていてとても辛かったです。
自分を守ることしか考えていない人間は人を幸せにする事はできないとここで初めて学ぶんですね。
またペテルギウスに目の前でレムを惨殺されたときの昴の絶望感はどんなに頑張っても認めて貰えない現実の体験を表しているようでした。
自分の無能さを知り、絶望した昴はレムと共に逃げようとしてしまいます。
目の前の現実に耐えられなくなったから会社を辞めたいという気持ちの比喩のようにとらえられます。
しかしレムは昴の逃げを許しません。
彼女はたとえ自分に自身が無く、虚栄で行動したり、虚言を吐いて強く見せようとしていた弱くダメな人間の昴であったとしても、自分を救ってくれた事は事実であり、そんな昴を尊敬しているということを伝えます。
弱くてもダメな人間でも、いつもそれを見てくれている人はきっといる。
ダメでもいい、虚言で自分を守るのではなく、ゼロから本当の自分を見せる事の大切さ、