「91Days(ナイティーワンデイズ)(TVアニメ動画)」

総合得点
76.8
感想・評価
831
棚に入れた
3947
ランキング
671
★★★★☆ 3.7 (831)
物語
3.8
作画
3.6
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.7

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ネタバレ

みかん さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

それぞれの複雑な心情が絡んだヒューマンドラマ

どうしてもこの作品の感想が書きたかったので登録。あらすじはすっ飛ばしてネタバレやキャラの心情を中心に自分の解釈を書きます。内容が深く、色んな考え方ができるので間違っているかもしれません。あくまで個人的見解なので、参考程度に。

◆「急かすなよ。ものには順序がある」とアヴィリオが隣の席を見た謎
{netabare}これに関しての考察はあまり見かけなかったので一応。ここでの順序とは人を殺す順序。隣の席を見たのでまず隣の席の人間を殺す。ヴィンセントとネロの隣の席はデルトロとバルベロ。まずデルトロを殺し、その現場をバルベロに発見させる。さらにガンゾの名前を書かせた手紙を見せることにより、後から呼ばれたガンゾがバルベロを撃つ。{/netabare}

◆アヴィリオとコルテオの友情①
{netabare}「だって俺達、兄弟だろ?」1話のアヴィリオの台詞。
この時点でアヴィリオは復讐しか頭になく、コルテオは利用するために必要程度にしか思ってなかった気がします。根拠としては、友達の母が死んだことを知っても、それに関して気休めの言葉をかけようという気もなく、床にタバコを落として踏んでいますので。また、セルペンテの死体が消えた時、「お前じゃないよな?」と少なからず疑いました。その後もまるで子分のような扱いです。…たとえ昔からの友情が残っていたとしても、極力マフィアに関わりたくないと思っていたコルテオを言いくるめてファミリーに入れるくらいには軽かったでしょうね。

7年間で荒んでしまったというよりかは、コルテオの「僕たちは今日から兄弟だ」という言葉がアヴィリオの心には届いていなかったのではないでしょうか。7年前、コルテオの家を出る時には既に2人の気持ちはかけ離れたところにあり、その間には溝ができていたと思います。だからこそアヴィリオは「だって俺達、兄弟だろ?」と残酷なまでに作った笑顔をコルテオに向けれたのかと。7年前のあの台詞が軽い気持ちで吐いた言葉じゃないなら、もちろん俺の復讐に協力できるよな?という半ば脅迫にも感じられる言葉でした。 {/netabare}

{netabare}それでもコルテオはアヴィリオを献身的に友として思い続けていました。小さい頃の話に戻りますが、ろうそくの火を消すシーンがありましたね。“熱くない”という話は知っていても、いざやろうとしてみると怖くてできない。そんな自分を助けるようにさっとアンジェロが消します。そういう彼の勇敢なところにコルテオは憧れているような表情をしていました。さらにアンジェロは消したことはなかったと言う。アンジェロが自分の話を信じて何てことなしにやってのけてしまうんだから、本当に慕っていたんでしょう。「兄弟だ」と言ったのもコルテオの心からの言葉だと思います。だから最初こそ復讐に否定的でアヴィリオを止めようとしました。が、自分の言葉をまったく聞き入れてくれなかったので諦めて協力します。 {/netabare}

{netabare}そんなコルテオでしたが、アヴィリオがネロと2人旅する方向に話を持っていき、ライターに火をつけた時に垣間見えた笑顔にはさすがにゾクッとしたような表情を見せました。昔の優しい面影がなく、本当に復讐のことしか考えてないアヴィリオに恐怖を感じたんでしょうね。{/netabare}


◆ネロとアヴィリオの友情(ネロ視線)
{netabare}ネロはアヴィリオの頭の良さや度胸を気に入っていました。あとはアヴィリオが向ける鋭い目(まぁ憎しみなんですけど)をじっと見つめて強い意志か何かを感じ取ったような表情をしたり、一番買っていたのは悪餓鬼のような性格の“よさ”(アヴィリオの運転で看板持ちのお兄さんが轢かれかけ、「気を付けろ下手糞!」と煽られた仕返しに帰りにわざと同じことをした一件)でしょうか。また、子供たちが帽子にお菓子やボタンなどを入れて笑っていた様子に、「いつも無表情なのにこんな顔もできるんだな」と少年らしさも感じていたと思います。{/netabare}

