どらむろ さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
抜群の構成力で魅せる、科学教育SFアニメの傑作。科学の素晴らしさ&萌え的にもかわいい♪
全12話。通称「マリワカ」。電気関連の科学史を題材に、中学生の少女がタイムトラベルしながら偉大な科学者たちと交流しつつ、科学の素晴らしさやその歩みを、様々な角度から学んでいく。
『発明発見物語全集〜磁石と電気の発明発見物語』という科学史の本を基にしたテレビ東京系列のアニメ、往年のNHK教育テレビを彷彿とする内容でした。
エンタメ的にもかなり面白く、また意外と萌えどころもあり、終始飽きさせないです。
(意図的に?)古そうな雰囲気を2016年にやってのけた意欲作。
私的に2016年度最大のダークホースは本作でした。絶賛です。
…ここ数年来で「お子さんに見せたいアニメ」ナンバーワンです。
教育アニメとしての完成度は、過去のNHKアニメに全くヒケを取らない。
これは是非ともNHKでやってほしかった!
{netabare}『物語』
マリちゃんは勉強はできないけれど発想力に長けたタイプ、ワカちゃんは優等生だけど効率重視が裏目にでちゃうタイプ。
そんなふたりがタイムトラベルで学んで成長していく。
真理(マリ)ちゃんが、3年前に失踪した科学者である父・永司から貰った「アーミラリーコンパス」というアイテムのせいで色んな時代にタイムスリップ、主に電気に関わった偉大な科学者・発明家たちから、学んでいく。
もう1人のヒロイン・和花(ワカ)ちゃんもタイムスリップしたり、現代に残って、成長していく。
1話1話、1場面ごとに張られた伏線を、丁寧に回収する。無駄な展開が無い!
ここまで緻密に計算され尽くした脚本は、教育アニメ史上でも中々無いのでは。
…外国も舞台になるアニメにありがちな「言語の翻訳問題」も、視聴者からのツッコミが入りそうなタイミングで即座に設定を用意する周到さ、地味だけど好き。
(ガルパンの「特殊カーボン」とか、設定の隙を丁寧に潰してくる作品は良作多い)
全体を通しての物語も中々面白く、悪そうな実業家・御影(みかげ)の暗躍や、マリの父・永司の活動、次第に明かされるアーミラリーコンパスの謎など、全編通して飽きさせない。
1話1話の脚本が素晴らしいです。
現代パートでの身近な中学生の悩みや問題と、タイムスリップ先での偉人たちから学んだ科学的な思考や挑戦の尊さ等を巧みにリンクさせ、視聴者にも極めて分かり易く科学史の歩みや考え方と先人の功績、それらと身近な我々との関りや発想を伝えてくれる。
一見関係なさそうな事柄が、実は何百年も昔に知的好奇心と諦めず真理を追究し続けた科学者たちの尽力の賜物である…。
個々のドラマでマリ・ワカが前の偉人から学んだ事柄を、次の偉人も引き継いでいて、科学者たちの挑戦は「繋がっている」んだという事が暗に伝わる。
各偉人それぞれに明確なテーマがあり、「好きな事に打ち込む情熱の尊さ」や「才能無いと悲観せず挑戦し続ける大切さ」等々、現代パートとも絡めて、極めて分かり易い。
各偉人の伝記ドラマ、特にマイケル・ファラデーやハインリッヒ・ヘルツなど、知っている人は知っているけれど、知らない人も多そうな偉人たちの苦悩の軌跡は、それだけで興味深い。
…これは教育アニメとして非の打ちどころが無いです。
本作は単に「科学知識」だけではなく「科学史」を「広い視野」で扱っている見識も素晴らしい。
一見、何の役にも立たないような「基礎研究」が、何十年、何百年後の未来の繁栄に繋がっている事や、先人の理論を引き継いで実用的な発明に繋げるバイタリティー、それら双方が大切なモノだというバランスの取れた科学観。
特に良かった10話のハインリッヒ・ヘルツ編、「自分の研究に何の価値があるのか」と絶望するヘルツに死の間際、「貴方の基礎研究は偉大で、遠い未来に素晴らしい繁栄をもたらしているんですよ」と教えてあげる一幕…
史実のヘルツの故事(本人は自分の研究を無価値だと思っていた)を下敷きにしつつ、粋な計らいでした。死の間際なので歴史改変しない範囲で良エピソードに。
ここはタイムトラベル物の醍醐味を最大限に生かした、イカしたドラマでした、感動的。
…本作は近視眼的に「そんな研究なんの役に立つの?」と無理解な方にこそ、分かって頂きたい内容でしょう。
(スーパーコンピューターを「2番じゃだめなんですか」と潰そうとした人とか…)
…本作を気に入っているのはエンタメ的にも面白いからでして。
堅苦しい雰囲気はなく、少女たちが科学者から学んでいく過程が萌える♪
1話で1600年頃のイギリスにタイムスリップしたマリちゃんが、セーラー服をはしたないと思われちゃったり、科学者のウィリアム・ギルバートさんのメイドさんからコルセット付けられちゃったり。
※「終末のイゼッタ」6話で、イゼッタちゃんもコルセットで締め付けられてましたが、真っ先にマリ・ワカが脳裏をよぎった!
マリちゃんはイゼッタちゃんより胸無いのにかなり苦しい、イゼッタちゃんは更に大変だったんですねぇ…。
…何気に「17世紀初頭のイギリスの風俗」などの科学以外の知識も疎かにしない考証も丁寧だったり。
キリスト教の科学弾圧や、オーストリア帝国の圧政など、時々の歴史上の出来事も絡めているのも教育アニメ的にポイント高いです。
1話ではAED(自動体外式除細動器)の正しい使い方を描写する等、隙あらば教育的な知識を入れてくる。
1話のマリちゃんコルセットの他にも、8話で水着回があったり、萌え的にも飽きさせないすばらしい♪
あくまでも健全な教育アニメの範疇で、絶妙な萌えを演出するとは!
