おぬごん さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
愛と時間の物語
いわゆる「異世界モノ」で「ループもの」
どちらも食傷気味だった上、「なろう小説」にやや偏見的な食わず嫌いがあるため放送当時はスルーしてました
こちらでの評判の良さや18話前の駅などでの怒涛の宣伝、そして何よりレムちゃんの可愛さが気になっていたので、このたびAbemaの一挙放送にて視聴
この物語のテーマは、ずばり愛だと思っています
主人公・スバルの行動原理は、ヒロイン・エミリアへの自分勝手な愛と、尊大な羞恥心と臆病な自尊心に縛られた歪んだ自己愛
この醜い愛にスバル自身が気付き、受け入れ、成長していく様子が物語の芯でした
11話までのスバルの活躍は確かにスバル視点(視聴者視点)では大変にヒロイックでしたが、解決したのは結局ラインハルトとロズワール卿
スバル自身の弱さは変わっていないのに、何かを成し遂げたことで何でもできるかのように勘違いしてしまった結果、12話〜18話では大いに醜態を晒してしまいます
もう本当に見るに耐えないくらいの有様でしたが、でもこれが心に突き刺さるんですよねえ…
あそこまで醜いものではない(と思いたい)でしょうが、自己肥大、他者を省みない言動というのは少なからず誰しも経験することでしょうから
単純なエンターテイメント性で言えば11話までの方が上でしたが、12話以降があったからこそこれほどこの作品が賞賛されているのだと思います
自らの醜態への罵声や、レムの重すぎる愛、ヴィルヘルムの哀しくも強い愛に触れ、心を折りながら成長していくスバルの姿は感動的でした
アニメでのラスボス・ペテルギウスも上手い具合にスバルとの対比になっていましたね
互いに一方通行の自分勝手な愛で動くスバルとペテルギウス
その愛の自分勝手さを自覚するまでは手も足も出なかったスバルでしたが、自身の成長とともに一気に形勢逆転…そのキャラの強烈さも相まって素晴らしい宿敵でした
またスバルが困難(=死に戻りのループ)を超える度に、スバルの行動で誰かが救われる、という構成も上手かったですね
スバルは死に戻りのループにより時間の連鎖に閉じ込められ、謂わば時間を止められてしまってるわけですが、
その傍らには必ず、様々な事情で「時間が止まってしまった」人たちがいるんですよね
スバルの時間が再び動き出すことが、その人たちの時間のリスタートに繋がっている
作品タイトルも含めて非常に巧みで美しい造りになっていると思いました
あと、ネット小説らしくセリフの端々でネタを挟んでくるのも、会話のテンポの良さもあり好みでした
「クリフハンガー!」とか「男は度胸」とか笑っちゃいましたw
猫キャラのフェリスに堀江由衣を当てたりするのも明らかに狙ってますよねw
難点…というか難癖に近いですが…は2点あります
まず1点は18話直前で宣伝攻勢していたこと
あの話、それまでの話しっかり見てないと意味ないでしょ!wwあの話から見始めた人ぽかーんとしちゃうよ!www
もう1点は、あまりにこの25話で物語が綺麗にまとまってしまっているので、2期以降があるとしたら蛇足になりかねないことです
この後の話を知らないので断言はできませんが…
作画面では、初回が1時間で2クールという構成を見事走りきったWHITE FOXの力を称賛したいですね!
またループ描写、表情の描写には同社の「シュタゲ」の表現も生かされてるように感じました
キャラデザ・総作監が「シュタゲ」や「ひぐらし」といったループ物の坂井久太だというのもかなり有効に機能したんじゃないでしょうか
声優陣ではレム役の水瀬いのりの熱演、ペテルギウス役の松岡禎丞の狂演、シュルト役の井口裕香のイケボが印象に残りました
全体的に豪華な声優陣が揃っていて、作品の魅力を大きく底上げしていたように思います
キャラではレム、ペテルギウス、ヴィルヘルムの3人が印象的でした
特にヴィルヘルムですが、こういうカッコいい爺さんは作品内で死なされがちな中、最後まで生き残ったのが良かったですね
第1話が1時間、OP&EDカットは当たり前の贅沢に詰め込んだ2クール構成、それを走りきる安定した作画、豪華な声優陣、そして宣伝と、非常に力の込もった、またそれに見合う内容を秘めた力作だったと思います
またこういう力の入った作品が見たいですね
…ところでこんな良作を上辺の情報だけで0話切りしてた私…怠惰ですよねえ???