◆ネロとアヴィリオの友情(アヴィリオ視線)
{netabare}アヴィリオも同じように、一緒に過ごしていく中でネロの人間性に惹かれていきます。2話で既に友情が芽生えはじめていたように思います。ネロといるアヴィリオは少年らしさがでるというか、アヴィリオという仮面を被っているけどアンジェロっぽさが出るんですね。小さく笑顔を見せたり、ジャグリングの練習もしたりと。コルテオといるとどうしても自分は毅然としなければいけないんだ、と肩を張ったような態度でいるのでネロといる方がまだ自然体で入れる気がして楽だったのではないでしょうか。

もちろん憎しみも切り離せないので、後にその2つの感情に葛藤しアヴィリオは苦しみます。「すぐに(死んでいった弟に)会わせてやるよ」や「気持ちを込めたからな(ネロ・ヴァネッティ。この時を待っていたの台詞)」もありました。口では憎しみの籠った台詞を言っていましたが、あれは戒め的な意味で、自分に“復讐心を忘れるな”と言い聞かせていたような気もしました。{/netabare}

◆2人の友情に対するコルテオの心情①
{netabare}ネロは色んな人から好かれています。自然体でいて人気者、といった感じでしょうか。社交的で、非常に尽くされるタイプです。しかしそれとは逆にコルテオは尽くすタイプ。どんなに相手のことを想って尽くしても、相手は自分と同じくらいには想ってくれません。

アヴィリオがネロと帰ってきた時に、俯き気味ではありましたが心からの笑みが覗いて、とても驚いていました。7年ぶりに会って以来、コルテオには一度も見せてない笑みだったんでしょうね。コルテオは誰よりもアヴィリオのことを知り、友として思っていたのですごくショックだったと思います。よりにもよってアヴィリオが一番心を開いたのは自分ではなく、短い期間過ごしただけのネロだったので。仇の相手の隣に居場所を見出すなんて皮肉な話ですね。「復讐するんじゃなかったの?」と思わず尋ねてしまったのも、それに対する嫉妬でしょうね。それは後にわかります。 {/netabare}

◆アヴィリオとコルテオの友情②
{netabare}フラテを撃った後、ひどく辛そうにしていたネロ。アヴィリオが「今日から俺が兄弟だ」と声をかけました。自分がかけられた言葉を他人に安売りできるんですから、やっぱりコルテオとの友情は薄い気がします。この作品は友情の作品なので変に思わないので欲しいのですがわかりやすく例えるなら、普通他人から受けたプロポーズの言葉を、そのまま自分が平気な顔して違う人に使えるか、ということです。もちろんコルテオは2人のやり取りを聞いていますから、すごく複雑な気持ちだったと思います。デルフィの件でアヴィリオに「すっかりマフィアが板についてきたじゃないか」と皮肉を言ったのも、そのことに対するちょっとした仕返しでしょうね。この時からだんだんコルテオの精神状態は不安定になってきます。 {/netabare}

{netabare}アヴィリオはそんなコルテオのことも知らず、金を渡して「もう俺に関わるな」と言いました。この時の台詞はコルテオをこれ以上巻き込まないため、というよりはコルテオの精神が限界であることを悟ったからだと考えました。マフィアの世界は厳しいので足を突っ込めば命の保証はありません。今までに死にかけたこともあったので、今更“巻き込まないため”というのは綺麗に解釈しすぎな気がします。だったらなおさらファンゴにすがる前、小舟で「お前だけ逃げろ」と解放したはず。「お前が巻き込んだんじゃないか」と本心をぶちまけたコルテの台詞はもっともでした。今まで流されるがままに従ってきたコルテオがそんなことを言ったので、アヴィリオもようやくコルテオのことを考え出した気がします。というより、その台詞によってどれだけコルテオが自分のことを思ってくれていたのか気付いたんじゃないでしょうか。 {/netabare}

{netabare}しかし2人の空いた溝が埋まる前に、コルテオがファンゴにネロの情報を売りました。自分の7年前かけた言葉を安売りされたこと、復讐すると言っているのに仲良くしているように見える2人、今まで献身的に協力してきたにも関わらず、札束を渡されあっさりと切り捨てられた自分。相当ストレスを溜め込んでいたので魔がさしたんだと思います。引き返せなくなり、ファンゴを殺すところまで堕ちました。結局そのことがネロ達にバレて殺されることに。一見表情には出していなかったアヴィリオですが、後でテーブルを蹴ってイライラしていました。自分が巻き込んだせいで幼馴染みが殺されるんですから、やりきれなかったと思います。 {/netabare}

