どらむろ さんの感想・評価
3.6
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
往年の朝夕アニメっぽい王道ファンタジー。少年ふたりの友情と後半の丁寧さが見所、不評ですが十分佳作です。
全24話の異世界冒険ファンタジーです。
主人公が異世界に行って冒険する系、10数年くらい前に土日の朝か夕方辺りでやっていそうな作風でした。
…2016年度の深夜アニメとしては、非常に不評の模様。
世界観、少年ふたりの友情や成長など王道なドラマの完成度は高く、十分佳作の域だと思うのですが…。
{netabare}『物語』
主人公の中学生・瞬が、父の研究所にあった謎の水晶に触れた瞬間…
地球の裏側に存在するという伝説の異世界「エンドラ」に転送されてしまった。
エンドラでは王子のエミリオが、父の仇として現国王デルザインの命を狙っていた。
巻き込まれ、「化宝具」という異能発現して戦う瞬。
地上に帰りたい瞬と、デルザインを憎むエミリオは、なりゆきで反デルザイン派組織「イグナーツ」の面々と共にエンドラを旅して戦っていくのだった…。
…視聴者側の世界の少年が、異世界転送で、異能力駆使して、冒険をする。実に王道。
ふた昔くらい前の朝か夕方に結構あった印象な作風(牙とか)
本作では「化宝具」という武器召喚してバトルする。
化宝具バトルは(00年代前半辺りの朝夕アニメとして見れば)悪くはない気がします。
近年のテンプレラノベ枠の半数くらいよりは良い気がする…。
ただ全般に小競り合いの連続な印象で、大きく盛り上がるシーンは乏しいかも。
瞬とエミリオの友情タッグは良かったです。
見所は瞬とエミリオふたりの交流と成長にあり。
割と能天気な瞬と、復讐にとらわれている生真面目なエミリオはソリが合わずケンカばっかり、そこから紆余曲折の冒険バトルを繰り返し、少しずつ交流して成長し、絆を深めていく。
どちらかというとエミリオの成長が著しかった。
…別に腐要素は感じないです。王道な少年同士の友情を、2クールかけて丁寧に描いてました。
エンドラの世界観も中々良し。(ありがちではあるが)王道な異世界設定。
パーティー組む各々の目的や現在の状況が終始分かり易いのも良い。
瞬 地上に帰りたい。その為にはデルザインが建設中の施設バベルに行く。
エミリオ デルザインを討つ。その為にデルザインのいるバベルに行く。
イグナーツ 反デルザインの目的でバベル建設を阻止する為にバベルに行く。
やがて「父と子」が物語の大きな軸に。瞬とエミリオそれぞれのドラマが交わっていく。
諸々の目的が収束、次々と明かされるデルザイン王の真意や瞬の出生の秘密など意外な新事実、エンドラの危機そしてふたりの絆…
これらが後半次第にふたつの世界の命運に関わっていく展開は見応え十分でした。
終幕も異世界冒険譚の理想的な王道、最初は犬猿の仲だった瞬とエミリオが最終的にかたい友情で結ばれるラストは結構グッと来ます。
…ただ、ドラマが盛り上がってくるのが後半以降なので、それまでは延々と未熟な少年ふたりの稚拙なケンカ続くのが難かも。
ヒロインの影が薄い、イグナーツの世直し革命も、途中でデルザインの意図が分かると話の軸がブレてくる感も。
前半は圧政に苦しむ人々を世直しするのかな?と思わせて、そこは話の軸では無かったり。
ここら辺が近年の視聴者の受けが悪かった所以かも知れない。
…でも、デメトリオ(イグナーツのリーダー)他の大人たちが温かく見守る中で、本気でぶつかり合い成長していく展開は好感持てたです。
余談。地上世界→異世界→再び地上そして親子関係の葛藤を経て再び異世界へ(世界の危機)
「聖戦士ダンバイン」ルートですな。最近だと細田監督映画の「バケモノの子」
地上とエンドラの戦火拡大にならなかったのは残念。
総じて、異世界冒険で少年ふたりの成長と友情、終始丁寧な脚本で後半の意外性からの親子関係含めた綺麗な纏めなど、完成度が高いです。
私的にどう見ても十分な出来に思えるのですが…少なくとも決して駄作では無いと思う。
うーむ?序盤の地味さが響いたのか。その序盤もジュブナイルとしては悪くないと思える。
「たったの」2クールだし。数話程度、長い目で観れば…
昔の4クール前提の朝夕アニメと比べても良く出来ている、けれど、丁寧過ぎて、狂気が足りなかったのかも。
…確かに、後々話題(ネタ的な意味でも)には、あんまり上らなさそうではある。
時代に合わず、埋れていくであろう地味アニメなんですかねぇ。勿体ない。
『作画』
キャラデザを漫画家の萩原一至先生・和月伸宏先生が担当、男女ともに美形揃いで良い感じ。
特に女性陣はルイーズがかなり美女。ミーシャも美少女。
ズー族という獣人の野性味も良い。
また異世界エンドラの幻想的な背景作画もファンタジー感ある。
バトル描写はまぁまぁ。
…昔の同系統のアニメ多数観てきたので、相対的に作画はかなり良く思える。
『声優』
ヒロイン・アリシア役の美山加恋さんは女優で声優初挑戦、本職には及ばなかった模様。
でも特に致命的とは思わない、普通の女の子らしさは良かったのでは。
瞬の小野賢章さん、エミリオの増田俊樹さんらメインキャスト陣は普通に好演、特にイグナーツの面々が上手いです。
鳥海浩輔さんの中性的美青年は絶品。
デルザイン王の大塚明夫さんが渋い。
『音楽』
OP「Limit」があんまり主題に合っていない。歌詞が分かり易く歌としては好き。
BGMはファンタジー感あって良かった。
『キャラ』
瞬は能天気だが芯が強く、いつもポジティブにエンドラと向き合った。
瞬よりもメンタルの脆さが目立つエミリオの方が、成長を実感出来るので主人公としては面白い。
このふたりは良いコンビ、ケンカする程仲が良いを地で行く友情良かった。
イグナーツの面々がキャラ立っており、指導者としても大人の男としても器の大きいデメトリオが非常に頼れる。
彼のカリスマはかなり高く、デメトリオあっての対立する異種族間の結束あり。
ルイーズさんほんといい女でした。エルジュイアの方が美人ですが(でも男)
フェリクスは美青年で強いが比較的地味。
暗殺者少女ミーシャ萌え。辛い境遇故の警戒心…からのデレ、かわいい。
ストイックな武人なギドロもカッコ良い。
研究者にして一行の相談役なパスカル、やはり研究バカの若手ジョセフなど、味方側に良キャラ多し。
アリシアちゃん、元気で素直な良い子で可愛いのですが、ストーリー上の影が薄い。
主役ふたりを奥ゆかしく見守る系のヒロインとしては…まぁまぁ可愛い。
デルザイン王も実は…
など、敵側の駒が小粒だったのが本作の難かも。
戦闘狂のイベルダは小物だし、ラスボスも登場は終盤な上に、歪んではいるが愛はあり、根っからの悪党ではない。
…主軸となる敵の層が薄い辺りは、やや盛り上がりに欠けた一因かも。{/netabare}