話の面白さ的には、マリの父・永司が各時代で無茶苦茶やっちゃう破天荒さも笑えました。
…いや~、面白かったです。まさか、2016年のご時世に、こんな科学教育アニメが観られるとは。
脚本が恐ろしく緻密で計算され尽くしている、エンタメ的にも萌え的にも、非の打ちどころ無し。
難を挙げるならば、このテーマまだまだ続けられそうで名残惜しい事、尺に余裕が無く、回によっては忙しない印象受ける事くらいでしょうか。(ベンジャミン・フランクリンなど)
せめて2クールあればなお良かったかも。
あと、ワカちゃんがタイムトラベルしたのがファラデー編だけなのも寂しい、もし続編あるならば今度はマリ・ワカふたりでタイムトラベル見たいです。
『作画』
00年代のNHK教育っぽい?かなり古さを感じる画風。恥ずかしい時顔真っ赤にする表現など、良くも悪くも古い。
どうやらあえてそんな感じを狙ったっぽいです。懐かしい。
とはいえ作画は中々丁寧。
キャラデザはマリ・ワカ共にかなり可愛くって好み、100%健全ながら結構あざとい萌え所もある♪
また各時代の文化や風俗などの背景も丁寧、タイムトラベル物の魅力を高めている。
『声優』
2012年の「夏色キセキ」に続き声優ユニット「スフィア」勢揃いです。
特にマリちゃんの豊崎愛生さんが非常に可愛らしく、豊崎さんはまり役でした。
寿美菜子さんのお転婆な感じも良い。戸松遥さんのステキな大人の女性感も。
…豊崎さんと寿さん、同時期の「アンジュ・ヴィエルジュ」のエルエルちゃんとサヤですな。
高垣彩陽さんはできる女っぽい美人秘書でした。
旬兄の木島隆一さんはゴッドイーターのレンカの人、優等生なイケメン良かったです。
森川智之さんの破天荒な大人の男性、坪井智浩さんの悪イケメン感も絶品。
マリパパみたいなキャラ、森川さんのはまり役でしょう。
8人の偉人たちが豪華声優陣。
ギルバートの大川透さんの深みや、フランクリンの三木眞一郎さんの飄々とした感じなど、実力派の好演が光った。
ファラデーの森久保祥太郎さんの頼りなさげな感じ、ヘルツの石田彰さんの儚げな感じも。
『音楽』
NHKの天才テレビ君辺りを彷彿とさせる雰囲気。
OP「希望TRAVELER」がテーマ曲として素晴らしい、サビで8人の偉人たちの登場に合わせて、本作のメインテーマをしっかりと伝えてくれる。
「数十年後 未来 覗いてみようよ 輝きを信じて
挫けなかった昨日が ほらキラリ つながってるって…そんな未来を夢見てる♪」
ED「ミス・ラビット」は不思議の国のアリスっぽい謎なノリ…かわいいです。
『キャラ』
早瀬真理ちゃん、水城和花(みずき・わか)ちゃんダブルヒロインがかなり可愛いです。
マリちゃん、これは近年の豊崎愛生さんのアタリキャラ、かわいい♪
勉強はニガテだけど実は賢いタイプ、いきなりタイムトラベルしても適応するしたたかさがありました。
17世紀イギリスのコルセットなど色んな衣装着るのも萌えどころ。
ワカちゃんは優等生タイプながら喜怒哀楽が激しいツンデレ萌え。
勉強はできるけれど意外と抜けているところも可愛い。
中学生にしてはスタイル良い美少女。
ファラデー回で感情爆発させるなど、優しい良い子です。
また妹なのもポイント高い!
…もっとタイムトラベルしてほしかった。
さすがお兄ちゃん!なワカの自慢の兄「旬にぃ」の完璧超人っぷり頼れる。
OPでフェンス超えて「笹食ってる場合じゃねえ!」とニコ動でコメされてたりw
これはマリちゃんが憧れるのも分かります。
マリパパの永司はあれだけ無茶苦茶やってても家族に愛されるのが何となく分かる、面白すぎる男であった。
マリママの晶とのベスト夫婦な感じステキです。
科学者なのに戦闘も強い!ニンジャスレイヤー=サンか!?(森川さん)
マリママの自分をしっかり持っている気高さ、ステキな大人の美人。
これは御影がアタックしたくなるのもわかる…寝取られないか心配でしたw
悪役の御影はいかにも黒幕という感じながら、マリママにアタックしてみたり、キャバクラ通いだったり、妙に面白い男であった。
秘書のさつきとのやりとりが憎めない一面も。
悪党ではあるが、実業家としての矜持で科学の発展に関わるあり方を示した。
エジソンとのコンビ良い感じ。
秘書は…意外と影が薄かった。
8人の偉人たちも印象的。
全般的に、いきなり未来人が現れても受け入れちゃう理解力あるのはお約束かw
紳士的で、マリワカに丁寧に科学を教えてくれる人格者が多い一方で、ベンジャミン・フランクリンとトマス・エジソンのアメリカ人はフランクなキャラ付けだったり。
無学だが好きな科学に情熱を傾け、先輩の学者に疎まれてしまうマイケル・ファラデー、愛が成果に結びついたサミュエル・モールス、グラハム・ベルも魅力的。{/netabare}