{netabare}チェロットに「何でファンゴさんと手を組んでネロを殺そうとしたんだ」と訊かれた時には、すべてを悟ったんでしょうね。そこからこっそり助けようと働きかける様子がありました。手遅れになってから幼い頃築いた友情を取り戻したということでしょうか。結局コルテオとネロ、どちらを選ぶかという選択を迫られますが、一晩考えた結果、アヴィリオは時間までにネロを殺さなかったとしても、コルテオは殺されないという推察をしたんじゃないか、と解釈しています。{/netabare}

◆アヴィリオとコルテオの友情③
{netabare}そしてコルテオこっそり船で逃がすことになりました。アヴィリオがコルテオに「似合ってる」と微笑みかけたので、ここで友という認識があることをお互いに実感したんじゃないでしょうか。その後アヴィリオの住居に帰り、一緒に幸せのひと時を過ごします。アヴィリオがシカゴに行くのを見送る時なんかも2人とも笑っていました。まるで幼い頃に戻ったかのようでした。コルテオとしては学校なんて行けなくていいからそのままマフィアを抜けて2人でやり直したい、新しい生活を送りたいと思っていたに違いありませんが、アヴィリオの復讐心はどうしても消えなかったんですね。その前日の夜、一人酒をしていたアヴィリオに背を向けベッドで目を開けていた顔は、そのことに気付いていたからだと思います。{/netabare}

{netabare}ところがコルテオを逃がしたことがばれて、アヴィリオの命が危ないという電話が来たところでコルテオは戻ろうとします。アヴィリオの家賃を回収していたおばさんもアヴィリオとの付き合いをやめた方がいいのでは、とさりげなく提案しますが、コルテオがどこか寂しげに言います。「僕は…僕はアイツの兄弟なんです。ずっと、何があっても」7年前、コルテオが「たった今から“僕達”は兄弟だ」と言ったのに対し、ここでは“僕は”になってるんですね…。自分だけがそう思っている、と思っていたからじゃないでしょうか。コルテオはあの日の言葉通り、ずっと兄弟として接してきた。今でこそ友という関係に戻れたものの、1話でのアヴィリオのあの様子からその言葉は届いていなかった、つまり自分はそう思っているけど、アヴィリオはそうじゃなかったと思ったからあえて“僕は”と言ったんじゃないでしょうか。{/netabare}

{netabare}バルベロはアヴィリオとコルテオは「グルだ」と言いましたが、何故そう思っていたのかが小説版では詳しく明かされているみたいですね。アヴィリオに危険が及ばないように復讐のことは伏せ、「僕はアヴィリオを救い出したかった。こんなくだらない所から」と言ったコルテオの言葉は、彼の本心だったに違いありません。バルベロに向かって「アヴィリオが邪魔なんだろ。ネロの右腕の座を奪われるのが」と言ったのは、ネロとアヴィリオが仲良くなる光景を見て嫉妬した自分と投影していると思います。もちろんバルベロもそう思っていたんでしょうが、それだけではありません。{/netabare}

{netabare}結局アヴィリオがコルテオを撃つことになり、コルテオは友のために死ねるなら、とコルテオはすべてを受け入れていたようでした。「もう邪魔する奴はいない」と言った邪魔する奴の中に、自分も入っていたのだと思います。一方でアヴィリオは、「復讐するためにここにいる…。それは終わってない」と再び自分に言い聞かせるかのように言っていました。ここで復讐をやめ、自分のやってきたことがすべて無駄だったと思いたくなかったのかもしれません。今更引き返せませんし、一度マフィアに足を踏み入れた時点で幸せな未来はなかったと思いますが。苦しむアヴィリオに、「だって僕達、」とコルテオが幼い頃からやっていた仕草を見せました。これは2人の間にだけ伝わる別れの挨拶だったんですね。アヴィリオはコルテオが次に言葉を紡ぐ前に撃ちましたが、恐らくその後に続くであろう“兄弟”という言葉をコルテオの口から聞きたくなかったのかもしれません。代わりに「だって俺達、兄弟だもんな」とアヴィリオが紡いだことによって、2人の友情がやっと繋がった気がしました。「すぐに会えるさ」というのはアヴィリオが腹を括り、死ぬ覚悟ができたということでしょうね。それにしてもコルテオの幻覚を見て話しかける姿はとても痛々しかったです…。{/netabare}

