chariot さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
しっかりと練られたストーリーと全体に漂う哀愁が秀逸な作品。
オリジナル作品、全12話。
アメリカの禁酒法時代(1920~1933年)を舞台とし、家族をマフィアに殺された少年・アヴィリオの復讐劇を描いた作品。
とても面白かったです。
復讐の対象者の情報を得てから闇雲に突っ走るではなく冷静に策を練り、完遂に至るまでの91日間。
「あと何日」などの説明はないのですがタイトルの「91Days」がこの期間を指し、序盤の会話の中で建設中の劇場の完成まで三ヶ月という事でフィナーレがオペラ劇場のこけら落しになるであろう事も理解出来る訳です。
無駄のない洗練されたシナリオとキャラ。
復讐に燃えながらも計算高く、立ち回りの上手いアヴィリオ、優しく穏やかでアヴィリオを本気で心配する親友コルテオ、復讐対象でありながらアヴィリオを信頼してしまうほど人のいいマフィアの若頭ネロ。
しっかりとした性格付けが出来ている為に状況に応じての彼らなりの葛藤が伝わりやすく、マフィア映画によくある「けじめ」のつけ方や個々の思いの深さに切なさを感じながら観終えられました。
一番好きなシーン。
{netabare}最終話の「だったら俺をあの時殺していれば良かっただろ」とアヴィリオが泣くシーンです。
復讐に囚われ、それしか生き甲斐を見出せなくなったアヴィリオのただただ辛いだけの7年が、一人だけ生き残ってしまった悲しみが、誰にも見せられず抑えていた本音が、溢れ出す…。
捻りはないのに非常に重く突き刺さるシーンでした。{/netabare}
最後の結末は?
散々ドンパチやってバンバン人が死んでいる作品なのに肝心な結末はぼかして終わってます。
人により結末の捉え方は違うかと思います。
僕なりに一番納得の行く結末は
{netabare}アヴィリオはネロによって殺され、ネロはガラッシアファミリーによって殺された、です。
まず僕には復讐者は死をもって償うべきという個人的な信念があります。
ハッピーエンドは認めません。
(まあ、この死はアヴィリオにとっては望んだ形だと思いますが)
ネロは先に挙げた好きなシーンで自分が撃てなかったせいでアヴィリオが苦しみ続けて来た事を理解しているので、殺したくない気持ちはありながらも過去を精算し解放してやる意味も込めて今度はしっかり引き金を引いてやったのではないかと思います。
またネロの方はかなりの憶測ですが、最後にガラッシアの追手と思われる車に見つかっていますのでそう遠くないうちにドン・ガラッシアの敵討ちに遭うので生存の可能性は低いと思います。
助手席にある缶詰(アヴィリオの好きなシロップ漬けパイン)を見て笑うシーンは追手に気づかれ死を悟り、もうすぐ自分も解放される、あの世で逢おうぜ的な笑みに思えました。{/netabare}
やや補足が欲しい点。
{netabare}ストレーガやガラッシアのアヴィリオに対する高評価の理由がうやむやに。
シカゴにローレス・へブンを持っていく任務で会っているのは解るけど、当時のアヴィリオはコルテオの逃亡を助ける事に全力で、ストーリーもそっちがメイン。
それほど多くの時間を割けない中でどうやってドン・ガラッシアたちに気に入られたのか…
やっぱり何かしら復讐の事を伝えたのだろうか?
普通に考えるとそこから足がつくかもしれないと思うけどアヴィリオから見てガラッシアもヴァネッティの崩壊を望み、上手く踊ってくれると確信出来たのだろうか?
オルコに正体を明かした事もあったし、何かしら計算が成り立てば身バレも辞さないようだが…{/netabare}
まとめ。
ネタ回と思われる4話とファンゴのような面白味のある存在以外、終始重い雰囲気があります。
復讐の物語なので面白可笑しく観られる物ではありませんし、マフィア絡みなのでエグイ死に方もあります。
けれど悲しみの中で生きている少年の闇と中盤まで伏せられた真実とそこから加速するラストは見応えもありとても面白かったです。
ハッピーエンドにはなりませんが、きちんと筋の通ったストーリーで魅せられる作品でした。
おまけ。
このやり取りがなんだか上手い。
{netabare}オルコさんのラザニア回。
部下「ドン・オルコにも食べてもらいたかったな」
ファンゴ「そりゃ無理だ、お前らがたいらげちまった」
部下「これで終わりか、残念だ」
ファンゴ「おかわりはあるぜ」
・・・・。
怖いよね、これ。
オルコが食う分はもうない=おかわりはないと解釈した部下たちにおかわりはあるというファンゴ。
「たいらげちまった」のはオルコが食う分のラザニアじゃなくてオルコ入りのラザニア……
怖いわぁ………。
こういう笑えないブラックジョーク。。{/netabare}