お嬢さん さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
文句なしの名作。一度や二度見るだけじゃこの作品の良さは伝わらない。
この作品の素晴らしいところは至るところに仕掛けが施されており、それがきちんと何かしらの意味を持っているところです。見つければ見つけるほどその細かさ・丁寧さに圧倒されます。それに気付けばよりいっそう楽しめることは間違いありません。言葉ですべてを伝えるのではなく、描写でほのめかすことにより間接的に伝え、色々と考えさせてくれるアニメでした。まるでアニメが視聴者を選んでいるかのような作品です。
最終話を視聴した後、まず思ったのはよくもこんな作品をたった12話で綺麗にまとめたなぁ、ということです。もっと直接的に感情を表す台詞を増やしていればキャラクターに愛着がわいていたのかもしれません。感情移入するようにするならば、もっと登場人物に焦点を当てたエピソードを増やした方がよかったのかもしれません。
しかしこのアニメはこれでよかったのです。手紙の送り主は誰か、という重大な謎があったのでキャラに焦点を当てて感情を吐露させるなどネタバレになってしまいます。では登場人物それぞれの感情は全く表現されなかったのか、と言われればそういうわけでもないのですが。
また、視聴後みなさんが悩まされるのが最終回の謎ですね。ネロはアヴィリオは撃ったのか否かということです。これどっちにもとれるんじゃない?と最初は思ったのですが、話の流れやキャラの心情を考えたところ、どうしても1つの道にしか行き着きませんでした。最後に映した足跡の描写も、視聴者に与えられた考察材料だと思います。この作品は基本的に無駄な描写がされていないので脚本家さんがTwitterでおっしゃられていたように、“言わぬが花”ということなのでしょう。
あと面白いのがこの作品の話のタイトルはどれもシェイクスピアのマクベスに関係していることですね。その中でも最も有名だったのは最終話『汚れた空をかいくぐり』。“綺麗は汚い 汚いは綺麗 綺麗は汚い 汚いは綺麗 さあ飛んで行こう 霧の中 汚れた空をかいくぐり”ってやつです。
この台詞の解釈も結構人によって違うんですよね。しかし私がこの作品に合っているなと思ったのは“優しくて綺麗なものは誰にでも支持されるように思うけど 実際のところ人はブラックなものに飢えていて 汚いものは綺麗なものと同じくらい求められる。ハッピーエンドなストーリーを求めつつも 嫉妬やウソ、残酷な描写を除いただけの単なる綺麗事では 人は満足せず、退屈な話だと感じる生き物だよ”といった解釈でした。
コルテオが読んでいた本、「THE WASTE LAND」。T・S・エリオットが書いた長編詩で「四月は一番残酷な季節だ」という冒頭の一節で有名です。1話では雪が降っていました。それを見てコルテオがアヴィリオに「もう4月なのにね。おやすみ、あ、じゃなかった、誕生日おめでとう!」と言ったんですね。自分の誕生日に家族が皆殺しにされたなんて、本当に残酷な季節だなぁって思いました。こういう細かい仕掛けが上手い作品です。
私が挙げたものはほんの一部の考察にすぎないので、気になった方は探してみるといいですよ。
以上より、大人向けで考察の捗るアニメだと思いました。1話からマフィアや人の名前が出てくるので世界史が苦手だった方はなかなか覚えられないかもしれません。けれどそれで視聴をやめてしまうのは勿体ないです。このアニメは思っているより深く、その良さは見つけた人にしかわからないと思います。そういう意味での視聴後2週目からが本番ですね。近年にはなかなかない、心に深く残るアニメでした。