◆ネロがアヴィリオを撃ったかどうかの解釈
{netabare}率直に言います。私は視聴者にお任せしたエンドとは思いませんでした。ネロがアヴィリオを撃ったということで自分の中ではすっきりしています。話の流れ、心情、描写などすべてを考えた上で「生かす」という道にはどうしても辿り着かなかったからです。あぁ、これも1つの考えなんだろうなぁと読んでいただければ、と思います。{/netabare}

①描写
{netabare}砂浜の足跡です。ネロが陸側を、アヴィリオが海側を歩いていました。最後の最後に映し出された足跡は、何故かネロのものがアヴィリオの先を行っています。そしてその足跡は波によってかき消されてしまいました。これは2人の命が消えることを表し、アヴィリオは死ぬけどネロはそれより少しだけ長生きできた(後にすれ違ったガラッシアの車の追っ手に殺される)ことを表している、と考えられます。また、気になるのがアヴィリオを殺す時の景色の描写。小説ならどんより曇った空や海が暗い様子は普通、明るい未来(生存)へとは繋がりません。この作品はどうもそう言った描写が丁寧に描かれているのであそこもこだわっていると考えるのが普通です。{/netabare}

②最終話の次回予告
{netabare}ネロのナレーションで『ここは最果て、地獄の入口。後にも先にも道はなし。さぁアヴィリオ、すべてを終わらせよう』 これはまさにアヴィリオの人生をあの砂浜で終わらせようと言っているかのような口ぶりです。後にも先にも道はなしと続いているのでなおさら。同時に、やはりネロも追っ手に殺されるのではないかというエンドも匂わせていますね。{/netabare}

③ネロの立場
{netabare}ネロはマフィアのボスです。あそこでアヴィリオを許して生かしてしまうのは、死んでいった仲間達のことを考えれば有り得ません。{/netabare}

④アンジェロという名前
{netabare}アヴィリオの本名ですが、イタリア語で天使という意味を表す言葉です。これは偶然ではありません。他の人達も調べてみるとちゃんと意味があります。フラテなんかはネロの弟でしたが、兄弟という意味です。そう考えてみると、復讐に囚われ堕ちてしまったアンジェロは堕天使になり、ネロが“友”としてアヴィリオを殺すことでようやくその苦しみから解放され、アンジェロとして家族やコルテオのいる天国(空)へと還ったと考えることもできます。{/netabare}

⑤話の流れ
{netabare}焚火のシーンでアヴィリオとネロが腹を割って話し合いましたね。そこで今までは無表情に近く可愛げのない奴だと思っていた子供が自分の前ではじめて感情的になり、「俺をあの時(7年前)殺しておけばよかっただろ」と涙を流してアンジェロの一面を見せます。大人びてはいるけどアヴィリオだって本当は普通の子供だった。弱さを見せ、人前で泣くことのできる子供だったのに、7年前自分達のやったことがアヴィリオという復讐に生きる男を作り出してしまった。過去を振り返り、今までどれくらいアヴィリオが苦しんできたかを知ります。アヴィリオが寝静まった後暗がりにあったネロの顔が月に照らされた描写は、憎しみという暗い感情を捨て、アヴィリオを友として撃つ覚悟ができたということなのかなと思いました。そして最後、二人の間では直接的な死の会話は一切交わさず、お互い心が通じ合っているかのようにアヴィリオはネロを追い越すと姿勢を真っ直ぐ正して歩き、ネロは黙って銃を構えました。制作の方がどうもマフィア関連の映画などが好きみたいなのですが、この時のアヴィリオの行動は銃を構える相手に姿勢を正して背を向けるというのは相手に的を狙いやすくさせるため、という洋画でよく使われる演出です。こうした何も言わずともお互いやることはわかっている、みたいな流れが2人の強い絆を描いているように思えました。ネロは人を殺しておいて最後パイン缶を見て何で笑えるんだ、と思うかもしれませんが、憎しみを捨てアヴィリオを友として撃ち、苦しみからやっと解放してやれたことで7年前の落とし前をつけたことが笑える理由の根底にあるんだと思います。そう考えると、パイン缶はもしかしたらアヴィリオへのお供え物かもしれませんし、憎しみによって色褪せることはなかった2人の思い出(友情)の象徴なのかもしれません。{/netabare}

~話の始まりから終わりを全体的に見てみると~
{netabare} そもそも始まりはネロが銃弾を外したことなんですよね。ラグーザ一家襲撃が初仕事で「人を撃つのが怖かった、誰も撃てなかった」と語っているので、当時は情けないながらも人を殺せなかった自分の不始末から始まったのだから、自分が撃って終わりにするのが美徳です。自分のケツは自分で拭く(始まりも終わりも自分の銃弾)。{/netabare}

{netabare}また、「今なら撃てるだろ?あの時の子供を」と言ったアヴィリオの台詞。どうしてあんなことを言ったのか、と考えた時にこの最後のシーンの伏線だった思っても筋は通っています。7年前の再現をするならば、あの時怖気づいて撃てなかった子供を、ネロが目を逸らさずにしっかりと見据えて撃つことに意味があるのではないでしょうか。{/netabare}

◆アヴィリオとネロの友情
{netabare}ネロはアヴィリオを撃つ前に、「生きることに理由なんていらねぇ。ただ生きるだけだ」と言いました。殺すつもりなら、どうしてアヴィリオに生きる道を示すような言い方をしたのって思った方もいるかもしれません。それについて私が考え方は二つあります。{/netabare}

{netabare}一つ目に、ネロがバルベロに「アヴィリオの生きがいは俺が与える」と話していた台詞の回収という線です。もしこちらだとすると、演出の上で“こうなってしまった以上、もう何もかもが遅い”という虚しさを強調し、ヴィンセントやアヴィリオの言った「すべてが無駄ごと」という台詞がより際立ちます。{/netabare}

{netabare}そして二つ目に考えられるのが、焚き火のシーンでアヴィリオがネロに「復讐をしても何も残らなかった(もちろん、生きる理由も)」と言ったことへの返答だという線。あの時ネロはヴィンセントと同じく「すべてが無駄ごと」と言ったアヴィリオに「そんな言葉で片付けるな」と感情的になって怒りをぶつけていたので、冷静になった今、生きる気力を失っているアヴィリオに改めてきちんと伝えておこうと「お前はああ言ったが、」というニュアンスで言ったのかな、と。{/netabare}

{netabare}何しろアヴィリオがすべてを失ったように、ネロもアヴィリオによって多くのものを失っていますので。アヴィリオが「7年前のあの日、お前が俺を殺してれば…」と言った言葉には、殺してればの後に“お互いこんなに苦しまなかったのに(=いっそ殺してくれていればよかったのに)”という言葉を補えそうだと考えると、あの時点で2人は似たような境遇にあるので、その前のネロの「何で俺を殺さなかった」と言う台詞にも、同じニュアンスが含まれているように感じました。まさに生き地獄というやつです。結果アヴィリオは復讐という目的でしか生きられませんでしたが、同じ境遇に立たされたネロは、撃ち殺す前に自分なりの答えをアヴィリオに伝えておきたかったんだと思います。{/netabare}

可能性としては後者が近いと思いますが、他にもっと考え方があるかもしれません。

そして最後に気になるのが、アヴィリオの「俺がお前を殺したくなかったのは、殺したくなかったからだ」という台詞。

{netabare} ここで例え話を挟みます。今から世界が滅びるとして、あなたには昨日喧嘩した友達がいました。最期だと言うのに、仲直りもしないまま大事なことを伝えず死ぬでしょうか?…回答は人それぞれですが、私ならきちんと「ごめんね」と謝っておきたいです。きっと後悔しますから。

最後まで自分と向き合おうとしてくれたネロだからこそ、アヴィリオも死ぬ前に本音を打ち明けようと思ったのではないでしょうか。焚き火のシーンでは「苦しめるため」なんて答えちゃってますからね。最後までネロが誤解したままアヴィリオを殺してしまえば、自分の見る目なさ故にファミリーを壊滅させてしまったということや、自分の一方通行な友情だったという悲しみ故にネロは救われなかったかもしれません。もしネロが撃つのを躊躇ったのがあの一言のせいであったとしても、きっとそのおかげで撃った後の彼の心は軽くなったんじゃないかな、と思います。{/netabare}

こんなに考えさせられた作品にはもう二度と会えないかもしれません。このような素晴らしい作品を制作してくださりありがとうございました。

投稿 : 2016/10/18
閲覧 : 130
サンキュー:

7

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